夏目漱石著 『こころ』

 

 

知能情報学部 3年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : こころ
著者 : 夏目漱石

出版社:新潮社
出版年:1914

夏目漱石の『こころ』は、「先生」と「私」、そして「K」を中心に、人間の内面に潜む孤独や罪悪感を描いた作品である。私がこの作品に興味を持ったきっかけは、高校生の時に国語の教科書で一部を読んだことである。教科書では物語の一部分しか扱われていなかったが、先生の謎めいた態度や重苦しい雰囲気に惹かれ、全文を読んでみたいと感じた。そこで改めて作品を通読し、その印象は大きく変化した。

物語前半では、「私」が先生に強い関心を抱き、たびたび訪問する様子が描かれる。先生は知的
でありながらも人との距離を保ち、世間や他者をどこか信用していないように見える。この姿は、
高校生の頃には単に「暗い人物」という印象でしかなかったが、読み進めるにつれて、人間関係
の中で傷つくことを恐れる姿であると理解できるようになった。

物語後半で明かされる先生の過去、とりわけ K の死に対する罪悪感は、本作の核心である。先
生は自分の幸福を優先した結果、友人を死に追いやったという意識を生涯抱え続ける。その罪
の重さが、先生を孤独へと追い込み、最終的な選択へと向かわせたと考えられる。この部分は、
高校生の頃には理解しきれなかったが、大学生となった今読むことで、人間のエゴや弱さとして
現実味をもって感じられた。

また、明治天皇の崩御と乃木希典の殉死は、時代の終わりを象徴する出来事として描かれてい
る。先生の死は、近代化の中で生き方を見失った一人の人間の悲劇であり、時代とのずれを抱
えた存在の象徴とも言える。

『こころ』は、成長や立場の変化によって受け取り方が変わる作品である。高校生の時に感じた
違和感が、大学生になった今では人間理解へとつながり、この作品が長く読み継がれてきた理
由を実感した。