日下部岳広先生(理工学部)「とても人間的な『研究』と『科学者』」

☆新入生向けの図書案内
みなさんは、どんな将来を思い描いて大学に入学しましたか。私は生物学者になりたいと思っていました。生き物の研究をして、それが仕事になればいいな…と。ところが、入学してすぐ、友人にこの夢を語ると、「この大学を卒業したって学者になんかなれないよ」と笑われてしまいました。まだやっと入学式が済んだばかりなのに、なんでそんなことが分かるのだろう???
内心、やってみなきゃわからないと思いつつ、やっぱりそうなのかなあ、とさっそく自信がなくなってきました。そんなとき、夢を目指すことを後押ししてくれた本があります。

著者: 藤原正彦
タイトル: 若き数学者のアメリカ
出版者: 新潮社
出版年: 1977
配置場所: 図書館 1階開架一般
請求記号: 295.3//2006

※新潮文庫でも出版されています。

●藤原正彦『若き数学者のアメリカ』新潮文庫この本は著者がアメリカで数学者として過ごした熱い体験記です。一人の若者がアメリカで生きる姿に、魅せられ、励まされました。自分もこんな冒険がしてみたいと思いました。
あるときは不安に苛まれ、またあるときは怒り、喜び、奮闘するようすに、「学者」がぐっと身近に感じられます。40 年近く前の話ですが、著者がみた日本とアメリカの違いも、いまでも興味深く読めると思います。
もうひとつ、「学者」のイメージを変えてくれる本を紹介します。

著者: キャリー・マリス
タイトル: マリス博士の奇想天外な人生
出版者: 早川書房
出版年: 2000
配置場所: (近日配架予定)
請求記号: 

● キャリー・マリス『マリス博士の奇想天外な人生』福岡伸一訳、早川書房
マリス博士は、PCR 法という、医学・生物学はもとより、犯罪捜査のDNA 鑑定や考古学まで広く使われている大発明をした科学者です。1993 年にノーベル化学賞を受賞しました。PCR 法は、分子生物学者なら誰でも知っている基礎知識を、いくつか組み合わせただけの簡単なもの。でも、だれも思いつかなかった「コロンブスの卵」です。ひらめいたのは、なんとデートの途中(!)。マリス博士はすべてが型破りで、真似をするのはおすすめしませんが、科学という実は人間的な営みにふれ、人生のヒントを与えてくれる(かもしれない)一冊です。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.29 2012) より