2-2. 教員オススメ」カテゴリーアーカイブ

須佐 元先生(理工学部)「とにかく沢山読もう」

☆新入生向けの図書案内
 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これからの新生活に心踊らせていることと思います。皆さんはこれまでも沢山の本を読んで来られたと思いますが、これからの四年間は、たっぷりと読書の時間が取れる人生の中でとても貴重な時間です。読書にはルールはありません。読書はまずは楽しみであり、同時に知識を得るための一つの方法です。読みたい本をできるだけ沢山読んでください。そこで得た知識は糧となり、また身についた読書習慣は今後の長い人生に、人工的ではない美しい色合いと深みを与えてくれるはずです。みなさんの選書の助けとなるかどうかわかり
ませんが、私が最近気に入った本を紹介しておきます。
『淳子のてっぺん』 唯川恵著
 これは世界で初めてエベレスト登頂に成功した田部井淳子さんのノンフィクションストーリーです。彼女の世代ではまだまだ女性登山家は少なく、登山家の世界は典型的な男社会でした。その中で決して諦めずに自分の信じた道を歩き、パイオニアと言って良い存在になっていった先達のストーリーです。現在でも日本は先進国の中では女性の
社会参加はかなり遅れていると言われています。皆さんにはぜひ一度手にとって欲しい一冊です。
『銀河鉄道の父』 門井慶喜著
 これはあまりにも有名な童話「銀河鉄道の夜」の作者である、宮沢賢治の父の視点からみた賢治の一生の物語です。ずば抜けた感性を持った賢治が普通の俊英からどの様に文学者へと脱皮していったのか、またその過程に父のどのような苦しみ、右往左往があったのかが描かれています。皆さんの視点から言えば、皆さんの保護者の方々がどのような気持ちで皆さんを見守っているのかということがわかるのではないでしょうか。
『宇沢弘文のメッセージ』 大塚信一著
 これは宇沢弘文と言う伝説的経済学者の業績に関して伝記的にまとめられたものです。数学者として出発した宇沢は経済学に転じ、そこで大きな業績をあげていきます。宇沢の思想には常に社会的弱者の視点があり、それが「社会的共通資本」という考えに結実していきます。門外漢でも読めるように書かれており、社会問題への意識を喚起し、偉大な先達の人生のあり方を学ぶという点でお薦めします。
 以上3冊推薦しましたが、とにかくそれぞれがそれぞれの興味の赴くままに本を読んで下さい。

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.35 2018) より

西川麦子先生(文学部)「人を介して本に出会い、本を介して人に出会う」

☆新入生向けの図書案内
 私は、文学部社会学科の「メディアコミュニケーションと表現」領域の科目を担当しています。また、アメリカのコミュニティラジオ局でHARUKANA SHOW(HS)という日本語ラジオ番組を主宰し、インターネットで日米をつなぎ、毎週、生放送をしています。アメリカの大学図書館に勤務している番組スタッフの一人が、『国立国会図書館月報』(633 号2013 年12 月)の「本屋にない本」欄に紹介されている、平原哲也著『日本時間―日系社会のラジオ番組―ブラジル編』(2010)という本が興味深いので、番組でもとりあげましょう、と知らせてくれました。平原氏は、実は、「月刊短波」(2011 年12 月号)のサイトに、「米国コミュニティFM で日本語番組」というHSを紹介する記事を書いていました。
 さっそく、『日本時間』を注文しました。これは、ブラジル日系移民向けの日本語ラジオ番組や日本音楽番組についての1930 年代から現代までの歴史を、ブラジルの日本語新聞や日系人向けの出版物や関係者への取材などをもとにまとめた貴重な自主制作出版物です。驚いたことに、この本の9頁に、甲南学園の創立者の名前がありました。「1935 年5月16 日に日本経済使節団がリオに到着した。翌17 日夜に平生釟三郎団長が全国ネットのラジオ番組に出演し、…。」さらに詳しく知りたい方は、甲南大学図書館に、小川守正・上村多恵子著『大地に夢求めて―ブラジル移民と平生釟三郎の軌跡』(神戸新聞総合出版センター、2001)、など関連する本がたくさんあります。HSでは、2014 年に『日本時間』を紹介し、翌年、平原氏に番組にも出演していただきました。本もラジオもインターネットも含め、メディアとは人と人をつなぐ媒体です。
 ところで、HS の2017 年秋の番組テーマは「音楽体験」でした。異なる世代の出演者が、どのように音楽と出会いどんな媒体を介して聴いてきたかを語りました。そこで紹介された本、『実践カルチュラル・スタディーズ:ソニー・ウォークマンの戦略』(ポール・ドゥ・ゲイ他著、暮沢剛巳訳、大修館書店、2000)は、甲南大学図書館の中 山文庫にあります。また、入門書としては、田中東子・山本敦久・安藤丈将編著『出来事から学ぶカルチュラル・スタディーズ』(ナカニシヤ出版、2017)もおすすめです。
HARUKANA SHOW: http://harukanashow.org/

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.35 2018) より

小西幸男先生(共通教育センター)「グローバル人材になるために読書?」

☆新入生向けの図書案内
 最近はグローバル化という文字が其処彼処に使われ、なんだか新しいことの様に扱われる。社会はグローバル人材の育成やグローバル化が今後の生き残りの手段のように騒ぎ立てる。ちょっと知りたいことがあれば、インターネットにアクセスして即座になんらかの答えが検索できる。情報環境の中で自分の中で「コレだ!」と確信することはとても難しい。ネット上では怪しい情報に惑わされることもある。
 世界を相手に状況や相手を理解するには、いろんな情報を知っておく必要がある。インターネットの情報にはその結論やモノの見方に到達する過程が省略されている。回答だけがポンと目の前に表れ、「なぜそうなるのか?」「なぜ違うのか?」の謎は解けないままのことも多い。だから、その場での解答は得られても、自分のモノになりにくい。
 自分のアイデンティティーとか価値観を持っていないまま世界に出て行くと「単なる日本から来た人」になってしまう。世界中どこへ行っても「自分」を持ち、表現できることがグローバル人でないかと思う。
 では、「自分」を築く近道はなんなのかと考えるとインターネット検索よりも時間はかかるけど、驚くことに「読書」が実は時短テクの一つなのだ。時間がかかって面倒に思える読書だが、「本」は恋愛小説から専門書まで様々なジャンルがある上に、自分で選べる。読むことは文字の情報以外にも知恵や情報を自分のモノにする思考回路を育てるのにとてもいい訓練の方法の一つである。
 例えば、読書を通じて他人の人生を疑似体験できる。実際には恋愛をたくさんすることは不可能だけど、物語ではいろんな身分・状況・心情を体験出来る。独りではいろんなことを体験したり、研究したりすることもできない。しかし、読書はそれを可能にする。読書の中で考えるプロセスを通して、経験値となって自分の中に蓄積できるのだ。
 グローバルを意識するにはまず足元から。日本を知っておくために日本中を旅したり、いろんな美やワザを習得したりすることは容易ではないけど、大学生の間に出くわす新しい知識や体験を自分のモノにするために何をどのように理解して知っておくかを読書のプロセスを通じてぜひ身につけてください。

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.34 2017) より

伊東浩司先生(スポーツ・健康科学教育研究センター)「想像と知識」

☆新入生向けの図書案内
 昨年・一昨年度、新入生へむけての図書館報「藤棚」を書かせていただきました。その「藤棚」を読み返すと年月が過ぎていくのが本当に早いと感じています。2017年度入学された皆さんは、これからの学生生活に夢や希望に満ち溢れていることだと思います。ただ、充実した学生生活はあっという間に過ぎ去っていきます。この学生生活をより充実させるためには、勉学・スポーツなど多くのことをチャレンジしてほしいと考えています。様々な学生生活の一つとして、読書活動を推進するライブラリ サーティフィケイト というものがあります。貴重な学生生活の中でゆっくりと本を読める時間が持てれば本当に素晴らしいことだと考えています。私自身、スポーツ・健康科学教育研究センターに所属しているので、スポーツと本に関して少し書かさせていただきます。昨年、ブラジルのリオデジャネイロでオリンピック・パラリンピックが開催されました。日本代表選手の活躍で日本国内も大いに盛り上がりました。メダリストが東京都中央区をパレードした際には、沿道に80万人の方が祝福に駆けつけました。そのメダリストの半生などが書かれた本も多く出版されています。あの時の感動の思い出しながら、それまでのプロセスを知ることで、選手自身やその競技種目がより好きになるのではないでしょうか。そして、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックの次は、2020年に東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。皆さんが入学して4年目にあたります。私自身、この東京オリンピックへ向けて、陸上競技の強化委員長を昨年の10月からつとめています。新しく出来る国立競技場に日章旗をあげるという壮大な目標にむかって悪戦苦闘しています。そのような時に、大きな力になってくれるのはネットからの情報よりも、本から多くの情報を得ています。特に、スポーツやビジネスなどの世界でリーダーとして活躍された方の本を読むだけで、私の想像と知識の引き出しが増えていきます。そのため、時間があれば本を読んで少しでも想像と知識の引き出しを増やしていきたいと心掛けています。2020年は、皆さんにとって就職活動の年度になることを考えると、ぜひ、時間がある時に本を読んで少しでも知識の引きだしを増やる学生生活を送っていただきたいと考えています。

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.34 2017) より

中村典子先生(国際言語文化センター)「「多様性」の価値について考える」

☆新入生向けの図書案内
 本学の図書館で見つけて読んだ本で、非常に読みやすく、ためになった本のひとつに、日高敏雄編『生物多様性はなぜ大切か』(昭和堂, 2005年)がある。2001年に創設された京都の国立・総合地球環境学研究所が開催した2004年のフォーラム「もし生き物が減っていくと――生物多様性をどう考える」がもとになっている書物である。
 環境問題を抱える現在の地球において、「生物多様性」がもたらしうる利点は多くあるが、経済効果が大きいと予測されるもののひとつに医薬品などがある、という話に始まり、「雑食」の人間には、生物多様性が必要不可欠であり、生物多様性が減ることは、人類の生死にさえかかわる問題であることがわかりやすく解説されている。また、人間がつくりだしている「文化の多様性」に関しても多くのことを教えてくれる。エジプトのナイル川沿いのアスワン付近のワディ・クッパーニャ遺跡の例を挙げ、ある生活様式や技術が、たとえ、その時代の主流ではなくとも、目立たなくとも、次の時代に人間が生き残るきっかけとなり、その後、人間が生きていくために不可欠な様式や技術となった事例が、歴史上、少なからず存在したというのである。言い換えれば、多様な文化が共存していたことにより、人類は、環境の劇的変化があっても存続できたのであり、人類の長期的な生存に必要な条件は、<他と異なる文化を生み出すこと>、<多様性を維持すること>であるという内容で示唆に富んでいる。 さて、現在の私たちの生活様式はどうだろうか? グローバル化が推し進められるなか、世界中で同じ商品が流行し、同じようなファースト・フードで食事を済ませる傾向が強まっている。外国語教育に関しても、特に日本では、英語が重視される傾向が強まっている。また、日本人には「皆と同じである」ことを好む人がかなり多いといわれるが、それが「空気をよむ」といった表現を通じて、いわば「強制」される感もある。だが、ここで立ち止まって考える必要があるだろう。
 新入生の皆さんには、世の中の趨勢に惑わされることなく、自分が人生においてやりたいことは何か、どのような仕事に従事したいのか、また、他の人と異なる「自分の個性」を発揮できることは何か、と考える習慣を身につけてほしい。気の進まないアルバイトや仕事を断る勇気を持つことも大切だ。そうでないと、周りに流され、自分を見失ってしまうかもしれない。昨今問題になっている「過労死」の問題もこうしたことと無関係ではない。なんらかの選択に迷ったら、あえて「人と違うことを選ぶ」くらいの意気込みを持って物事に挑み、他の人と異なる視点を持つことを通じて、「多様性」の価値について考えてみてほしい。また、さまざまな分野の本を読むことにより、「多様性」の重要性を認識できるはずである。受験勉強から解放された今こそ、読書の習慣を身につけることをお勧めしたい。

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.34 2017) より

三好大輔先生(フロンティアサイエンス学部)「先ずは自国のことから」

☆新入生向けの図書案内
 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。晴れて入学を果たされた皆さんは、様々な期待や夢に胸を膨らませていることと思います。「将来は世界で活躍したい!」そう考えている方も多いことでしょう。私はここ数年、甲南大学の国際交流センター運営委員も務めています。エリアスタディーズというプログラムの一環として、1年生から大学院生までを連れてシンガポールを訪問し、現地の学生さん、教員・研究者などとの交流を図っています。参加者の当初の希望の多くは、「英語が話せるようになりたい」というものです。しかし、帰国後は、「もっと英語力が必要」ということ以外にも、「日本のことをもっとしっかりと紹介したい」という感想をもつ参加者が多くいます。
 私たちは、日本で生活し、日本の文化や風習、そして考え方に慣れ親しんでいます。日本では常識と思うことでも、海外の方からすると新鮮で不思議なことがたくさんあるようです。私も米国の大学で博士研究員をしていたころには、研究室の友達から、日本の歴史や文化について、よく質問された思い出があります。歴史の授業が大の苦手だった私には、日本の歴史について聞かれても、「???」となるばかりで、まともな受け答えができるはずもありません。「これはまずい!」となった私が遅ればせながら読んだ本が、司馬遼太郎著の「この国のかたち」です。
 本書は、昭和61年から著者が亡くなった平成8年までの間に連載された随筆をまとめたものです。島国日本の風土、文化、宗教、そして日本がなぜ戦争を引き起こすことになったのか、など様々なテーマについて思索し、「日本人とは何か」という著者が終生問い続けてきた問題に迫ろうとしているように思います。
 自国の歴史と、それに基づいた自分のアイデンティティについて考えて自分なりに理解することなしには、他国の人々の歴史や考え方との差異や共通点を見出すこともできません。相手を理解するには、先ずは自分を理解する必要があります。ということで、グローバル化には、「先ずは自国のことから」考えてみるほうがよいと思います。司馬遼太郎の本を片手に、国際交流センターで海外からの留学生と語り合うというのも楽しいのではないでしょうか。

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.34 2017) より