島本憲一先生(マネジメント創造学部学部)推薦『生態学からみた自然保護地域とその多様性保全』

☆新入生向けの図書案内

著者: 大澤雅彦 監修, (財)日本自然保護協会 編集
タイトル: 生態学からみた自然保護地域とその多様性保全
出版者: 講談社
出版年: 2008
配置場所: 図書館 1階開架一般
請求記号: 519.8//2025

日本の自然保護地域には、国立・国定・都道府県立自然公園をはじめ、自然環境保全地域、鳥獣保護区、森林生態系保護地域など様々なものがある。その一方で、国際条約などの保護地域としては、世界自然遺産、生物圏保存地域、ラムサール湿地などが挙げられる。このような自然保護地域は、指定地域、対象とする生物・自然としても個体・種・生態系など多岐にわたる。また、そのような自然保護地域は、それぞれ異なる理念や目的から成り立っており、相互のカテゴリーの関連性や保護管理の方法も異なり、専門家でさえも混同しがちである。
そこで、本書は、日本の多種にわたる自然保護地域に関して、その情報の整理を試みている。また、それぞれの自然保護地域の理念や目的、制度の構成、保護の対象、保護管理のしくみ、開発行為との関連性に関して、国、都道府県、市町村等の各レベルから説明を行い、自然保護地域を管理していく上で重要な概念的、具体的指針を与えることを目的としている。
本書の主な貢献としては、⑴各自然保護に関する制度間相違を整理するための図表の多用、⑵各自然保護地域における豊富な事例、⑶基本概念、保護管理や制度の現状、問題点、その具体的な解決策等の簡潔な説明、が挙げられる。本書の内容に関しては、⑴生物多様性の保護における保護地域の意味、⑵日本の自然保護地域、⑶世界の主な自然保護制度と日本における指定、⑷日本の自然保護地域のグローバルな位置づけと今後の課題、となっており、大学院生のみならず、学部生にも理解しやす
いものとなっている。
以上より、本書は、日本の自然保護地域に関して、初級から中級レベル、かつ学術的のみならず実用的な内容構成となっており、推薦に値する図書であるといえよう。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.29 2012) より