投稿者「図書館」のアーカイブ

スティーヴン・ウルフラム著 『ChatGPTの頭の中』

 

 

知能情報学部 4年生 Yさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : ChatGPTの頭の中
著者 : スティーヴン・ウルフラム著 ; 高橋聡訳

出版社:早川書房
出版年:2023

2025年現在、かなり多くの人が一度はChat GPTを使用したことがあるのではないだろうか。Chat GPTはまるで人間のように内容をまとめ、質問に対して返答する。私も、プログラムのエラーが出た時によく使用している。人間だとエラーの発見・修正に数分はかかるものが、Chat GPTなら僅か数秒でエラーを発見し修正案まで提案してくれるため、非常に重宝している。Chat GPTを使用するなかで、どのようにChat GPTが動いているか気になる人も多いはずだ。

本書のはじめでは、Chat GPTはニューラルネットワークという概念が基になっていることが示される。ニューラルネットワークとは、人間の脳が非常に多くの神経細胞が複雑な網状に結合されていることに着想を得て考案された。

次に、Chat GPTが確率に基づいて次の単語を選んでいることが示される。その確率がどのように計算されているかを、数字の認識や画像認識、単語の意味空間の例を用いて解説している。

本書の中盤では、以上の事柄を踏まえて、Chat GPTの内部でどのような処理が行われているのか、どのように訓練されているかが示される。しかし、機能の実態はまだ解明されていない部分も多い。

最後に、Chat GPTが人間のように文章を出力できることを受けて、人間の思考の過程にどのような根本的な特性と原理が存在するかを示す手掛かりになる可能性があることが示される。

本書では、Chat GPTがどのように動作しているかを、機械学習の例や図を用いて丁寧に解説している。また、Chat GPTが人間の脳を参考にしており、人間の思考の過程とどのような関係にあるか興味深い点である。機械学習や画像認識との関わりの深い内容であるので、知能情報学部の学生にはぜひ読んでいただきたい。

岸見一郎, 古賀史健著 『嫌われる勇気』

 

 

知能情報学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 嫌われる勇気
著者 : 岸見一郎, 古賀史健

出版社:ダイヤモンド社
出版年:2013

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」。もしあなたが今、友人との関係や周囲からの評価、あるいは漠然とした将来への不安を抱えているとしたら、この言葉はあまりにも断定的で、少し乱暴に聞こえるかもしれない。しかし、岸見一郎と古賀史健による『嫌われる勇気』は、そんな私たちの常識を根底から覆し、世界の見え方を一変させる力を持った「劇薬」のような一冊である。

本書は、フロイト、ユングと並ぶ「心理学の三大巨頭」の一人、アルフレッド・アドラーの思想を解説した哲学書だ。しかし、決して堅苦しい専門書ではない。本書の最大の特徴は、悩める「青年」と、アドラー心理学を修めた「哲人」による対話形式で進む点にある。自分に自信が持てず、世界を複雑で生きにくい場所だと嘆く青年は、まさに読者である私たちの代弁者だ。彼が哲人の語る理想論に猛反発し、食ってかかることで議論は深まり、私たちは哲人の言葉を単なる知識としてではなく、自分事として受け止めることができる。

本書の中で特に衝撃的なのは、「トラウマの否定」だろう。私たちはしばしば、「今の自分がうまくいかないのは、過去のあの出来事のせいだ」と考えがちだ。しかしアドラー心理学はこれを明確に否定する。人は過去の原因によって突き動かされるのではなく、今の自分が定めた「目的」に沿って生きているのだ、と。つまり、変われないのは過去のせいではなく、自分自身が「変わらないこと」を選んでいるからだという指摘は、残酷なまでに厳しい。だが同時にそれは、「私たちはいつでも、今のこの瞬間から変わることができる」という力強い希望のメッセージでもある。

そして、タイトルの『嫌われる勇気』という言葉の真意は、「課題の分離」という考え方に集約される。他者が自分をどう思うかは他者の課題であり、自分にはコントロールできない。それにもかかわらず、承認欲求に縛られ、他者の期待を満たすために生きることは、自分の人生を他人任せにすることに他ならない。誰かに嫌われるということは、あなたがあなたらしく自由に生きている証であり、対人関係のカードを自分自身の手に取り戻すための代償なのだ。

読み終えた後、あなたの目には、今までと同じ景色がまったく違った色合いで見えるようになっているだろう。この本は、読むだけで痛みが消える優しい鎮痛剤ではない。むしろ、今の自分を直視させられる苦い薬だ。しかし、もしあなたが「今のままではいけない」と少しでも感じているのなら、この本は間違いなく、新しい人生の扉を開くための鍵となるはずだ。世界はシンプルであり、人生はどこまでもシンプルである。その事実に気づくための勇気を、ぜひ本書から受け取ってほしい。

吉野源三郎著 『君たちはどう生きるか』

 

 

知能情報学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 君たちはどう生きるか
著者 : 吉野源三郎

出版社:新潮社
出版年:1937

時代が移ろい、社会の仕組みがどれほど複雑になっても、私たちが直面する根源的な問いは変わらないのかもしれない。吉野源三郎が著した『君たちはどう生きるか』は、一九三七年の出版から八十年以上が経過した今もなお、多くの読者に「人間としてあるべき姿」を問い続けている名著である。近年、漫画化や映画の題材となったことで再び脚光を浴びたが、その真価はブームを超えた普遍性にある。

物語の主人公は、十五歳の中学生「コペル君」こと本田潤一だ。彼は学校生活や友人関係の中で直面する様々な出来事について、信頼する「叔父さん」と対話を重ねていく。貧困、いじめ、勇気、そして社会における個人の役割。コペル君が日常で感じた素朴な疑問に対し、叔父さんは「ノート」を通じて、それらをより広い視点、あるいは歴史的・哲学的な視点から解説していく。読者はコペル君と共に悩み、叔父さんの言葉によって、自分中心だった視界が「世界という大きな流れの中の一分子」としての視点へと開かれていく体験をすることになる。

本書の白眉は、単なる道徳の教科書にとどまらないリアリズムにある。特に物語の後半、コペル君が犯してしまう「ある過ち」と、その後の苦悩の描写は圧巻だ。彼は友人たちと「絶対に裏切らない」と約束したにもかかわらず、恐怖に負けて保身に走り、仲間を見捨ててしまう。 ここで描かれるのは、正義を語ることの容易さと、それを貫くことの困難さだ。自己嫌悪に押しつぶされ、熱を出して寝込むコペル君に対し、叔父さんは「後悔することの痛み」こそが、人間が正しくあろうとしている証拠だと説く。この場面は、きれいごとだけでは済まされない人生の苦味を肯定し、失敗から立ち上がる方法を私たちに教えてくれる。自分の弱さを直視した時こそ、人は本当の意味で成長できるのだと。

タイトルである『君たちはどう生きるか』という言葉は、命令形ではなく、常に私たちへの「問い」として投げかけられている。正解のない社会の中で、私たちは自分の頭で考え、決定し、その結果を引き受けなければならない。 読み終えた瞬間、この問いは本の中から飛び出し、読者自身の胸に深く突き刺さるだろう。まだ何者でもない学生の今だからこそ、コペル君と共に悩み、自分なりの答えを探す旅に出てほしい。これは、生涯を通じて何度も読み返したくなる、魂の羅針盤のような一冊である。

水稀しま著 『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』

 

 

知能情報学部 4年生 Nさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌
著者 : 水稀しま

出版社:小学館ジュニア文庫
出版年:2013

まず初めに映画と小説の描写の違いについて説明する。まず、映画版は映像と音楽によって時間制限のある状況の緊迫感を強く印象づけている。爆弾や仕掛けの存在、刻一刻と迫るリミットは、カメラワークやBGMによって視覚的・感覚的に伝えられ、観客は登場人物と同じ焦りを体験することができる。一方、小説版では派手な演出の代わりに、登場人物の思考や判断の過程が文章で詳しく描かれるため、「なぜその行動を選んだのか」が理解しやすい構成になっている。

『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)』は、「探偵とは何のために存在するのか」を考えさせる物語である。本作は、コナンたちが謎の人物に呼び出され、限られた時間の中で事件を解かなければならない状況から始まる。失敗すれば大切な人たちが危険にさらされるという設定が、物語に強い緊張感を与えており、読み手は最初から最後まで目が離せなくなる。

この作品の特徴は、多くの探偵が同時に登場する点である。コナンだけでなく、服部平次や白馬探、毛利小五郎といった人物も集まり、それぞれが自分の力で事件に向き合う。しかし、彼らが挑むのは単なる謎解きではない。探偵であるがゆえに事件に関わり、その結果として誰かを危険に巻き込んでしまうという現実が、物語を通して描かれている。

犯人は大きな野望を持っているわけではなく、過去の出来事への強い怒りと悲しみから行動している。その動機は決して許されるものではないが、失ったものの大きさを知ることで、読者は簡単に悪だと切り捨てられない気持ちになる。復讐のむなしさや、怒りにとらわれることの危うさが、静かに伝わってくる。

コナンは本作の中で、真実を明らかにすることの重さと向き合う。事件を解くだけでは、すべての人を救えない場面もあるという現実は、彼にとって大きな試練である。それでも前に進もうとする姿は、読者に強い印象を残す。探偵たちの鎮魂歌は、推理の面白さだけでなく、人の心の弱さや悲しみを描いた、小説として読みごたえのある一作である。

水稀しま著 『名探偵コナン 純黒の悪夢』

 

 

知能情報学部 4年生 Nさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 名探偵コナン 純黒の悪夢
著者 : 水稀しま

出版社:小学館ジュニア文庫
出版年:2016

まず初めに映画と小説の描写の違いについて説明する。まず、小説版は登場人物の内面描写がより丁寧に描かれている。映画ではテンポや映像の迫力が重視されるため、どうしても心理描写は短くなる。一方、小説では安室透や赤井秀一、そして記憶を失った女性の迷いや葛藤、心の揺れが言葉で細かく表現されており、物語の重さや切なさを深く理解できる。

『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』は、原作小説版として読んだときにこそ強く印象に残る作品であり、黒ずくめの組織というシリーズ最大の軸を真正面から描いた重厚な物語である。物語は、極秘データをめぐる事件と、記憶を失った一人の女性の存在によって大きく動き出す。誰が敵で誰が味方なのか分からない不安定な状況が続き、読者は常に緊張感の中でページをめくることになる。

この作品の魅力は、単なるサスペンスやアクションにとどまらず、「記憶」と「正体」というテーマが物語全体を貫いている点にある。記憶を失った女性は、物語上の鍵であると同時に、「人は何によってその人になるのか」という問いを象徴する存在でもある。立場や所属が違う人物たちが、彼女を巡ってそれぞれの正義と判断をぶつけ合う構図は、単純な善悪では割り切れない複雑さを生み出している。

また、安室透や赤井秀一といったキャラクターたちの内面描写も小説ならではの深みを持って描かれており、映像作品以上に心理的な葛藤や緊張感が伝わってくる点が印象的である。コナン自身も「事件を解く探偵」という役割を超え、「人を救うこととは何か」「真実を知ることは幸せなのか」という問いに向き合う存在として描かれ、物語に強い思想性を与えている。

『純黒の悪夢』は、黒ずくめの組織編の緊張感と人間ドラマの深さを高いレベルで融合させた作品であり、エンタメ性と文学的テーマ性の両立に成功した小説として評価できる一冊である。読後には、単なる推理小説以上の余韻が静かに残り、コナンシリーズの中でも特に印象深い物語として心に刻まれる。

和田秀樹著 『感情的にならない本 : 不機嫌な人は幼稚に見える』

 

 

知能情報学部 4年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 感情的にならない本 : 不機嫌な人は幼稚に見える
著者 : 和田秀樹

出版社:PHP研究所
出版年:2020

本書は、人間関係や社会生活の中で避けることのできない「感情の揺れ」を出発点に、穏やかに生きるための現実的な方法を提示する一冊である。雲が青空に浮かぶさまや、こんこんと湧く水の透明さといった比喩を用いて理想の心の状態を描きながらも、著者はそれが常に保てるものではないことをはじめから認めている。不満や怒り、不安、苛立ちといった感情は、電車に乗り、職場に向かうだけで自然と生じるものであり、それ自体を否定しない姿勢が本書全体を貫いている。

本書の特徴は、感情的になることを単純に「怒りの爆発」として捉えていない点にある。むしろ問題視されるのは、内向きに溜め込まれる怒りや不安、いつまでも頭の中を占拠するもやもやした感情であり、さらにはパニック状態に陥る心の動きまで含めて扱われる。精神医学の専門的な知見が背景にありながらも、語り口は平易で、日常の実感に即しているため、読者は自分自身の心の動きを重ね合わせながら読み進めることができる。

また、精神科医である著者自身が、感情に振り回されてしまう一人の人間であることを隠さず語っている点も印象的だ。専門家であっても感情は乱れるという率直さが、説教臭さを和らげ、むしろ信頼感を生んでいる。提示される方法も、感情を無理に抑え込むのではなく、揺れを前提にどう整えていくかに重点が置かれている。

本書は、感情を制御するためのマニュアルというよりも、感情と付き合うための視点を与える書である。読み終えたとき、心が劇的に変わるわけではないかもしれない。しかし、自分の感情を、少し距離を置いて眺めるきっかけを与え、穏やかな「感情生活」へ向かうための確かな足場を用意してくれる。その静かな効き目こそが、本書の持つ最大の魅力であると感じた。