月別アーカイブ: 2021年5月

村上 龍 著『コインロッカー・ベイビーズ』

法学部  1年生  Oさんからのおすすめ本です。

書名 : コインロッカー・ベイビーズ
著者 : 村上 龍 著
出版社:講談社
出版年:2009年

 みなさんは「コインロッカーベイビー」という社会現象を知っていますか。

 コインロッカーベイビーとは、鉄道駅などに設置されているコインロッカーに遺棄された新生児のことです。コインロッカーに新生児を入れることには、遺棄した側の匿名性が保持されやすい、異変に気づいても第三者が中を確認することは難しい、そもそもコインロッカーに人間を入れることが想定外であるという特徴があります。

 そのため、1971年にコインロッカーで乳幼児の死体が発見されて以来この問題はどんどん深刻化し、1973年には大都市のターミナル駅を中心に46件の遺棄事件が発覚しました。この問題を題材にして書かれたのが、『コインロッカー・ベイビーズ』です。

 この本の主人公のキクとハシは、生まれてすぐコインロッカーに入れられます。コインロッカーに入れられた子どもは殺されてから捨てられている場合もありますし、生きたまま入れられても亡くなってしまうことが多いのですが、キクとハシは奇跡的に助かりました。

 それから2人は乳児院で育てられますが、行動から病気かもしれない、ということで精神科医に連れていかれました。そこで乳児院のシスターたちは精神医から、生後わずか数十時間でコインロッカーの中で死に直面し覚えたであろう無意識下の恐怖、自分の肉体がそれに抵抗して打ち勝ったこと、2人を生き延びさせた強大なエネルギーの3つが脳のどこかにセットされており、そのエネルギーが自分で制御できないほど強くなっている、ということを告げられます。そして、2人はそのままでは正常な成長が出来ないので、そのエネルギーを眠らせる治療をすることになります。その治療法が、胎児が母親の体内で聞く心臓音を聞かせて2人をもう一度母親の体内にいた状態(強大なエネルギーを持つ前)に戻す、というものでした。

 治療は順調に終わり、シスターたちは最後に精神医から、変化した(変化をもたらした?)のが自分たちであることや、心臓の音を聞いて治療をしたことは人には教えてはいけないと言われました。

 乳児院で過ごしていたキクとハシは小学校入学の一年前に養子縁組が決まり、それからは里親に育てられました。2人が中学生になってしばらく経ったある日、あることがきっかけで、ハシが幼い頃病院で聞いた心臓の音をもう一度聞いてしまいます。それからというもの、ハシはあの日病院で聞いた音が分かるまで学校に行かないと言いだし、家にこもり、心臓の音を探すためにテレビから流れる音をずっと聞いていました。そしてついには理由も言わず東京へ家出をしてしまいます。ですがキクにはハシの行動が、母親を探すためだとすぐに分かりました。そんなハシを追うため、キクも東京に行きます。

 ここからコインロッカーで生まれた2人の人生は大きく変わり、壮絶な人生を送ることになります。

 私たちも、思い通りにならない事がたくさんあり、誰もが見えないコインロッカーに閉じ込められているかもしれません。そんな時にこれを読むと、閉ざされたコインロッカーから1歩踏み出すヒントをもらえるかもしれません。

 ハシは自分の生みの親に出会えるのか、キクはハシを追って東京に行き何をするのか、2人の破壊劇を見届けてみませんか。

横山 泰行 著『「のび太」という生きかた』

 

法学部  1年生  Kさんからのおすすめ本です。

書名 : 「のび太」という生きかた
著者 : 横山 泰行 著
出版社:アスコム
出版年:2014年

 国民的アニメの「ドラえもん」。誰でも1度は見たり聞いたりしたことがあると思います。

 ドラえもんに登場するのび太に着眼点をおいた『「のび太」という生きかた』という本をご紹介します。
 のび太にどのようなイメージを持っていますか?運動や勉強ができない、いつもお母さんや先生に怒られる、ジャイアンやスネ夫にはいつもいじめられている。それでも、遊ぶ時にはいつも大切な友達としてジャイアンとスネ夫を誘うし、母や先生ものび太を1度も見捨てたことはありません。

 この本にはのび太が人生の重要な節目ごとに着実に夢を叶え、「負け犬のび太」から「勝ち組のび太」になった話がたくさん書かれています。

 1つ例を挙げてみます。皆さんは約束事をうっかり忘れて破ったことはありませんか?
 のび太はうっかり約束を破ってしまいますが、そのことを反省して直ぐに対策を考え実行し、「何とかしよう」としています。そのように、もし失敗してもその結果から自分のやり方を考え反省し、挑戦すれば良いのです。

 ぜひ読んでみてください。

ダニエル・キイス 著『アルジャーノンに花束を』

 

法学部  1年生   鶴巻 茜さんからのおすすめ本です。

書名 : アルジャーノンに花束を
著者 : ダニエル・キイス 著
出版社:早川書房
出版年:2015年

 皆さんは、賢くなれる、知能を上げることができる手術を受けられるとしたら、受けたいですか?

 ダニエル・キイスによる『アルジャーノンに花束を』の主人公であるチャーリーは、ニューヨークのベーカリーで働いている知的障がいのある32歳の男性です。チャーリーは優しい心の持ち主で、周りから親しまれていました。周りの従業員たちはなぜかいつも笑っていて、その笑顔を見てチャーリーは自分も幸せな日々を送っていました。

 そのような中でチャーリーは医師と出会い、知的指数を上げる手術を受ける機会を得ます。先にその手術を受けて賢くなっていくアルジャーノンという一匹のネズミを見て、自分もアルジャーノンのように賢くなりたいと願い、手術を受けることにしました。日に日にチャーリーの知能は上がっていき、側にいた教授の知能をも超えるまでになりました。しかし、知能が高くなっていくことと引き換えに、手術を受ける前の頃には気づかなかった多くのことに気付いてしまい、絶望してしまいます。

 この本を読んで結末だけを見ると、客観的に考えて、チャーリーは手術を受けたことを後悔したんじゃないかと思う人もいるかもしれません。しかし、チャーリー自身は「後悔はしていない」と言いきります。

 チャーリーは幸せだったのでしょうか。自分にとっての幸せって何なのか。世間における人の存在意義とは何なのかということを考えさせられます。

 幸せを感じるためには「外に出たくないな」とか「課題をしたくないな」などの嫌なこと、つまり負の感情も必要であると思います。負の感情があるからこそ、美味しいものを食べたり、自分の好きなことをしたりして幸せを感じることができると思います。つまり、幸せの定義は人それぞれです。

 誰もがチャーリーになったような気持ちで飽きずに読むことができる本です。この本は「結果報告」という形で、チャーリーによって書かれている形式をとっています。チャーリーの感情や手術の効果が読み取れ、楽しむことができます。そして、チャーリーの優しさは、最初から最後の一文まで変わらないというところに感動します。

 チャーリーが絶望してしまった多くのこととは一体何なのか、ぜひ読んで確かめてみてください。

七月 隆文 著 『ぼくは明日、昨日のきみとデートする 』

 

法学部  1年生   建内 桃さんからのおすすめ本です。

書名 : ぼくは明日、昨日のきみとデートする
著者 : 七月 隆文 著
出版社:宝島社
出版年:2014年

 『ぼくはは明日、昨日のきみとデートする』を紹介します。
 この本は実写化しているので知っている人も多いと思います。

 私も映画を見て、もう一度ゆっくりこの物語を読みたいと思い小説を読みました。

 本のタイトルや表紙からは恋愛小説を思い浮かべると思います。もちろん恋愛小説なのですが、それだけではなくSFの要素も入っている物語です。

 美術大学に通う恋愛経験のないたかとしくんが電車で高嶺の花のえみちゃんに一目惚れし、普段だったら女の子と話すこともないのですが、えみちゃんに惹かれ、声を掛ける場面からはじまります。

 散歩に誘い、帰り際にたかとしくんがえみちゃんに「またあえる?」と聞きます。その時えみちゃんは泣き出します。その時はなぜえみちゃんが涙したのか、たかとしくんにも、読者である私にもわかりませんでした。その後たかとしくんはえみちゃんと交際することになるのですが、えみちゃんはことあるごとに涙を流します。

 ここまでの話だと普通の恋愛のように思えますが、えみちゃんには大きな秘密があります。それがえみちゃんが事あるごとに涙する理由です。
 この秘密をたかとしくんが知った時、物語は切なく大きく転換します。

 この物語はぜひ、2回読んで下さい。
 1回目に読んだ時と、えみちゃんの秘密を知った上で読んだ2回目では、180度違う物語のように感じます。1回目は純粋な恋愛物語、2回目はえみちゃんの行動全てが切なく思えてきます。

 もっとも印象に残っている場面は、冒頭の、散歩をして別れる場面です。1回目はいい感じのカップルのデートのように思えますが、2回目に読んだ時には切なく、残酷に感じると思います。物語の始まりなのにどうして切ないか疑問に思うと思いますが、2回読むことでその理由もわかります。

   最後に私のお気に入りのフレーズを紹介します。
 
   「僕たちはすれ違っていない。一つの輪になって繋がっているんだ」

   この本を読んだ後なら素敵で心に響くフレーズになると思います。
   是非読んでみてください。

藤崎 彩織 著 『ふたご』

法学部 1年生 Oさんからのおすすめ本です。

書名 : ふたご
著者 : 藤崎 彩織 著
出版社:文藝春秋
出版年:2017年

 皆さんはどうして高校を卒業し、今大学に通っているのでしょうか。

 きっと、大半の人が将来を考えての選択をしたのだと思います。私を含め、多くの人が未来のことを考え、学校を辞めるという選択はしてこなかったはずです。

 しかし、この本、登場人物の1人である月島は違いました。高校はつまらないから、行く目的がわからないから。この理由だけで学校をポンと辞めてしまうのです。そんな破天荒すぎる少年、月島が主人公である夏子を振り回しながら生活していくのが『ふたご』の物語です。

 『ふたご』は藤崎彩織さんが書いた小説です。藤崎彩織さんは、男女混合バンド「SEKAI NO OWARI」でピアノ演奏を担当しているSaoriさんです。Saoriさんが自分で経験したバンド結成の話をベースに書かれているので、この物語はほぼノンフィクションの実話です。さきほどでてきた破天荒少年月島は深瀬をモデルに、主人公夏子はSaoriをモデルに書かれたと言われています。それを踏まえて読むとすごく面白いです。これが本当にノンフィクションなのかと疑うほど現実味のない話ばかりだからです。

 現実味のない破天荒なことを月島は次々に行っていきます。そして、どん底に落ちます。波乱万丈すぎる人生をおくる月島。どれだけ壮絶な人生を送ったのかが見所なので、是非読んでみてください。月島はどん底から抜け出せることができるのでしょうか。

 そのほかにもバンドを始めるきっかけや、成功するまでのたくさんのエピソードなど、バンドの裏側を知ることができることもこの本の魅力の1つです。

 最後に題名についてお話ししたいと思います。皆さんは仲の良い友達のことをなんと呼びますか?普通は「親友」と呼ぶのが一般的だと思います。しかし、月島は夏子との関係を親友とは呼びませんでした。この本の題名でもある、「ふたご」と呼びました。このことばに隠された2人の関係はどのようなものなのでしょうか。

 そんなことを考えながら、ぜひ読んでみてください。

石原顕光著 『トコトンやさしいエントロピーの本 』

理工学部  1年生 石山 遥希さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : トコトンやさしいエントロピーの本
著者 : 石原顕光 著
出版社:日刊工業新聞社
出版年:2013年

化学の授業で初めて「エントロピー」と言われた時、まったく何を言っているのかわからなかった。授業が終わった後、何度教科書をみたがやはりわからなかった。
そこでエントロピーについて詳しく書かれた本を図書館で探していた時、この本に出会った。
最初は「トコトンやさしい」という題名に惹かれ、この本を読みだした。するとびっくりするくらいわかりやすく書かれていて、自分がわからなかったところもピンポイントで解説してくれており、この本を最後まで読み終えたとき、エントロピーの全体像がつかめていました。
理系の人は嫌でもエントロピーを学ばないといけないので、理系学部の人はぜひとも一度手に取ってみてください。