2-1. 学生オススメ」カテゴリーアーカイブ

フランツ・カフカ著 『変身』

 

 

知能情報学部 3年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 変身
著者 : フランツ・カフカ [著] ; 高橋 義孝訳

出版社:新潮社
出版年:1952

フランツ・カフカの『変身』は、ある朝突然巨大な虫に変わってしまったグレゴール・ザムザの姿を通して、人間の存在価値や社会との関係を鋭く描いた作品である。本作の特徴は、非現実的な
設定が冒頭から提示されるにもかかわらず、その原因や理由が一切説明されない点にある。この不条理さこそが、読者に強い違和感と問いを投げかける。

グレゴールは家族を養うために働く存在であり、虫に変身した後もまず仕事の遅刻を気にする。
この姿から、彼が一人の人間としてではなく「役割」として生きてきたことが分かる。変身によって労働能力を失った瞬間、家族の態度は徐々に冷淡なものへと変わり、彼は家族の中でも不要な存在となっていく。ここには、人間が社会や家族の中で「役に立つかどうか」によって評価される残酷な現実が表れている。

また、グレゴール自身も最後まで強く抵抗することなく、状況を受け入れていく。この態度は、彼
がすでに人間であった頃から抑圧された生活を送っており、自我を持つことを諦めていたことを示していると考えられる。つまり、虫への変身は突然の出来事でありながら、精神的には以前から「人間らしさ」を失っていたとも言える。

『変身』は単なる怪奇小説ではなく、近代社会における労働、家族、孤独といった問題を象徴的に
描いた作品である。カフカは極端な設定を用いることで、人間が社会の中でどれほど簡単に疎外
され、存在を否定されうるかを読者に突きつけている。本作は現代においてもなお、人間の価値
とは何かを考えさせる力を持つ作品である。

夏目漱石著 『こころ』

 

 

知能情報学部 3年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : こころ
著者 : 夏目漱石

出版社:新潮社
出版年:1914

夏目漱石の『こころ』は、「先生」と「私」、そして「K」を中心に、人間の内面に潜む孤独や罪悪感を描いた作品である。私がこの作品に興味を持ったきっかけは、高校生の時に国語の教科書で一部を読んだことである。教科書では物語の一部分しか扱われていなかったが、先生の謎めいた態度や重苦しい雰囲気に惹かれ、全文を読んでみたいと感じた。そこで改めて作品を通読し、その印象は大きく変化した。

物語前半では、「私」が先生に強い関心を抱き、たびたび訪問する様子が描かれる。先生は知的
でありながらも人との距離を保ち、世間や他者をどこか信用していないように見える。この姿は、
高校生の頃には単に「暗い人物」という印象でしかなかったが、読み進めるにつれて、人間関係
の中で傷つくことを恐れる姿であると理解できるようになった。

物語後半で明かされる先生の過去、とりわけ K の死に対する罪悪感は、本作の核心である。先
生は自分の幸福を優先した結果、友人を死に追いやったという意識を生涯抱え続ける。その罪
の重さが、先生を孤独へと追い込み、最終的な選択へと向かわせたと考えられる。この部分は、
高校生の頃には理解しきれなかったが、大学生となった今読むことで、人間のエゴや弱さとして
現実味をもって感じられた。

また、明治天皇の崩御と乃木希典の殉死は、時代の終わりを象徴する出来事として描かれてい
る。先生の死は、近代化の中で生き方を見失った一人の人間の悲劇であり、時代とのずれを抱
えた存在の象徴とも言える。

『こころ』は、成長や立場の変化によって受け取り方が変わる作品である。高校生の時に感じた
違和感が、大学生になった今では人間理解へとつながり、この作品が長く読み継がれてきた理
由を実感した。

アンデシュ・ハンセン著 『スマホ脳』

 

 

知能情報学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : スマホ脳 
著者 : アンデシュ・ハンセン著 ; 久山葉子訳

出版社:新潮社
出版年:2020

現代の生活において、スマートフォンは欠かせない存在となっている。調べ物や連絡、娯楽など、 生活のさまざまな場面で役立つ一方で、集中力が続かなかったり、無意識のうちに何度も画面を確認してしまったりする場面も増えている。「スマホ脳」は、そうしたスマートフォンが私たちの脳や心に与えている影響について、科学的な視点から分かりやすく示してくれる一冊である。

本書の特徴は、スマートフォンを単に悪いものとして扱わず、人間の脳の仕組みを軸に話が展開されている点にある。著者は、人の脳が新しい刺激や不安に反応しやすい性質を持っていることを前提に、なぜスマホに引き寄せられてしまうのかを説明する。そのため、集中できないことやスマホを手放せない状況を、個人の意志の弱さとして片付けていない点が印象に残った。

読み進める中で特に興味深かったのは、スマホが集中力や睡眠に与える影響が、感覚的な印象ではなく研究結果をもとに語られている点である。スマホを使っていない時間であっても、その存在が注意力に影響を及ぼすという指摘や、SNS の利用が心の状態に影響を与える可能性についての説明は、普段の生活を振り返るきっかけとなった。何気なく続けてきた行動が、思っている以上に脳に負荷を与えていることに気づかされる。

本書を読んで感じたのは、行動を無理に変えることよりも、まず自分の状態を理解することの重要性である。スマホとの距離を考える際にも、我慢や制限を重ねるのではなく、脳の働きを知ることで見え方が変わるのだと気づかされた。

「スマホ脳」は、スマートフォンとの付き合い方を考えるきっかけを与えてくれる一冊である。 日々の学習や生活の中で、集中が続かないと感じたとき、自分の行動や身の回りの環境を見直す視点を与えてくれるだろう。SNS を利用することが当たり前になってきている大学生や若者にとって、一度立ち止まって読んでみてほしい本である。

松下幸之助著 『道をひらく 』

 

 

知能情報学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 道をひらく
著者 : 松下幸之助

出版社: PHP研究所
出版年:1968

人生について考えていると、努力しているはずなのに先が見えず、不安になることがある。生き方や選択について考えれば考えるほど、どの道が正しいのか分からなくなり、立ち止まってしまう人も多いだろう。松下幸之助の『道をひらく』は、そうした迷いを抱えたときに、考え方を静かに見直すきっかけを与えてくれる一冊である。

本書は、日本を代表する経営者である松下幸之助が、人生や仕事について書き残した文章をまとめた随想集である。経営の成功法則を語る内容ではなく、日々の出来事にどう向き合い、どう考えるかといった姿勢が中心に描かれている。短い文章で構成されており、難しい言葉は使われていないが、一つ一つの言葉には長年の経験を通して培われた考えが込められている。

読んでいて印象に残るのは、物事が思い通りに進まないときの受け止め方である。先の見通しが完全に立たなくても、ある程度の確信があれば行動してみること、失敗そのものよりも、真剣に向き合わない姿勢を戒める考え方が繰り返し示される。また、同じ失敗を繰り返す背景には、自分自身に問いを投げかけることをやめてしまう点があるという指摘や、視点を変えることで新た な道が見えてくるという考え方は、行き詰まりを感じている読者に新しい見方を与えてくれる。どれも特別な考え方ではないからこそ、日常の中で意識しやすい内容だと感じられた。

本書を読んでいると、明確な答えを与えられているというよりも、自分自身に問いを返されているような感覚になる。何を選ぶか以上に、選んだ道にどのような姿勢で向き合うかが大切なのだということが、静かに伝わってくる。

『道をひらく』は、読んだその日から何かを変えさせる本ではない。しかし、迷いや不安を感じたときに読み返すことで、考え方を整理し、自分の立ち位置を見直すきっかけを与えてくれる。将来について考え始めた大学生や若者が、立ち止まったときにそっと手に取ってみてほしい一冊である。

池上彰著 『わかりやすさの罠 : 池上流「知る力」の鍛え方 』

 

 

知能情報学部 4年生 Yさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : わかりやすさの罠 : 池上流「知る力」の鍛え方
著者 : 池上彰

出版社:集英社
出版年:2019

『わかりやすさの罠』は、「わかりやすく伝えること」は本当に常に善なのか、という問いを真正面から投げかける一冊である。私たちは説明や発表、文章作成の場面で「わかりやすくしなければならない」と強く求められる。しかし本書は、その姿勢が思考を浅くし、重要なものを切り捨ててしまう危険性をはらんでいることを指摘する。

著者は、わかりやすさとは情報を単純化し、整理し、即座に理解できる形に変換する行為だと述べる。一見すると親切だが、その過程で本来の複雑さや曖昧さ、考える余地が失われてしまう。特に、答えが一つではない問題や、時間をかけて考える価値のあるテーマほど、「わかりやすさ」を優先することで誤解や思考停止を招きやすい。

印象的なのは、「わからなさ」には意味があるという主張である。すぐに理解できないからこそ人は考え、問いを立て、他者と議論する。本書は、わからなさを排除するのではなく、耐え、向き合うことが知的成長につながると教えてくれる。この視点は、効率や即答が重視される現代社会への強いアンチテーゼとなっている。

一方で本書は、わかりやすさそのものを否定しているわけではない。問題は、目的や文脈を無視して「わかりやすさ」だけを絶対視する態度にある。伝える側も受け取る側も、簡単に理解できたという満足感に安住せず、その裏で何が省かれているのかを意識する必要がある。

『わかりやすさの罠』は、情報が溢れる時代において、考える力を取り戻すための重要な示唆を与えてくれる一冊であり、学ぶ立場にある人だけでなく、教える・伝える立場の人にも強く薦めたい。

宇田川敦史著 『アルゴリズム・AIを疑う : 誰がブラックボックスをつくるのか 』

 

 

知能情報学部 4年生 Yさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : アルゴリズム・AIを疑う : 誰がブラックボックスをつくるのか
著者 : 宇田川敦史

出版社:集英社
出版年:2025

『アルゴリズム・AIを疑う―誰がブラックボックスをつくるのか』は、私たちの生活に深く入り込んでいるアルゴリズムやAIを「便利な技術」として受け入れるだけでよいのかを問い直す一冊である。検索結果、SNSの表示、採用選考、信用評価など、AIはすでに社会の意思決定に大きな影響を与えているが、その仕組みや判断基準は多くの場合「ブラックボックス」として不可視化されている。

本書の特徴は、AIを単なる中立的な技術としてではなく、「誰が、どのような意図や価値観で設計し、運用しているのか」という社会的・政治的な問題として捉えている点にある。アルゴリズムは客観的で公平だと思われがちだが、実際には設計者の前提、使用されるデータの偏り、企業や国家の利害が強く反映される。その結果、差別や不平等が強化されてしまう可能性があることを、本書は具体例を通して明らかにしている。

特に印象的なのは、「ブラックボックスは自然に生まれるのではなく、意図的につくられている」という指摘である。企業秘密や効率性、責任回避といった理由から、アルゴリズムの透明性は後回しにされがちだ。しかし、それによって不利益を被るのは、判断の根拠を知らされないまま評価される私たち市民である。

本書は、AIを全面的に否定するのではなく、「疑う姿勢」を持つことの重要性を強調している。仕組みを問い、説明を求め、社会全体で監視することがなければ、AIは民主主義と相容れない存在になりかねない。『アルゴリズム・AIを疑う』は、テクノロジーと社会の関係を考えるための入門書であり、AI時代を生きる私たちにとって必読の一冊である。