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秋田みやび著 『ぼんくら陰陽師の鬼嫁』

 

 

マネジメント創造学部 4年生 塩谷 瑠緋さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : ぼんくら陰陽師の鬼嫁
著者 : 秋田みやび著
出版社:KADOKAWA
出版年:2016

当時大学生だった野崎芹は、住居であったアパートを火事によって失ってしまった。彼女はカフェでのあるバイトで多少のお金は稼いでいたものの、住む場所を無くし、貯金も底をつき、経済的に困窮していた。公園で途方に暮れていた芹の目の前に突如、“皇臥”と名乗る男性と、着物を着た幼い女の子、“護里”が現れる。行き場所がない芹を見かね、皇臥は“衣食住を与える代わりに自分の妻になるのはどうか”という交換条件を提示し、芹は飛びつくようにその提案を受け入れる。しかしその後、芹は、嫁ぎ先が北衛門という代々受け継がれる陰陽師一家だったことを知り、またそれに仕える亀の式神が実は公園で出会った女の子だったことを知る。

北衛門家の妻として暮らし始めた芹だったが、ある日、芹の知り合いのペットのケージにお札を貼られるという事件が起きる。原因が分からないままその後次々と不可解な事件が起きるが、だいだい受け継がれている陰陽師の知識と式神の力を使って何とか切り抜ける。

私がこの本をお勧めする理由は、芹との夫婦としての距離がシーンを通して徐々に縮まっていることを感じることができるからだ。

初めは芹も皇臥もどこかよそよそしく、お互いにまだ相手のことを信じ切れていない部分があり、事件の真相を調査する中でぎくしゃくする部分もあったが、次第に夫婦関係について真剣に考えるようになり、いつしかお互いに頼り合えるような関係にまで発展する。また、最初は陰陽師という仕事について不信感を抱いていた芹だったが、次々と起こる不可解な事件に対し懸命に対処にあたろうとする皇臥を見て、協力的になっていく姿も個人的に一番気に入っている。

夫婦としてお互いに相手のことを信頼し、また家族である2匹の式神との関係や隣人との関係通し、夫婦とは何なのか、家族とは何なのかについて考えさせられる、そんな物語になっている。

家族関係や友人関係で悩んでいる、そんな時に読んでみてほしい小説である。

日本マクドナルド著 『日本マクドナルド「挑戦と変革」の経営 : “スマイル”と共に歩んだ50年』

 

 

知能情報学部 4年生 Mさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 日本マクドナルド「挑戦と変革」の経営 : “スマイル”と共に歩んだ50年
著者 : 日本マクドナルド著
出版社:東洋経済新報社
出版年:2022年

マクドナルドは(出版年当時)世界100以上の国と地域に約4万店を展開しており、目にしたことが一度はあるでしょう。よく食べる人にとっては当たり前かもしれないですが、そんなマクドナルドも日本初上陸時には馴染みのない食べ物であり、定着できるかの不安が経営側にはありました。本書は成功や失敗、挑戦や変革によって、日本マクドナルドが今日に至るまでどのような歴史を辿ったかを追う内容となります。

実際に本書でその歴史を読んでいても、一筋縄ではいかない挑戦の連続でした。社員教育の徹底化や食材の調達方法であったり、初日の売り上げは予想の4割程度、なかなか増えない日本人の来客数であったりなど。またドライブスルー導入やレジ小型化の推進、日本人に合わせた商品の開発など、時代とともにニーズも変化することに対応し成功を続けた事例がある一方、食品の品質と安全問題、他の要因による成長の停滞、これに伴って従業員の士気が低下する問題もありました。このときマクドナルドが行った行動が、お客様のところに行き、直接声を聴くということです。当時のCEOが日本で実際に意見交換をし、その声を反映させたことは当時ニュースにもなり、非常に関心が集まったことだと考えられます。その後、お客様の声を聴き、応えるためのアプリ「KODO」も開発され、より広く声を集めることでマクドナルドの店舗体験は改善され、今日のようなマクドナルドの雰囲気が出来あがっていったと考えられます。

その後もマクドナルドのお客様のニーズに合った取り組みは止まることはなく、失敗以上に成功体験を更に磨き上げサービスとして提供する姿勢を続けたからこそ、我々が受けるサービスがあると考えます。マクドナルドの挑戦の歴史を知ってもらうことで、サービスの根幹に当たる部分へ思いを馳せて食事を楽しんでもらうためにも、本書はマクドナルドで働いたことのある人、ない人に関わらず、すべての人に読んでもらいたいと思える内容でした。

牧輝弥著 『大気微生物の世界 : 雨もキノコも鼻クソも : 気候・健康・発酵とバイオエアロゾル』

 

 

知能情報学部 4年生 Mさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 大気微生物の世界 : 雨もキノコも鼻クソも : 気候・健康・発酵とバイオエアロゾル
著者 : 牧輝弥著
出版社:築地書館
出版年:2021年

一般的に微生物と聞くと、感染症や腐敗菌を思い浮かべ、よい印象を持つことは少ないだろう。実際、人に対し有害な種もあり、そのイメージは間違っているわけではない。しかし、微生物があるからこそ今の我々の生活があり、高等生物の進化につながったものもある。一概に微生物を、その恩恵や影響を考えずに悪者扱いすることは無理がある。

そんな微生物も研究が進展している最中であるが、大気中を浮遊する種、いわゆるバイオエアロゾルについてはまだわからないことだらけである。ここでも、大気中の微生物は悪影響を与えるものが想像されやすいが、実際には無害、もしくは有用な種も存在している。特に高度三千メートルの大気中の菌から納豆を作るという内容は、その先入観を覆すには十分な記事であった。本書ではここ十五年で盛んになってきた大気微生物に研究について、筆者自身の取り組みを交えながら、エッセイ風に紹介されている。

筆者の研究が一筋縄ではいかないエピソードが興味深くもあり面白く、特に衝撃を受けたのが中国の砂漠への出入りが禁止されたことに関係するエピソードである。黄砂発生源でのバイオエアロゾルの採取のためには中国の砂漠で観測する必要があり、それには中国の研究者との共同研究体制がなければ実現はしない。しかし、黄砂によって健康に良くない微生物が飛んできていると論文で発表したため、中国側からの反感を買ってしまい出入りが禁止されてしまった。

この時から、これまでのバイオエアロゾルによる悪い影響を調べるというストーリーが、よい影響を調べるというストーリーに変化した。その結果、美容医療、健康食品などにバイオエアロゾルの持つ効果を適用できないかの研究が進み、この過程で大気中の細菌から納豆を作り製品化することも実現した。実際に機内食としてこの納豆を紹介している記事を読んだことがあるが、このような背景があったことは知らなかったため、研究に対する熱意をこの本から改めて感じることができた。

微生物と聞いて、あまりよくない影響を思い浮かべてしまった方にこそ、この本を読んでもらい、様々な場面で我々の生活と密に関わっていることを知ってもらいたい。もしかすると、思わぬ形での関わりに気づくことができるかもしれない。

森剛志(経済学部)『団塊ジュニアの医療と介護 : 超高齢化社会における社会保障制度』

■『団塊ジュニアの医療と介護 : 超高齢化社会における社会保障制度
東京大学出版会 , 2024.12
■ ISBN  9784130403214

■ 請求記号 498.021//2053
■ 配架場所 図書館1階・教員著作コーナー
■ 編著者 橘木俊詔, 森剛志(経済学部)著

<自著紹介>
若者は、なぜ病んでいるのか?1970年代生まれの「団塊ジュニア世代」こそが、病める若者の最初の世代であった。団塊ジュニア世代のこれまでの人生は経済的に恵まれない状況が続いた。何よりも、親の世代と比べると国民負担率が倍近く重い。本書は「団塊ジュニア世代」に焦点を当てて、その親や祖父母の世代と比較しながら、今後の医療介護の問題を取り上げたものである。どうすれば、この重圧から解放されるのか、本書でその処方箋を見つけてほしい。

金成隆一著 『ルポトランプ王国 : もう一つのアメリカを行く』

 

 

知能情報学部 4年生 Hさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : ルポトランプ王国 : もう一つのアメリカを行く
著者 : 金成隆一著
出版社:岩波書店
出版年:2017年

「第47代アメリカ合衆国大統領はドナルド・トランプです!」

朝のニュースを見ているとアメリカの大統領選の結果が流れてきた。信じがたいニュースに驚きつつも、「なぜ彼が選ばれたのか?」という疑問が浮かぶ。そんな問いへの答えを探るために最適な本が、金成隆一氏の『ルポ トランプ王国』だ。

本書は、トランプ支持者が多く住むアメリカ中西部や南部、いわゆる「ラストベルト」地域を中心に現地取材を重ねたルポルタージュだ。著者は都市部のエリート層が理解しきれていない「もう一つのアメリカ」に光を当て、そこで生きる人々の声を拾い上げている。廃れた工場地帯や失業にあえぐ地域で、トランプ氏を支持する理由を直接聞くことで、ニュースでは報じられない彼らの本音に迫る。

本書が特に印象的なのは、トランプ支持者たちの多様な背景と動機だ。彼らは必ずしもトランプ氏を全面的に支持しているわけではない。むしろ、「現状を変えてくれる存在」としてトランプ氏を選んだという意識が強い。製造業の衰退、移民問題、教育や医療の格差など、都市部の人々には遠い現実が、地方の人々の生活を直撃している。彼らの声を聞けば、「アメリカンドリーム」がどれほど歪み、失われつつあるかがよくわかる。

また、本書のもう一つの魅力は、著者の視点があくまで中立的である点だ。トランプ支持者を非難するのではなく、彼らの思いをそのまま伝える姿勢は、読者に偏見なく考えさせる力を持つ。現地の風景描写や個々のエピソードも豊富で、まるで旅をしながらアメリカの深層を見つめているような感覚に浸れる。

『ルポ トランプ王国』は、単にトランプ支持者の声を伝えるだけでなく、アメリカ社会の深層に潜む問題を浮き彫りにする力強い一冊だ。読者に対して、トランプを支持する理由をただ批判するのではなく、彼が生まれた社会的背景を考えるように促す。この本を通じて、アメリカの分断や社会的格差の実態を知り、政治や社会について考えるきっかけを得ることができるだろう。

トランプがなぜ選ばれたのか、その答えを一歩踏み込んで考えるための手助けとなる本書は、政治に無関心な人々にもぜひ読んでほしい一冊である。

三宅香帆著 『「好き」を言語化する技術 : 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』

 

 

知能情報学部 4年生 Hさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 「好き」を言語化する技術 : 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない
著者 : 三宅香帆著
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版年:2024年

最近、「推し」という言葉を耳にする機会が増えた。「推し」とは、特定の人物やキャラクター、作品、商品などに対して、熱い支持や深い愛情を注ぐ行為、またはその対象を指す言葉である。
あなたには「推し」はいるだろうか?私には、「推し」と呼べる小説がある。

ある日、友人からこんな質問を投げかけられた。
「それ、どんなところがいいの?」
私はその問いにうまく答えることができなかった。
「えっと……うーん、面白いんだよね。」
平凡でありきたりな答えしか浮かばず、自分の語彙力の乏しさ、言語化能力低さに少し落胆した。

そんな中、書店でたまたま見かけ購入したのがこの本である。本書では、「推し」についての発信でいちばん重要なことは自分の言葉を作ることであるとされている。

今の時代、SNSを通じて他人の感想が際限なく流れてくる。他人の感想に触れているうちに自分の感想を忘れ、他人の感想がまるで最初から自分の言葉の感想であるかと錯覚してしまい自分の言葉は、感想は何だったのかよくわからなくなってしまう。私達は他人の言葉に影響を受けてしまうものなのだ。だからこそ他人の言葉と距離を取るために自分の言葉を作ることが重要なのである。そしてその自分の言葉を作るためのちょっとしたコツが本書では紹介されている。

読了後、私自身も自分の「推し」を語るための言葉を少しずつ増やしてみた。「好き」を細分化し、自分の言葉で、自分だけの感情で自分はこの作品のどこが好きなのか言語化していく作業は思った以上に楽しく、自分の中にこんなに多くの感情が隠れていたことに驚かされた。そしてその言葉が他人と共有できたとき、「推し」を語ることの喜びと、新たなつながりの素晴らしさを改めて実感することができた。

本書は「推し」の素晴らしさを言語化することに悩む人々にとって、具体的な手法と共感を提供する一冊だ。自分の感情を言葉に乗せて伝える力を高めたいと考えるすべての人に、ぜひ手に取っていただきたい作品である。