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[藤棚ONLINE]フロンティアサイエンス学部・赤松謙祐先生コラム「紙の新聞を読むという、ささやかで確かな習慣」

図書館報『藤棚ONLINE』
甲南大学フロンティアサイエンス学部教授 赤松謙祐先生より

 近年、「学生はあまり紙の本を読まなくなった」と耳にすることが増えました。スマートフォンやタブレットが身近になり、必要な情報を素早く検索できる現在、その変化はごく自然な流れとも言えるでしょう。電子媒体は利便性が高く、学習や研究においても大きな役割を果たしています。一方で、紙媒体に触れる機会が以前より減っていることも、また事実のように感じられます。

 その影響と断定することはできませんが、学生のレポートや卒業論文を読んでいると、句読点の位置が少し分かりにくかったり、主語が省略されすぎて文意が一度ではつかみにくかったりする文章に出会うことがあります。いずれも致命的な欠点というほどではなく、少し整えるだけで読みやすくなる場合がほとんどです。ただ、「自分の書いた文章を、第三者がどう読むか」を意識する経験が、やや不足しているのかもしれないと感じることがあります。

 そこでおすすめしたいのが、「紙の新聞を読む」という習慣です。新聞記事は、日本語表現のプロである記者が執筆し、さらに校閲のプロが丁寧に確認を重ねています。限られた紙面の中で、事実を正確に、かつ誤解のないように伝えるため、無駄のない構成と明確な日本語が用いられています。言い換えれば、新聞は「正しい日本語の実例集」とも言える存在です。

 特に、新聞の一面記事は、国内外の重要な出来事を簡潔にまとめており、文章の骨格を学ぶのに適しています。毎日すべてを読む必要はありません。一面を中心に、10分程度目を通すだけでも十分です。これを継続することで、自然と「正しい文章のシャワー」を浴びることになります。新聞の記事内容は、新聞社によって傾向が異なりますので、1種類の新聞だけでなく幅広い種類の新聞を読めば、「物事に対する異なる見方、立ち位置」を学ぶことにもなります。

 実際に、筆者の研究室では、長年にわたり学生に新聞を読むことを勧めてきました。全員が同じように効果を実感するわけではありませんが、日々の習慣としてきちんと継続した学生ほど、文章の構成力や表現の明瞭さが目に見えて向上していきました。特別な作文訓練を課さなくても、正しく書かれた日本語に触れ続けるだけで、文章感覚は確実に磨かれていくようです。

 さらに新聞を読むことは、文章力だけでなく、社会への視野を広げることにもつながります。日本や世界が直面している課題、経済や科学技術の動向、文化や教育の話題などに日常的に触れることで、知識が点ではなく線として蓄積されていきます。これは、将来社会に出たときに求められる「社会人力」の基盤にもなるでしょう。

 読む際には、ぜひ「朗読」も試してみてください。声に出して読むことで、文章のリズムや構造がより明確に感じられますし、発声や滑舌の練習にもなります。人前で発表する機会が多い大学生活において、プレゼンテーション時の発話能力向上にも役立つはずです。

 このように、新聞を読むという行為は、特別な道具や多くの時間を必要とせず、文章力・語彙力・表現力を総合的に高めることができる、非常にコストパフォーマンスの高い方法です。図書館に並ぶ紙の新聞を、ぜひ一度手に取ってみてください。そこから始まる小さな習慣が、皆さんの「書く力」を静かに、しかし確実に伸ばしてくれるはずです。

*図書館1階 新聞コーナー

[藤棚ONLINE]マネジメント創造学部・榎木美樹先生推薦『民際学者、アジアをあるく: 中村尚司と仲間たちの時代』

図書館報『藤棚ONLINE』
マネジメント創造学部・榎木美樹先生より

民際学者、アジアをあるく: 中村尚司と仲間たちの時代(林真司、みずのわ出版、2024年)

今年(2025年)は、戦後80年の節目の年だった。日本は、世界唯一の被爆国として広島・長崎の経験を世界に伝え、核軍縮・不拡散に中心的な役割を果たそうと努めている。
例年に比して特徴的だったのは、こうした日本の被害の側面のみならず、日本の加害の側面も直視しようとする動きだったと思う。公式サイトの閉鎖を受けて平和教育の点で話題になった漫画『はだしのゲン』(中沢啓治著)への注目も然りだ。これに著わされた主人公のゲンや、ゲンの生き方に決定的な影響を与えるゲンの父親の姿を通して、作者(中沢)は徹底的に戦争反対を貫き、戦時中の朝鮮人差別とも向き合っている。
こういう節目の年だったからこそ、若者にぜひ読んでもらいたい本がある。
戦後日本の歩みをアジア各国の人びととのかかわりの中で「アジアの一員として」「日本人として恥ずかしくないように」道筋をつけてくれた中村ら先人たち生き方と実践の記録である。
「日本はアジアの一員」を当たり前だと思ってくれる若者、あるいは「日本はアジア民衆を犠牲にしてきた責任があるのだから、それに真摯に向き合わねばならない」と考えている人なら、彼らの思想や生き方が一朝一夕にできあがったものではなく、連綿と連なる託されたバトンのリレーの中にあることを確認してほしい。
アジアに学び、共に生きていく姿勢を貫き、「民際学」を提唱する人たちの記録が『民際学者、アジアをあるく』(2024年、みずのわ出版)である。

「民際学」は、「国家」の枠組みをこえる民衆の学としての知識と実践の体系・あり方で、「あるく・みる・きく」を実践するため、フィールドワークを重視する。私自身がアジアに軸足を置き、フィールドワークに基づくヒト・モノ・コト調べをしたいと思った原点の学問体系である。
民際学を大きく打ち出した中村尚司*は、日本に暮らすマイノリティの生活条件を少しでも改善しようと、東奔西走してきた研究者であり実践家である。彼は、鶴見良行**との知的・実践的交流を通して、その思想と体系を発展させた。 中村が民際学を打ち立てる上で、多大な影響を受け、半世紀以上ともに仕事をしてきたのが田中宏***だ。田中は、在日外国人の処遇改善に長年奔走してきた、この分野におけるパイオニア的な存在である。「日本人として恥ずかしくないのか」という気持ちが、田中の仕事の原動力で、自分が取り組んできた一連の仕事について、日本という国が、どういう国なのかを示す、格好の教材になっていると言う(本書pp.135-137)。その田中の人格形成と生き方に大きな影響を与えたのは、真っ当な「人間であるために」日本人の価値を再吟味し続けた、穂積吾一**** である。
本書の筆者・林真司は、「彼らは、鬼畜米英という、敵役がいなければ成り立たぬ、反動としての興亜主義者ではない。アジア諸民族と平等な関係を作るために、全身全霊を傾け続けた、真のアジア主義者なのである」と評する(同、p.137)。
中村がともに仕事をしてきた彼らに共通するのは、仮想敵を想定して攻撃して奪い取る姿勢ではなく、戦争の加害の側面を意識しつつも、「日本人として恥ずかしくない行い」を念頭に、苦しみのただなかにある人、在日外国人の不運と不幸に対する共感(empacy)と義侠心をベースに人と人との関係性を重視する「民際」の立場で行動を起こすという点である。他者への共感と義侠がゆえの行動の上に「民際学」は立っている。
被差別部落のみならず、在日のアジア人たちも、日本社会において差別や貧困に直面してきた。有色人種に対する蔑視観は、明治以降の欧米を手本とした国家の発展観に基づく。さらに日本はアジア各地を侵略し、大勢の住民を犠牲にしたにもかかわらず、そうした責任を認めようとしてこなかった。これらの反省と義侠心ゆえの「脱欧入亜」であり、国民国家を前提とする「国際」ではない、人・民が中心の「民際」なのである。本書を読むと、民際学のよって立つ思想基盤と実践のありかたの流れが必然であることがよくわかる。

戦後80年の今、また外国人へのヘイトが日本を守るうえで正統性を持つかのような錯覚が起きやすい今だからこそ、この本を手に取り、戦後の日本人の来し方を見つめなおし、行く末を見定めてもらいたい。
中村のバトンは私や同時代に学んだ当時の大学院生・学部生・出会った人々に渡されていると思っている。そのバトンをあなたは受け取ってくれるだろうか。

*)中村尚司(1938年-現在)。経済学者。地域経済論、エントロピー論、南アジア研究などをフィールドにした「民際学」を提唱。主著は『人々のアジア』(岩波新書、1994年)など。
**)鶴見良行(1926-1994年)。アジア学・人類学者。主著は『バナナと日本人』(岩波新書、1982年)『ナマコの眼』(ちくま学芸文庫、1993年)など。
***)田中宏(1937年-現在)。経済史学者。主著は『在日外国人』(岩波新書、1993年)
****)穂積五一(1902-1981年)。社会教育家。アジア学生文化協会、アジア文化会館の創設者として知られる。

[藤棚ONLINE]知能情報学部・灘本明代先生推薦『アンラーン(Unlearn):人生100年時代の新しい「学び」』

図書館報『藤棚ONLINE』
知能情報学部・灘本明代先生より

Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」(日経BP, 2022)

みなさんは、自分の「行動の癖」や「行動パターン」に気づいていますか?
たとえば、レポートの締め切りギリギリにならないと手をつけない、朝起きたらまずLINEやインスタをチェックしてしまう――これらは典型的な行動のパターンです。
実は、思考にも同じように「癖」や「パターン」があります。
「私は数学が苦手だ」と最初から決めつけてしまったり、アイデアを出すときに「先生や周りがどう思うか」を基準に判断してしまったりすることも、思考パターンの一つです。
こうした行動や思考の癖は、時に自分の成長を妨げることがあります。
そのため、これまで自然に身についてしまった癖や思い込みをいったん手放し、新しい見方ややり方を取り入れることを 「アンラーン(unlearn)」 と呼びます。
この本では、
「自分の思考や行動が、無意識のうちに固定化されていないかを自分に問いかける」
ことの大切さが述べられています。
その結果、自分の癖やパターンに気づき、アンラーンすることで、可能性が広がり、学びの効率も高まると提案しています。
誰にでも、行動や思考の癖・パターンはあります。
だからこそ、この本をきっかけにアンラーンを実践し、ご自身の新しい可能性を広げてみてはいかがでしょうか。

[藤棚ONLINE]経営学部・杉山善浩先生推薦『成瀬は天下を取りにいく』シリーズ

図書館報『藤棚ONLINE』
経営学部・杉山善浩先生より

『成瀬は天下を取りにいく』シリーズは、宮島未奈氏による『成瀬は天下を取りにいく』、『成瀬は信じた道をいく』、『成瀬は都を駆け抜ける』の3作品で構成される青春小説シリーズです(完結編の第3作は2025年12月1日発売予定)。第1作目の『成瀬は天下をとりにいく』は、型破りな主人公・成瀬あかりの突飛な行動を通して、自己表現と青春の輝きを描いた傑作と言えるでしょう。滋賀県大津市を舞台にしたこの第1作では、主人公の中学校2年から膳所高校3年までの期間が描かれています。西武大津店への通い詰め、M-1挑戦、坊主頭からの髪の成長実験など、常識をはるかに超える主人公の姿は、読者に爽快感と勇気を与えます。奇抜でありながらも、友人との絆や別れに揺れる繊細な心情も丁寧に描かれ、笑いと涙が交錯します。社会の枠にとらわれず、自分らしく生きることの大切さを教えてくれる青春小説であると実感します。シリーズを通して言えることは、主人公の揺るぎない個性が、周りの人々に影響を与え、彼らの人生に新しい光をもたらす様子が描かれているということでしょう。主人公のキャラクターの魅力と読後感の良さが特徴の小説です。

参考: 宮島未奈「成瀬あかりシリーズ」特設サイト | 新潮社

[藤棚ONLINE]法学部・山本真知子先生コラム「「楽園」の325と0」

図書館報『藤棚ONLINE』
甲南大学法学部教授(商法) 山本真知子先生より

 *オランダの人文主義者、デシデリウス・エラスムス(1469年-1536年)が「あなたの図書館はあなたの楽園である。」(“Your library is your paradise.”)と言ったとされています。

【325 商法. 商事法】
 325は、商法研究者が生涯で何度となく見る数字です。日本の図書館の本は、「日本十進分類法」(にほんじっしんぶんるいほう)に従って、分野ごとにまとめられていて、商法(会社法)は325に分類されているからです。
 「日本十進分類法」とは、日本の図書館で使われている分類法です。英語名(Nippon Decimal Classification)の頭文字をとって「NDC」と呼ばれることもあります。森清(1906年-1990年)が考案し、1929年に刊行されました。100年近くにわたって使われていますが、時代の変化に合わせて、日本図書館協会分類委員会によるアップデートもされています。現在(2025年)は、新訂10版(2014年12月刊行)が最新版です。「十進法」を使って0から9までの10の数字を基本とし、10倍しながら桁数を増やしていき、0~9のそれぞれを1~9と0に区分すると、00~99の100に区分でき、さらにそれぞれをまた1~9と0に区分すると、000~999の1000に区分することができます。必要に応じてさらに細かく分類することもあります。
 実際に、10の第1次区分(類目)、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9があり、その1つである3が社会科学となっています。3は10の第2次区分(綱目)に分けられ、その1つが32法律です。32がさらに10の第3次区分(細目)に分類されていて、その1つの325に商法(会社法)があるということになります。
 冊子体のものが入学前後のガイダンスなどで配られたり、図書館にも置いてあったりする、甲南大学図書館「情報探索ガイド2025年度版」にも「NDC日本十進分類法」についての記載があります。図書館の1階に000から599までの本があり、2階に600から999までの本があります。学生の皆さんも、学部・学科等によってそれぞれ親しみのある番号があるのではないでしょうか。

【0 総記】
「日本十進分類法」では、第1区分の0に全体にかかわる総合的な本を分類することになっていて、「総記」と呼ばれています。0にも、03(百科事典. 用語索引)や08(叢書. 全集. 選集)などの第2区分、さらに第3区分等があります。司書教諭(学校図書館法5条)のある人が、この「総記」の0の存在が素晴らしいという趣旨のことを言っていました。これにより、各分野の分類が整うというのです。

【図書館は「楽園」か?】
 図書館には、様々な分野の書籍が所蔵されています。専門の番号の書籍を読み進めるとともに、100から999の数字のなかの普段は手に取らない分野の書籍も読んでみると、世界が多面的に見えてくるかもしれません。その際にも、「総記」の「0」にある百科事典などは有益です。読む本に迷ったら、同じく0の「02図書.書誌学」の中に「本を紹介する本」があります。他の図書館を訪ねてみたければ、日本の図書館、世界の図書館を紹介する本など、図書館についての本も0の中の「01 図書館. 図書館情報学」でみつけることができます。
 0をガイドに、様々な番号への知的な旅を可能にする場所が「図書館」であり、誰かにとっては「楽園」であるのかもしれません。

*しかし、実際には、エラスムスからジョン・フィッシャー(ロチェスター司教)宛ての書簡の中に「あなたがどれだけ際限なくその図書館にいようとも、私にとって全く不思議ではない。図書館はあなたにとって楽園である。私自身にとっては、そのような場所に3時間もいたら気分が悪くなってしまうだろう。」(”It is no secret to me how unremitting you are in the library, which for you is Paradise.” ”As for myself, if I stayed three hours in such place, I would be sick.”)との記述があり、少しニュアンスが異なっています。海に近いかの地の気候とそこにある四方をガラス窓に囲まれた図書館(室)がエラスムスの好みではなかったようです。

【甲南大学図書館で借りられる参考文献等】
<NDC・325・0>
・甲南大学図書館「情報探索ガイド2025年度版」
https://www.konan-u.ac.jp/lib/?page_id=245
・公益社団法人日本図書館協会「日本十進分類法(NDC)」(https://www.jla.or.jp/ndc/
・小林康隆編著『NDCの手引き:「日本十進分類法」新訂10版入門』(日本図書協会、2017年)(014.4//2009)
・宮沢厚雄『分類法キイノート:日本十進分類法[新訂10版]対応〔第3版補訂〕』(樹村房 , 2020年)(014.4//2011)
・伊藤靖史ほか『会社法〔第6版〕』(有斐閣、2025年)(325.2//2649)(1階シラバスコーナー)
・神田秀樹『会社法〔第27版〕』(弘文堂、2025年)(325.2//2652)
<日本・世界の「楽園」>
・新藤透編著『写真にみる日本図書館史』(日外アソシエーツ、2025年)(010.21//2040)
・立野井一恵『新しい、美しい日本の図書館』(エクスナレッジ、2024年)(010.21//2037)
・株式会社楽園計画編『図書館が街を創る。:「武雄市図書館」という挑戦』(ネコ・パブリッシング、2013年)(016.219//2001)
・立田慶裕『世界の大学図書館:知の宝庫を訪ねて』(明石書店、2024年)(017.7//2017)
・gestalten編『世界の図書館を巡る:進化する叡智の神殿』ヤナガワ智予訳(マール社、2023年)(010.2//2022)
・アルベルト・マングェル『図書館 愛書家の楽園』野中邦子訳(白水社、2008年(新装版、2025年))(010.2//2024)
・Desiderius Erasmus and Saint John Fisher, Jean Rouschausse, Erasmus and Fisher : Their Correspondence, 1511-1524 (Librairie Philosophique J. Vrin, 1968), 83 (https://www.google.co.jp/books/edition/Erasmus_and_Fisher/o1fI1hcp8okC?hl=ja&gbpv=0

[藤棚ONLINE]経済学部・荻巣嘉高先生推薦『原因と結果の経済学』

図書館報『藤棚ONLINE』
経済学部・荻巣嘉高先生より

 データサイエンス、流行ってますよね。書店などでも、やれ「AI」とか、「データドリブン」とかを冠した書籍がいろいろ出ています。データサイエンスが大きく流行り出した要因はいくつも議論されていますが、そのなかでも最もインパクトが大きかったのが、コンピュータ性能の劇的な向上と利用可能なデータの大幅な増加でしょう。さまざまな議論がデータに基づいて行われるようになったことはとても喜ばしいことです。その一方で、データから得られる含意を誤解する、あるいは悪意を持って誤った解釈をするというケースも散見されてきています。データを読み解く側のリテラシーがより重要になってきていると言えるでしょう。

 データを読み解く我々にとって重要なリテラシーのうち最も基本的なものは、「相関関係と因果関係は違う」という事実でしょう。相関関係はざっくりいえば、「Aが大きいとき、Bも大きい」とか、「Aが大きいとき、Bは小さい」といった関係性のことです。一方で、因果関係とは「Aが大きくなるとBは大きくなる」とか「Aが大きくなるとBは小さくなる」といった関係性のことです。因果関係は原因と結果の関係性と言い換えても良いでしょう。

 例えば、カレーの売り上げと日本の株価には正の相関関係があることが知られていますが(柴本、2017)、この2つには因果関係があると言えそうでしょうか?もし、「カレーが売れれば日本の株価が上がる」という因果関係が成立していれば、我々日本人が毎日カレーを食べればぐんぐん景気がよくなっていくと考えられますが、実際にそんなことが起こる可能性は限りなく低いでしょう。カレーの売り上げと株価には単に相関関係があるだけで、因果関係があるわけではないと結論づけるのが合理的です。相関関係を見つけるのは比較的容易な一方、因果関係をはっきりさせるのは非常に難しいのですね。

 それでは、因果関係を見つけるためにはどうすれば良いか。そんなあなたにおすすめのファーストステップが、この『原因と結果の経済学』(中室・津川、2017)です。この本ではデータから因果関係を分析するための基本的なコンセプトや、分析結果を読み解いたりする際のコツを教えてくれます。

 華やかに見える「データサイエンス」が、いかにチマチマとした地味で神経質な作業の上に成り立っているのか、その実態をこの本でちょっと覗いてみませんか。

参考文献

『データを分析する際に重要なこと:カレーが売れると株価は上がるのか』柴本昌彦、RIEBニュースレターコラム、2017

『原因と結果の経済学』中室牧子・津川友介、ダイヤモンド社、2017