2.おすすめの本」カテゴリーアーカイブ

水野 敬也 著 『夢をかなえるゾウ 』

経済学部   1年生 村井 舜さんからのおすすめ本です。

書名:夢をかなえるゾウ
著者 :水野 敬也 著
出版社:飛鳥新社
出版年:2007年

 人間の身体にゾウの頭、四本の腕を持ったインドの神様“ガネーシャ”をご存じだろうか。
どうやらガネーシャが言うにはモーツァルトもピカソもビル・ゲイツをも育てて有名にしたのは彼らしい…

 子供の頃から何度も先生や、その他の大人の方から聞かれた言葉に「将来の夢は?」というものがある。そのように聞かれれば多くの人はプロ野球選手に芸能人、医者や経営者など世間的に見て成功している人を答えることだろう。では彼らのように夢を叶え、成功するためにはどうすればいいのだろうか。その方法をなぜか関西弁を話すインドのゾウの神様“ガネーシャ”は(あんみつと引き換えに)教えてくれる。

 自己啓発本といえば筆者の成功談を堅苦しく書き綴ったものが多く、少し読みにくいように感じることが多いが、この本はそうではない。著名人のほとんどはワシが育てたと自称するインドの神様ガネーシャと自分を変えたいと話す主人公との会話形式でこの本のストーリーは進んでいき、その中には日本人にもよく知られている別の神様も登場する。ガネーシャからは簡単な課題が与えられ、その課題を主人公は一つひとつこなしていくことでだんだんと成長していく。会話形式で進んでいくのでとても読みやすく、本を読みながら自らできることは実践してみることで主人公と一緒に自分自身も成長していき、ときにはガネーシャにツッコミをいれたくもなるとても読みやすくおもしろい本である。

 今までとは違う自分になりたい、変わりたいと思ってはいるが行動を起こせていない人、なにか大きなことをしてでも自分を変えなければいけないと思っていないだろうか、そんなことはない日常の些細なことを意識し行動するだけで自分を変えられる、自分を成長させることができる、そう気づかせてくれる一冊になっている。

 私は大学生の間にこの本に出会い、読むことができてよかったと思っています。興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。
 

パニコス・パナイー著 栢木 清吾訳 『フィッシュ・アンド・チップスの歴史 : 英国の食と移民 』

文学部  3年生  Iさんからのおすすめ本です。

書名 :フィッシュ・アンド・チップスの歴史 : 英国の食と移民
著者 : パニコス・パナイー著  栢木 清吾訳
出版社:創元社
出版年:2020年

 イギリスの食べ物と言えば、皆さんは何を思い浮かべるだろうか……

 本書はイギリスの代名詞であるフィッシュ&チップスの歴史を巡る物語である。フィッシュ&チップスの誕生は19c半ばと言われ、その誕生から200年も経っていない。本書ではそのフィッシュ&チップスがどのように誕生したのか、そしてどのようにイギリスや世界で広がっていったのかについて書かれている。

 特に興味を惹かれるのは、フィッシュ&チップスのフライドフィッシュはユダヤ人文化から、(南米原産のジャガイモが材料の)チップスはフランスからもたらされたと言われていることだ。イギリスの調理技術や食材を用いていないフィッシュ&チップスが、イギリスの象徴となっていく過程では、グローバル化における自国文化のあり方が問われていると感じる。

 グローバル化が食に与える影響は、例えば日本のスシで考えることも出来る。アメリカでSushiと言えば、海苔が内側で、米が外側になった巻き寿司に、アボカドやサーモン、カニカマなどを組み合わせたカリフォルニア・ロールなどが有名である。アメリカで人気のSushiは、日本人が思い浮かべる握り寿司のようなものとは、かなり異なっている。しかし日本からもたらされたスシは、アメリカでSushiという一つの新たな文化として進化を続けている。

 このように、イギリスで発展したフィッシュ&チップスも、移民や外国の技術がなければ誕生しなかったのだが、これは食に限った話ではない。グローバル化が進む世界では、様々なバックグラウンドを持つ人々が入り混じり、新たな文化を生み出している。自国の文化を保つことも大切だが、他文化を尊重して取り入れ、新たな文化を生み出すことも、今の世界では大切なことだと感じる。本書では、フィッシュ&チップスというイギリスの食べ物を通して、移民や外国文化との融合で生まれる新たな文化の捉え方を学ぶことが出来る。グローバル化の現代、世界が手を取り合うべき今だからこそ、読んで見て欲しい一冊である。

朝井 リョウ著 『学生時代にやらなくてもいい20のこと 』

文学部  3年生  Sさんからのおすすめ本です。

書名 : 学生時代にやらなくてもいい20のこと 
著者 : 朝井 リョウ著
出版社:文藝春秋
出版年:2012年

 この本は『桐島、部活やめるってよ』で有名な朝井リョウさんのエッセイである。大学で100キロ歩いたり、旅行に失敗したりする話をはじめ、作者の様々な大学生活が20に分けて語られている。

 読みどころは、つい笑ってしまう作者の体験である。私は、甲南大学のある授業で様々な感情の中で「おもしろい」を表現することは難しいと学んだ。嬉しいや悲しい感情はある程度共通するものの、「おもしろい」はそれぞれ人によって笑いのツボが違うからである。しかし、この本は個人的には笑う箇所が多かった。

 なぜ「おもしろい」を上手く表現していたか考えると、予想を裏切る展開が多いからだと思う。世間の人が一般に想像する展開を裏切るほどギャップが大きくなり笑いを生みだすと別の本に書かれていたことを思い出した。例えば、作者と美容師の会話である。自慢のシャンプーの効能を当ててほしいという美容師に対し、作者はしぶしぶ髪がつやつやになるとありきたりな回答をするが、美容師からは意外な答えが返ってくる。このように、作者のエッセイでは大抵の人が想像する展開を見事に裏切る箇所が散りばめられていたのだ。

 最近では、大学時代には○○をすべき、○○はやってよかったなど、読むことに意味を見出す本やネット記事が多くある。しかし、目的を持たずに一人の学生時代の日々をつづった本も固まりきった頭をほぐしてくれるのではないだろうか。タイトルには「学生時代にやらなくていい」とあったように、付箋を貼る箇所は1つも無かった。それでも意味や目的を考えず、自分の興味や気持ちを優先していた作者の体験を読むと無駄なことも大切だなと感じられた。北海道へ思いつきで旅行したり、東京から京都に自転車で移動したりする体験を読むとコロナ禍で遠出が厳しい中一緒に旅をし、思い出を分けてもらえた気分になった。

 エッセイは20の話に分かれており、短編なのですぐ読める。20の中から1つでもお気に入りの話を見つけて隙間時間や疲れた時に読んでもらいたい。

[藤棚ONLINE]図書館長・木成勇介先生(マネジメント創造学部)推薦『FACTFULNESS』『あなたを変える行動経済学』

図書館報『藤棚ONLINE』
図書館長・木成勇介先生(マネジメント創造学部) 推薦

 経済学と聞いて皆さんは何をイメージしますか?お金の儲け方?それとも景気の良し悪し?どちらも間違いではないのですが、経済学はもっと広い分野なのです。ヒトの性格やクセ、脳の活動やホルモンの影響まで、経済学の対象はホントにとても広いのです。

 では、図書館についてはどうでしょう?皆さんは何をイメージしますか?本を借りる場所?本を読む場所?静かな場所?どれも間違いではないのですが、甲南大学の図書館はもっと幅広い場所なのです。映画館のようにDVDを観る場所もあります(一度は体験してください)。友人と談笑する場所もあります(ホントは議論する場所だけど、議論がいつの間にか談笑に変わっていても気にしません)。待ち合わせ場所として雑誌を読みながら友達を待つのも、皆さんが企画したイベントを実施する場所としても大歓迎(むしろ一緒にやりませんか?)。

 私の専門である行動経済学では、ヒトは勝手な思い込みから正しい判断ができず、損をしてしまうことが知られています。経済学の話も図書館の話もその例なのかもしれません。思い込みにとらわれず、学生生活をもっと豊かにしようと考える、そんなあなたに以下の2冊をオススメします。

ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド(2019)「FACTFULNESS」日経BP

大竹文雄(2022)「あなたを変える行動経済学」東京書籍


【図書館事務室より】
 藤棚ONLINE2022年度第1号は、今年度新たに図書館長に就任されましたマネジメント創造学部教授・木成勇介先生よりおすすめ本をご紹介いただきました。甲南大学図書館にも所蔵がある本ですので、ぜひ読んでみてください!
 図書館は、この春ようやく電源増設工事を実施し、また書庫利用等のサービスの受付も1階に集約するなど、よりよい図書館サービスを目指して改革中です。Twitterやブログでも情報発信していきますのでご注目ください!
 学生の皆さんのご来館をお待ちしています。

[藤棚ONLINE]共通教育センター・吉川 歩 先生 問題解決法雑感&推薦『思考法図鑑』

図書館報『藤棚ONLINE』
共通教育センター・吉川 歩 先生 問題解決法雑感&推薦
『 思考法図鑑 : ひらめきを生む問題解決・アイデア発想のアプローチ60 』

 「問題を解決するために一番重要なことは何か」と聞かれた時のあなたの答えは?

 私ならば「まず,何が問題であるかを適切に見いだす」ことと答えます.実社会では,それこそ試験でもない限り,答が一意に定まった明確な問題が与えられていることは極めて稀です.また問題としてわかっていてもどう答えを見つければよいかわからなければ解決は困難になります.つまり解ける問題にブレークダウンすることが重要になります.実はこれらの部分が一番難しいようで,担当している「共通教育演習」という講義でも,受講者がプロジェクトのテーマ設定の段階で難渋しているのをよく目にします.なお私見ですが,問題解決でよく出てくる「PDCA」は「解ける形になった問題」をどう解決していくかの話で,解ける形になっていない問題に適用しても期待した結果が得られないことも多いです.

 さて話を戻しますが,「問題をいかに解決できる形にするか」のヒントを与えてくれる書籍の一つが「思考法図鑑」です.扱われている内容は,問題解決のための,いわゆる「発想支援」と「分析方法」の紹介になっています.見開き2ページで1テーマが図と例で紹介されており,その数は60種に及びます.自分の扱っている対象をどう切り崩していくか困った時の事典代わりに利用できます.ダウンロード可能な各方法のPowerPoint形式のテンプレートも用意されています.

 反面,実際に紹介されている方法を使う際には別途詳細に調べる必要があります.またキーワードから方法の当たりをつけるという用途からいえば,索引がないのは非常に残念なところです.なおこの書籍には紹介されていませんが,OODAやこの書籍が出版されてから提案された「か・き・く・け・こ」ループなどの方法もありますので,書籍中にしっくりくるものがないときはさらに探してみることをお勧めします.

【参考リンク】

・思考法図鑑 : ひらめきを生む問題解決・アイデア発想のアプローチ60 / アンド著. — 翔泳社, 2019.10.

・𠮷川 歩, 問題解決のための「か・き・く・け・こ」ループ, 知能と情報, 2020, 32 巻, 4 号, p. 797-800  https://doi.org/10.3156/jsoft.32.4_797

ヴァン・デル・ポスト「カラハリの失われた世界」

 L.ヴァン・デル・ポスト「カラハリの失われた世界」
(筑摩叢書170)筑摩書房 , 1982.6

南アフリカ出身のローレンス ヴァン・デル・ポストが、1955年に行ったアフリカの狩猟採集民”ブッシュマン”を探すための探検記。
初版は1958年にロンドンで出版され、ベストセラーになりました。

ノンフィクションですが、ヴァン・デル・ポストは小説家でもあるので、アフリカの大自然が抒情的に表現され、探検隊の人間関係のドラマも含めて読み応えがあります。
仲間をあつめ、武器や装備を整えて、ライオンやカバ、ワニなどの猛獣が住む土地に向かい、狩りをしながら神秘的な聖地を冒険する。
ライトノベル界隈では”異世界もの”が流行っていますが、リアル異世界には違った面白さがあります。

絶版本なので、図書館でどうぞ。