書名: 奴隷のしつけ方
著者: マルクス・シドニウス・ファルクス(ジェリー・トナー)
出版者: 太田出版 出版年: 2015年
場所: 2階中山文庫 請求記号: 232//F
イギリス・ケンブリッジ大学の古典学研究者ジェリー・トナーが、様々な古典にから奴隷に関するエピソードを引用しながら、古代ローマ貴族「マルクス・シドニウス・ファルクス」になりきって書いた「奴隷」の取り扱い説明書です。
奴隷というと、足かせをされ、鞭打たれながら厳しい労働をするというイメージですが、意外にも古代ローマ人は、奴隷にも人間性があることを認め、奴隷に対して過酷な扱いをすると法律に基づいて主人が罰せられることもありました。
主人は、奴隷たち一人ひとりをよく観察し、それぞれの適正に合った仕事を与えなくてはなりません。また、必要な食事や休憩、娯楽を与えないと生産性が落ちるため、福利厚生にも配慮しなくてはなりませんでした。
古代ローマの「主人」とは、家族や従業員、奴隷を含めた”ファミリア”という大きな組織を経営するリーダーでした。ローマという巨大帝国は、大小無数の”ファミリア”がそれぞれの事業を行うことで成り立っていたのです。
この本をお勧めする理由は、もちろん、労働者を奴隷のようにマネジメントする方法を学んでほしいからではありません。
何に囚われたら奴隷となってしまうのか、奴隷制度のどこに致命的な欠陥があるかを考えることができるからです。
実際、過去から学ぶことは、未来を創る上でとても役に立ちます。
マルクス・シドニウス・ファルクスもこんなことを言っています。
「あなたがどの時代のどこの人であろうとも、たとえその世界がローマとは異なる原則で成り立っていようとも、ローマから学ぶべきものなどないと決めつけてはいけない。ローマには多くの知恵が眠っている。そのなかには、あなたにとっても、目を閉じるより開けてよく見たほうが得になるものがたくさんあるはずだ。だから、読まれよ。そして学ばれよ。」(本文p020より)