服部正也著『ルワンダ中央銀行総裁日記(増補版)』

服部正也著『ルワンダ中央銀行総裁日記(増補版)』 中公新書290
図書館1階開架小型 S081.6/290/29

IMFからの技術援助の一環で、アフリカの中央にある国「ルワンダ」の中央銀行に、総裁として派遣された服部正也氏の記録です。
服部氏が着任されたのが1965年で、この本は1972年に発行されたのですが、古さはまったく感じません。

当時のルワンダは独立したばかりの国で、『中央銀行』といっても、何もない。
経済は設立当初から破綻寸前で、外貨は底をつきかけ、銀行券(お札)さえ足りていない。
人員不足、技術不足だけではなく、植民地時代からの悪習や差別、劣等感などとも戦わなくてはならない。

赴任初日のベッドの中で、服部氏はこう思います。
「なるほど中央銀行の現状は想像を絶するぐらい悪い。しかしこれは逆に見れば、これ以上悪くなることは不可能であるということではないか。そうすると私がなにをやってもそれは必ず改善になるはずである。・・(中略)・・働きさえすればよいというようなこんなありがたい職場がほかにあるものか。」
そして、服部氏はルワンダ経済を自立させるために、敢然と取り組んでいきます。

中央銀行の役割を理解するだけではなく、国際貢献に対する考え方、何より最も困難で責任ある仕事への取組み方を知ることができます。
服部氏は、この本の最後を次の言葉で締めています。
「途上国の発展を阻む最大の障害は人の問題であるが、その発展の最大の要素もまた人なのである。」

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服部氏がルワンダを去った後、順調に経済を発展させていたルワンダですが、1994年に世界を揺るがした凄惨な内乱がおきました。
2009年に出版された増補版には、服部氏によるこの事件についての論考が追加されています。