月別アーカイブ: 2023年5月

[藤棚ONLINE]理工学部・池田茂先生推薦「鏡の中の物理学」

図書館報『藤棚ONLINE』
理工学部・池田茂先生推薦「鏡の中の物理学」


 私の研究室の書棚にある教科書や専門書に紛れて、解説を含めても全部で129ページの薄い一冊の文庫本があります。今日紹介するのはこの本、「鏡の中の物理学」です。1965年にノーベル物理学賞を受賞された朝永振一郎先生が執筆された短編集で、第1刷が1976年に発行されていますので、半世紀近く前に世に出た本ってことになります。3つの短編が含まれており、そのなかの1つ目がこの本のタイトルとなっているお話で、鏡に映った世界と現実の世界という私たちの日常にある場面を通して、相対論がどのような理論であるかが説かれています。後半の2つの話では、量子論に関する考え方について、たいへんユニークで独特な書き方で説明されています。

 この本を買ったのは多分大学院在学中だったかと思います。どんな思いで買ったかはよく覚えていませんが、処分せずにずっと書棚の片隅にありました。改めて拝読すると、「而して」など、ちょっと最近は拝見しない表現も混じってはいますが、平易な文章のなかにユーモアがあってとても読みやすく、知的好奇心をくすぐられる名著であることを再認識しました。ただ、一読して相対論や量子論のアウトラインがわかるのかと言われると、その辺はなかなか初学者にはきっと難解で、先生が説きたいことを本当に理解するには、これらの学問をしっかり深く学ぶことが必要かなとも思いました。

 この本のもう1つの(隠れ)テーマとして、「どうして科学をやろうとするのか」が述べられています。ともすれば目先の成果や社会的なインパクトに流されがちな(自然科学)研究の本当の在り方について、先生の考え方が強いメッセージとして書かれているように感じました。駆け出しの研究者であった若かりし私がこの小さな本をいつまで手放さなかったのは、現在の私が研究することの意味を見誤らないようにするため、「初心忘れるべからず」と思ってのことであったのかもしれません。

笹倉香奈(法学部)『赤ちゃんの虐待えん罪 : SBS(揺さぶられっ子症候群)とAHT(虐待による頭部外傷)を検証する! 』

 

<教員自著紹介>

赤ちゃんを揺さぶって虐待したと疑われ、養育者が子どもと引き離され、ときには有罪判決を言い渡されるという「虐待えん罪」。この背景にある乳幼児揺さぶられ症候群(shaken baby syndrome, SBS)や虐待による乳幼児頭部外傷(abusive head trauma, AHT)を検証しえん罪救済を進めるプロジェクトを立ち上げて7年目になりました。

この間、SBS/AHT事件では10件の無罪判決が確定しました。日本の有罪率が99.8%であることを考えれば、驚くべき数字です。本書は実際のSBS/AHTえん罪被害者の声を中心に置きつつ、この問題を一般市民にわかりやすく伝えることを目的としたものです。

児童虐待の防止は重要な課題ですが、その背後にあるえん罪の問題も忘れてはなりません。是非お読みください。

赤ちゃんの虐待えん罪 : SBS(揺さぶられっ子症候群)とAHT(虐待による頭部外傷)を検証する!
■  秋田真志編著 ; 古川原明子編著 ; 笹倉香奈編著, 東京 : 現代人文社 , 2023.3

■ 請求記号 498.9//2020
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  笹倉香奈(法学部)

語学学習室で展示実施中!

 語学学習室には朗読CDの付いている本があるのを知っていますか?
「知らなかった」「知っているけど本だけ借りている」ではもったいない!

 英語はどのように発音され、どう聞こえるのか。
 CDで実際に聴いてみて、リーディング力だけでなくリスニング力も一緒に鍛えてみませんか?

 今回の展示は皆さんになじみのある物語を選んでみました。
 この機会にぜひ、CDも借りてみてください!

望月徹(経営学部)『多様な組織から見る経営管理論』

 

<教員自著紹介>

本書は、水族館、神社仏閣、エンタメ系企業など多様な組織の経営管理のあり方を問うもので、著者は第12章「NPO・NGOのガバナンス」を執筆した。

ケーススタディには、住吉に拠点を置くスポーツNPOアスロンを取り上げ、コラムには、賀川豊彦・平生釟三郎と神戸生協の話を載せた。

尼崎で行われたアスロンの子供食堂を兼ねた「朝活体操」にはゼミ生も参加し、そのスナップショットは本文に掲載されている。

多様な組織から見る経営管理論
■  吉村典久編著 = Business Administration through the Lens of Diverse Organizations, 東京 : 千倉書房 , 2023.5

■ 請求記号 336//2654
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  望月徹(経営学部)

尾原宏之(法学部)『公正の遍歴 : 近代日本の地域と国家』

 

<教員自著紹介>

本書は『公正から問う近代日本史』の続編です。人間は誰しも最低限「公正」に扱われることを求めます。

明治以降の日本においても、全国各地で参政権、公務員試験、都市開発、社会保障などをめぐって数多くの「公正」の要求があり、模索が重ねられてきました。その歴史を知ることは現代に生きる我々が直面している問題を考えるために必須の作業になっています。

公正の遍歴 : 近代日本の地域と国家
■  佐藤健太郎, 荻山正浩編著 ; 中西啓太 [ほか執筆], 吉田書店 , 2022.8

■ 請求記号 210.6//2266
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  尾原宏之(法学部)

甲南大学全学共通教育センター「正志く強く朗らかに : 躍動する甲南人の軌跡2023」

甲南大学全学共通教育センター「正志く強く朗らかに : 躍動する甲南人の軌跡2023
同文舘出版 , 2023.3

2019年3月の第一弾、2021年3月の第二弾に続く刊行です。

創立100年を超える伝統校、甲南大学。これまでに多くの卒業生を輩出してきました。彼らが学生だった時代、甲南大学にはどんな学びがあり、どんな人物になったのでしょうか。

本書では、約50名の卒業生にご協力いただき、大学時代を振り返っていただきながら、現在のお仕事や社会でのご活躍、そして、それぞれの人生について語っていただいています。

甲南大学を巣立った卒業生が、社会の幅広い分野でご活躍されている様子を垣間見ることができ、頼もしく、誇らしく感じました。現役学生のみならず、若手社会人の皆様にとっても勇気づけられる1冊です。

時代に合わせて変わったこともありますが、甲南人としての変わらない思いを引き継いでいくために、本書は1年次生対象の導入共通科目用の参考書として指定され、4年間の学びの道標として活用されているとのこと。

甲南大学の卒業生の活躍は、以下のサイトからもご覧いただけます。こちらも是非、ご高覧ください。
https://www.konan-u.ac.jp/closeup-alumni/