月別アーカイブ: 2020年5月

紺野キリフキ 著 『はじめまして、本棚荘』

 

文学部  3年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  はじめまして、本棚荘
著者 :  紺野キリフキ
出版社:メディアファクトリー
出版年:2010年

もしも本棚だらけのアパートがあるのなら、読書が好きなあなたは入居したいと思うだろうか。

「昔はねえ、お家賃というのは本で払ったものですよ」と、本棚荘の大家さんは言う。このアパートは、中にも外にも本棚だらけである。そんな所へ姉の代わりに引っ越してきた、本に興味のない「わたし」。

主人公の女性は「とげ抜き師」である。とげ抜き師とはどんな職業なのだろうか。
作中では、このとげ抜き師に対して疑問を抱く人物はいない。むしろ、「とげ」を抜いてもらうために彼女の元へ訪れ、「わたし」はそのとげを抜くのである。
夜の仕事に務める女のとげ、猫遣いの男のとげ、眠り姫と呼ばれる大学生のとげ、捨てられたサラリーマンのとげ、それぞれ違う理由で携えてしまったとげや、その本棚荘の人々と関わりあうことで、「わたし」は確かに成長していくのである。

この物語の肝は、やはり詳しく説明されることのない「とげ」という存在である。しかし、読者は登場人物たちのとげを知るたびに、どこか現実味を感じて、違和感なくこの存在を受け入れることができるのである。それはきっと、読み手が心のどこかで感じた感情をゆったりと重ね合わせることで、言葉にするのは野暮であるように「とげ」の正体を理解することができるからである。
そして、紺野キリフキという作家が描き出す世界は、あまりにも現実を突飛に切り取っている。それはまさに確立した世界観であるといえるだろう。その優しくも摩訶不思議な文章はぜひ一度味わってもらいたい。

姉が返ってくることが決まり、最後は「わたし」が本棚荘から立ち去る姿が描かれる。その描写は、まるで不思議な世界に迷い込んだようである。
本を閉じれば、自分にとっての「とげ」と静かに向き合いながら、心地良さがふと残ったまま。

 

森 絵都 著 『カラフル』

 

文学部  3年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : カラフル
著者 : 森 絵都
出版社:文藝春秋
出版年:2007年

本学で所蔵している本はこちら⇨ 森 絵都著 『カラフル』講談社 , 2011年

自分で初めて買った小説を思い出せるだろうか。私にとって「カラフル」はそんな一冊である。

死んだはずの自分の魂が抽選に当選したことにより、本来なら生まれ変われるものの生前の過ちのせいで輪廻のサイクルから外れた「ぼく」が、自殺を図った中学生である小林真の体を借りることで、天使と共に、生前に自分が犯した過ちを探るという物語である。

まるで児童文学のようなファンタジーである物語には、リアルな社会問題を抱えた登場人物たちが描かれている。ユーモアある在り得ない設定により、それが優しく描かれているため、そのバランスこそが幅広い年代の人々に親しまれ続けている理由ではないだろうか。

主人公である「ぼく」には記憶が無く、そんな状態で突然知らない環境の中へ放り込まれるわけだから、その手探りで人間関係を図りながら宿主である小林真という人物像を探そうとする姿は、楽しみながら気軽に読み進めることができる。あまりにもどうしようもない人間であった小林真を変えるために奮闘する姿も、その初々しい努力にはどこか惹きつけられるような魅力を感じるだろう。そんな中、立て続けに辛い出来事が「ぼく」を襲う。そして、10代という多感な時期に生きる登場人物たちは、その不安定な気持ちを吐露し合っていくのである。そこからは、薄暗くもどこか共感できるような感情が描かれており、言葉の一つ一つが鮮明かつ印象的に心に残るのではないだろうか。

そして、「ぼく」は本来の目的である生前の過ちを思い出すのである。
読了後余韻として残るのは、「カラフル」というタイトルの意味と、数々の名言である。

当たり前に生きる日常が、少し違った見え方をするようになるかもしれない。
まだ読んだことのない方にはぜひ一度手に取って頂きたい名作である。

尾形 真実哉 (経営学部)『若年就業者の組織適応:リアリティ・ショックからの成長』

<教員自著紹介>

本書は,企業で働く若手社員に焦点を当て,リアリティ・ショックなどの適応課題をいかに乗り越え,一人前に成長していくのか。また,若手社員を上手に適応させるための会社や職場の働きかけにも焦点を当て,若手社員の組織適応を質的データと量的データを用いて丹念に分析しています。

企業の人事担当者や管理者だけではなく,これから社会に出る学生も多くのヒントが得られるはずです。

下記、本書のレビュー記事になります。併せて参考にして下さい。
https://www.rosei.jp/jinjour/article.php?entry_no=77804

■『若年就業者の組織適応:リアリティ・ショックからの成長 
■ 尾形 真実哉 著 , 白桃書房 , 2020年2月
■ 請求記号  336.4//2576
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  尾形 真実哉 (経営学部)

 

<尾形先生お薦めの本>

中原淳 編(2017)『人材開発研究大全』東京大学出版会.
金井壽宏・鈴木竜太 編(2013)『日本のキャリア研究―組織人のキャリア・ダイナミクス―』白桃書房.

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図書館では、学生の学修を支援するため 5/7(木)より、休館中の新たなサービスとして、 本の郵送貸出と 雑誌のコピーの郵送サービスを開始しました。(無料です。)

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皆さんが将来、社会に出て働くようになると、こうしたまとまった静かな時間はなかなかありません。

読書をするのも良し!家族と一緒にゆっくりと食事や話をするのも良し!爽やかな気候になってきたので散歩やジョギングをするのも良いかもしれません。

ピンチはチャンスと前向きに捉えてぜひ、知的好奇心を最大限に発揮して、限られた行動範囲のなかでも今しかできない自分だけの時間を作ってもらいたいと思います。

図書館では、頑張っている皆さんをいつでも応援しています。分からないこと、不安なことがあればメールにて、いつでも相談してください。