2.おすすめの本」カテゴリーアーカイブ

アヴィ・スタインバーグ『刑務所図書館の人びと』

アヴィ・スタインバーグ著 金原瑞人・野沢佳織訳
『刑務所図書館の人びと ハーバードを出て司書になった男の日記』
2階中山文庫 936/ST

「昼間労働に明け暮れる囚人たち全員に、毎夕最低1時間、本が読める明かりを提供するべきである」
19世紀の監獄の内規にこうあるそうです。(本文p291より)

受刑者たちに本を読ませることは、更生と社会復帰を目指す刑務所の目的に適っている。
でも、彼らが本を読むでしょうか?
(大学生でも読んでくれないのに・・・。)
たとえ本を読んだとしても、刑務所図書館で自分を変える努力をし、傑物と呼ばれる人物となる可能性は低いです。
この本では0.01パーセントの確率と書かれていましたが、実際にはもっと低いでしょう。

ハーバード大を卒業したけれど、上手に人生を送ることができず、たまたま募集のあった刑務所図書館に就職した「アヴィ」。この本は、アヴィがその体験を書いたノンフィクションです。
少し分厚く見えますが、名翻訳家・金原瑞人氏の訳で、とても読みやすいです。

ハードな人生を送る受刑者たちと、神経質な刑務官たちとの人間関係は、感受性の強いアヴィには強すぎて、苦悩の日々が続きます。
しかし、その日々を彼が書き留め伝えることで、忘れられるはずだった数人の人生が、本として残されました。

大学図書館で自分を変える本と出会い、不断の努力をした結果、社会にとって欠かせない人物となる可能性だって、そんなに高いものではないかもしれません。
図書館で働く人間として、確率が低くてもその可能性に賭けてみたい、という気持ちがないわけではありませんが、むしろ、傑物にならなくてもいいから、豊かな人生を送ってほしい、と私は思っています。

読んだ人たちが、もしかしたら自分の人生を大切に生きてくれるかもしれない、そんな可能性のあるこの本をご紹介できることは幸運だと思いました。

(konno)

『古記録による16世紀の天候記録』

水越允治編『古記録による16世紀の天候記録』東京堂出版, 2004.4
図書館 4階書庫大型(和) 451.916//2006

公文書や貴族が書いた日記などに記録されていた、天気に関する情報を抜き出して一覧表にまとめた本です。
中世のお天気(主に近畿地方)を、日付から調べることができます。
11世紀から16世紀まで、計6冊あります。

16世紀といえば、戦国時代。
たとえば「本能寺の変」が起きた天正10年(1582年)6月2日を調べてみると、『言経卿記』に「晴陰」とiいう記載があるとわかります。
続く15日頃まで梅雨らしい雨の日が多かったようです。ということは、秀吉軍はだいぶ足元の悪い道を京都まで戻ったのではないでしょうか・・・。
(ちょうど大河ドラマが、今「本能寺の変」ですね。ドラマ中では、お天気はどうでしょう。)

ちなみに「晴陰」がどんな天気かを調べるには、インターネットで調べてもいいのですが、辞書データベースを使うと面白いです。
甲南大学図書館ホームページ>情報検索データベース>百科事典・辞書から『JapanKnowledge』が利用できます。
学内のPCルームや図書館のパソコンなどからしか利用できないのですが、百科事典や専門事典、言語事典などを一度に検索できる便利なデータベースです。(詳しい接続方法は、甲南大学図書館ホームページを見て下さい。)
検索窓の左側プルダウンメニューを「全文」に切り替えると、本文も検索対象になるので、「晴陰」という言葉がどのように使われているか、ということも調べることができます。

図書館には、「読む」だけではなく、「調べる」ための本やデータベースもあります。
想像以上にいろいろな事を調べることができますよ。
使い方や調べ方がわからないときは、2階の『ヘルプデスク』におたずねください!

(konno)

杉本鉞子著『武士の娘』

杉本鉞子著『武士の娘』(筑摩叢書97) 
1階一般開架 081.6/97/21

明治6年、越後長岡藩の家老の家系に生まれた「エツ」こと杉本 鉞子(すぎもと えつこ)が自身の半生を書いた自伝です。
初版は1925年にアメリカで『A Daughter of the Samurai』というタイトルで出版されました。

越後長岡藩は、戊辰戦争では幕府側で戦った藩です。
没落した家でのつつましい生活でしたが、「エツ」は母や祖母からは伝来の作法通りに、武士の娘としての教育を受けて育ちます。

父が亡くなって、アメリカから帰国した兄が家を継いだ後、エツは14歳で在米の日本人と婚約。
渡米に備えて越後から東京に出て女学校で英語を学び、25歳でアメリカへ。

・・・と、ここまでにして、『武士の娘』には書かれなかった後日談を少し。

シングルマザーになった「エツ」はニューヨークに移り住み、二人の娘を育てるために、文筆家として生計をたてることを目指します。
友人の助けを得ながら、苦心して生み出されたのが『武士の娘』でした。
『武士の娘』はベストセラーになり、杉本鉞子は日本人初のコロンビア大学講師となります。

経済的にも文化的にも変化していく時代を、「矜持」をもって生き抜いた一人の女性は、「世界に通用する淑女」ではないでしょうか。

古い本ですがとても読みやすいです。
古き、良き、美しい日本語で書かれた文章もぜひ味わってください。

(Konno)

『大学生が狙われる50の危険』

『大学生が狙われる50の危険』 三菱総合研究所、全国大学生活協同組合連合会、全国大学生協共済生活協同組合連合会
図書館 2階中山文庫一般 377/D

  自分は大丈夫!と思っている人ほど要注意

   ・サークルやボランティアに見せかけた悪徳宗教団体の勧誘パターン
   ・「スマホ」から、住所・電話番号・連絡帳がダダ漏れに
   ・「交流サイト」「ネットゲーム」・・・18歳制限が外れることで起こる大問題
   ・「ストーカー」被害にあわないポイント
   ・訪問、送りつけ、電話、架空請求・・・大学生を狙う新手の詐欺手口

  大学をやむなく中退する学生は毎年5万人います。
  このようなトラブルがきっかけとなった人も少なくありません。
  新入生には是非、読んで気をつけてほしいです。

最相葉月『セラピスト』

『セラピスト』最相葉月著
図書館 1階開架一般 146.8//2595

   心の病いは、どのように治るのか。
   『絶対音感』『星新一』の著者が問う、心の治療の在り方。
   うつ病患者100万人突破のいま、必読のノンフィクション。
   二人の巨星、故河合隼雄の箱庭療法の意義を問い、
   精神科医の中井久夫と対話を重ね、セラピストとは何かを探る。

 この本の中で、甲南大学カウンセリングセンターや、木村晴子先生、
 高石恭子先生などが登場します。
 心理学を勉強されている方、必見です!

『長谷川三郎 : 日本抽象のパイオニア』

『長谷川三郎 : 日本抽象のパイオニア』明石市立文化博物館編
図書館 3階書庫一般 723.1//2063

  洋画家、長谷川三郎を知っていますか?
  世界に誇る前衛美術の先駆的画家です。
  そして、長谷川三郎は、甲南中学校に入学、
  大正15年、甲南高等学校第一回生として卒業するまでの8年間を
  甲南生として過ごし、個性尊重の校風のなかで、自ら美術への知性、
  感性、意欲を育み磨き始めました。
  その作品が、甲南高等学校に寄贈され、「長谷川三郎記念ギャラリー」として
  開設されています。

  この本は、長谷川三郎の作品が紹介されています。
  甲南にゆかりのある美術家の作品をながめてみてください。