ダニエル・キイス 著『アルジャーノンに花束を』

 

法学部  1年生   鶴巻 茜さんからのおすすめ本です。

書名 : アルジャーノンに花束を
著者 : ダニエル・キイス 著
出版社:早川書房
出版年:2015年

 皆さんは、賢くなれる、知能を上げることができる手術を受けられるとしたら、受けたいですか?

 ダニエル・キイスによる『アルジャーノンに花束を』の主人公であるチャーリーは、ニューヨークのベーカリーで働いている知的障がいのある32歳の男性です。チャーリーは優しい心の持ち主で、周りから親しまれていました。周りの従業員たちはなぜかいつも笑っていて、その笑顔を見てチャーリーは自分も幸せな日々を送っていました。

 そのような中でチャーリーは医師と出会い、知的指数を上げる手術を受ける機会を得ます。先にその手術を受けて賢くなっていくアルジャーノンという一匹のネズミを見て、自分もアルジャーノンのように賢くなりたいと願い、手術を受けることにしました。日に日にチャーリーの知能は上がっていき、側にいた教授の知能をも超えるまでになりました。しかし、知能が高くなっていくことと引き換えに、手術を受ける前の頃には気づかなかった多くのことに気付いてしまい、絶望してしまいます。

 この本を読んで結末だけを見ると、客観的に考えて、チャーリーは手術を受けたことを後悔したんじゃないかと思う人もいるかもしれません。しかし、チャーリー自身は「後悔はしていない」と言いきります。

 チャーリーは幸せだったのでしょうか。自分にとっての幸せって何なのか。世間における人の存在意義とは何なのかということを考えさせられます。

 幸せを感じるためには「外に出たくないな」とか「課題をしたくないな」などの嫌なこと、つまり負の感情も必要であると思います。負の感情があるからこそ、美味しいものを食べたり、自分の好きなことをしたりして幸せを感じることができると思います。つまり、幸せの定義は人それぞれです。

 誰もがチャーリーになったような気持ちで飽きずに読むことができる本です。この本は「結果報告」という形で、チャーリーによって書かれている形式をとっています。チャーリーの感情や手術の効果が読み取れ、楽しむことができます。そして、チャーリーの優しさは、最初から最後の一文まで変わらないというところに感動します。

 チャーリーが絶望してしまった多くのこととは一体何なのか、ぜひ読んで確かめてみてください。