藤本建夫(名誉教授)『実業家平生釟三郎の社会奉仕の理念 』

実業家平生釟三郎の社会奉仕の理念 : 画一主義教育の弊害と産業・貿易の保護干渉からの解放
■ 藤本建夫著, 甲南大学出版会, 2024.3
■ ISBN 978-4-9912975-2-6
■ 請求記号  289.1//3531
■ 配架場所 図書館   2F 甲南サロン
■ 著者所属  藤本建夫(名誉教授・元経済学部教授)

大正から終戦までの日本社会の実像を平生日記で読み解く――

<序章より抜粋>
私はこの書物を通してまさにこの時代を生き抜いた実業家平生釟三郎という一人の人物の生き様を多方面に描くことによって、彼が身を以て生きた時代そのものを明らかにして見たい。その作業を行う上で格好の極めて重要な資料を彼は後世の我々に残している。それは彼が日々の出来事を克明に書き記した日記である。彼は大正2(1913)年10月7日に筆を起こし、昭和20(1945)年10月12日に筆を擱くまで、この激動の32年間を彼が実際に体験し、見たまま、感じたままをこの日記に記していて、今我々はこれを通して、通常の歴史書や偏った思想書とは違った興味深い生き生きとした事実や人物に接することができる。その意味でこの日記は日本の近現代史にとって第一級の史料であると言っても過言ではないだろう。

第1部 消滅する武士道精神と商道徳の退廃
第1章 第一次大戦前夜の軍部の疑獄事件
第2章 第一次世界大戦と成金の叢生
第3章 商道徳の退廃と誤った金融政策が大正9年の大恐慌を誘発する
第4章 関東大震災と火災保険問題
第5章 昭和金融恐慌 ―万策尽きた神戸の雄傑金子直吉と松方幸次郎―

第2部 平生釟三郎、日本社会をliberateする
第1章 学校教育を官僚的干渉よりliberateする
第2章 労働・社会運動と購買組合
第3章 療病を営利的医術よりliberateする
第4章 産業・貿易をliberateする
第5章 川崎造船所をliberateし、労使協調体制を実現する
第6章 訪伯経済使節団の成功と日伯貿易の増大
第7章 文部大臣として国字を漢字の禍害からliberateする

第3部 戦争責任を皇室に転嫁する軍部とその軍部に翻弄される平生釟三郎
第1章 満州国の建設と国際社会からの孤立
第2章 北支方面軍司令官最高経済顧問平生釟三郎
第3章 日本製鉄株式会社のフューラー(Fȕhrer)平生釟三郎
第4章 「日満一如の精神」とは平生にとって何だったのか
第5章 日米軍事力格差の現実と太平洋戦争への道
終章 敗戦と平生の「日記じまい」

★本書は、神戸新聞総合出版センターから発売されています。

[藤棚ONLINE]図書館長・杉本喜美子先生(マネジメント創造学部)コラム「想いを繋ぐ 言葉を紡ぐ」

図書館報『藤棚ONLINE』
図書館長・杉本喜美子先生(マネジメント創造学部) より

 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます!
 そして在校生のみなさん、図書館の窓が、桜の咲き誇る春の美しい一瞬を切り取れること、すでにご存じでしょうか。

 甲南大学の特徴の一つが、彩り教育です。理解力や創造力を身につけ、社会で羽ばたくためには、専門分野以外の学びも欠かせない。一人ひとりが興味を持つ内容に、できる限り応えたい。こうした想いが形になったもので、「知のインフラ」と呼ばれる図書館こそ、こうした学びの軸となれたらと思っています。
 彩り教育の一つとして展開されるKONAN ライブラリ サーティフィケイトで、昨年度1級を取得された2023年度卒業生(なんと100冊の本を読破!)に、「2024年度入学生へ、もし一冊だけ本を紹介するなら、どの本を薦めますか?」と質問しました。その答えが、最初に紹介する辻村深月さんの『ツナグ』『ツナグ-想い人の心得-』です。ベストセラーであるこの2冊を、昨日読み返し、数ある本からなぜ彼女がこれを選んだのか、私なりの答えを、今回のタイトルで表現してみました。

      辻村深月著, 新潮社 , 2010                辻村深月著, 新潮社 , 2019

 自分の人生に責任を取る、ことは、当たり前ながら難しいことです。どう生きていくべきか、何に適性があるのか、どんな才能を持っているか、これを頑張ってどうなるのか。大学生になると、悩むことは膨大にあります。それぞれの悩みに応じて、その答えを知っている(であろう)先達に答えを聞いてみたい。両親、兄姉、先生、先輩、友達。こうした相談に適う相手は、正直な自分の心を安心して委ねられる人物なのではないでしょうか。
 常日頃から温かい気持ちで自分を見守り、激励してくれる人物。こうしたかけがえのない相手が「もはや生きていない」とき、どう相談できるのか。詳しくは本を手に取っていただけたらと思います。現実を生きるみなさんには、身近にいる「生きている」相手から学び、そしてもし大切な相手が「もはや生きてはいない」のなら、その存在を心に感じながら、その相手が望み、時には驚くような成長を遂げて生きていってほしいと願っています。
 図書館にある膨大な書籍もまた、実態はなくともあなた自身を支えています。答えの見つからない問いに悩んだときは、ぜひ一度図書館にきてくださいね。

 さて、自分の学びのなかで関心のある本を紹介します。

『技術革新と不平等の1000年史』
ダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソン著 鬼澤忍、塩原通緒 訳

 開発経済学の視点で興味深い本です。最近のデジタル技術・AIの発展が、大多数の人々に豊かさをもたらすのか、それとも、所得格差を広げるのか。これを改めて問いかけています。人間の活動を補完し、人の役に立つ仕事を新たに生みだすために、こうした技術を開発し、活用することはできないだろうか。未来は、我々の選択次第なのだから、その処方箋たるべく、望ましい選択肢とは何なのかを考えさせてくれます。どのような世の中であっても、希望は人の選択がもたらすことを、経済学の視点からも明らかにしてくれている、素晴らしい本だと思います。


【図書館事務室より】
 藤棚ONLINE2024年度第1号は、図書館長のマネジメント創造学部教授・杉本喜美子先生より、コラムとおすすめ本をご紹介いただきました。テーマは「繋ぐ、紡ぐ」です。
 「紡ぐ」と言えば、甲南大学図書館で実施しているKONANライブラリサーティフィケイトで使用する読書記録ノートの表紙が新しく素晴らしいデザインになります。マネジメント創造学部のご卒業生であり書家でもある方が、デザインしてくださいました。

 「Journal」は旅日記という意味があります。たくさんの読書を通じて、様々な旅の記録を紡いでみてください。読書記録ノートはエントリー時に1部お渡ししていますので、ぜひ手に取ってみてください。
 また、図書館では、図書館HPだけでなくX(旧Twitter)やこの図書館ブログでも情報発信していますので、定期的にチェックしてみてくださいね。学生の皆さんのご利用をお待ちしています。

エントランス展示「うるう年~星の運行と人の営み~」

 新しい年度に合わせて、図書館エントランス展示を更新しました。題して「うるう年~星の運行と人の営み~」です。
 2024年はうるう年。うるう年にまつわる素朴な疑問を集めました。

 みなさんは「うるう」を漢字で書けますか?そもそも「うるう」って何でしょうか?31日あるの月もあるのに、なぜ2月の日数が少ないのでしょう?

 調べてみると、 天文学、 言語学、歴史学、法学、文学、物理学などなど、いろんな分野の知恵と工夫が、時代を超えて重ねられていました。展示では、図書館の資料を使って調べるコツと合わせてご紹介しています。

 ちょっとしたことでも、興味を持ったら、 ぜひ 図書館で調べてみてください! 深くて楽しい世界が広がりますよ。

[藤棚ONLINE]全学共通教育センター・山本貴揚先生コラム

図書館報『藤棚ONLINE』
全学共通教育センター・山本貴揚先生コラム

 僕は、法律学という、現実社会を対象とした学問をやっていますが、10年ほど前のことだったでしょうか、懇意にしている洋品店で立ち話をしていた相手(他の客)から、「あなたはあの世とこの世の間にいる人です」と言われたことがあります。もちろんその時は、「何を言っているんだ、この人」と思いましたが、その言葉の影響でしょうか、今となっては、文字どおり“夢か現か”という感覚がつねに傍にある、という感じで生きています。

 昨年、知人から、僕たちの住むこの三次元世界は、宇宙の彼方の二次元平面に元データがあって、そのデータが投影されたホログラムに過ぎない、というような世界(宇宙)の捉え方があることを教わりました(理系の方にはずいぶん不正確な理解だとお叱りを受けそうですが、そこは文系人間がそんな感じで理解に努めている、ということで、どうぞお許しください。よい入門書をご紹介いただけますと幸いです)。イーロン・マスクも、この世は仮想現実と考えてほぼ間違いない、という趣旨のことを言っていますが、いずれの考え方も、この世界は僕たちが考えているような実体としてそこに存在するわけではない、と捉える点では同じような考え方なのだと思います。こういった捉え方を否定する主張も存在するようですが、“夢か現か”の僕にはわりと自然に受け入れることのできる観念で、こういう話を聞くにつけ、僕の感覚は“現”よりも“夢”に近づいてしまうのです(ちょっと他人の話に影響され過ぎでしょうか・・・苦笑)。

 さて、こういった世界観では、人の意識も作られている、ということまで言われているようなのですが、これにはさすがの僕も抗いたい気持ちがあります。自分はいるのかいないのか、という考えがよぎって怖くなった時には、そっと法律の本を開いて、“現実”への引き戻しをお願いする次第です。

 (日経サイエンス 2006年2月号より)

※図書館よりあわせて読みたい記事をご紹介!
時間と空間の起源」(Nature ダイジェスト Vol.10 No.11 ※オープンアクセス)
「重力は幻なのか? ホログラフィック理論が語る宇宙」(日経サイエンス, 2006/2号, P.20〜28)
「ホログラフィック宇宙 時空の本質に迫った四半世紀」(日経サイエンス, 2023/11号, P.70〜74)

※『Natureダイジェスト』や『日経サイエンス』は、学内ネットワークに接続した端末より閲覧できます。学外から利用する場合はVPN接続をご利用ください。学外アクセスの詳細はこちら。
※甲南大学図書館HPでは電子図書館を公開しています。特に雑誌コーナーは学生向けの電子ジャーナルをすぐに閲覧できるようにピックアップしていますので、ぜひ楽しんで読んでみてください!

洋書の貴重書整理作業を行いました

2月15日と16日、3月15日に、ライブラリサーティフィケイト参加者の学生4名と貴重書の整理作業を行いました。

 

図書館の4階には貴重書が置かれているのをご存知ですか?
その名の通り非常に価値の高い図書のため、鍵付きの棚に置かれており、普段は見ることが出来ないようになっています。これを図書館用語では『閉架』と言います。みなさんが普段図書館で借りるようないつでも閲覧できる状態にあるものは『開架』と言います。

甲南大学図書館には非常にたくさんの貴重書がありますが、後世に残していくために保存状態には気をつけなければいけませんし、置く場所も限られていますので整理作業をしていく必要があるのです。

 

そこで今年は洋書の貴重書整理をライブラリサーティフィケイトの参加者のみなさんと一緒に作業することになりました!もちろんスタッフも総出で作業しました!

 

貴重書は非常に古いため、どうしても劣化します。洋書は本の装丁が非常にきれいであることが魅力なのですが、革は劣化してしまうと手が茶色くなってしまったりします。
また、本にホコリが溜まっていたり、貴重書は普段触らないので本棚にもホコリが・・・
貴重書の整理作業をするときは汚れてもいい服装で、くしゃみが止まらなくなるのでマスクは必須です。個人的には手袋がつけたほうが手も汚れないし、劣化して崩れてしまう図書を破壊せずに済むような気がしました。

洋書の貴重書は、写真から装丁が豪華なのが伝わりますでしょうか。参加者のみなさんからも感嘆されている様子が伝わってきました。ちなみに私たちは『ハリー・ポッターに出てきそうな本』と言ったりしています。

 

貴重書はこんな感じで並んでいます。

 

本が崩れないように、慎重に持ち運びます。本棚は都度拭いていきます。

 

 

崩れてしまった本は薄葉紙(うすようし)で巻いて保管します。少し触るだけで本の背がポロポロと剥がれてしまうのです。
歴史の積み重ねを感じることができますね。

 

学生のみなさんにもお手伝いいただいた甲斐もあり、無事に整理できました・・・!

 

とても綺麗に並べることができました。圧がすごいです。

 

 

しかしまだまだ貴重書の整理は終わりません。

 

お引越しをしてきた貴重書があるので、それも少しずつ整理しています。
貴重書には『〇〇文庫』として名前を付け、その分類ごとに整理して保管をしています。
新しく貴重書をご寄贈いただいたりすると、新しい分類が増えていきます。

今回は新しく増えた貴重書の整理をするために、細かい作業をお願いしました。

 

中性紙に分類名のはんこを押していきます。

 

貴重書に中性紙を挟んでいるものがあり、その中性紙には請求記号などの図書の情報が書かれています。挟む本を間違えたらとんでもないことになってしまいます。
また、本には絶対インクが付かないようにしなければいけませんし、いかに丁寧に作業するかの根気強さと集中力が必要です。

とても丁寧に作業していただいたおかげで、随分作業が進みました!

 

参加者のみなさんからは、普段見れないものを見れて楽しかった、貴重な機会に参加できてよかったです、とのうれしい感想をいただきました。みなさん熱心に作業してくれて本当に助かりました・・・!

 

ご参加いただきありがとうございました✨✨

2024年度ブックカバ―デザイン発表!

 2024年度に図書館で提供するブックカバーが決定しました!
 ブックカバーの製作者は、経済学部2年次生のペンネーム“だい”さんです!
 だいさんは、自身のデザインがブックカバーに採用されたら嬉しいという思いで、2年連続でブックカバーデザインに応募されました。
 作品では、図書館前のモニュメントや1・5号館の校舎など、特に大学内の施設をこだわって描かれたとのことで、甲南大学公式キャラクターの“なんぼーくん”も一緒にデザインされています。
 「このブックカバーを使って読書と“なんぼーくん”を好きになろう!図書館エントランスの図書館カフェではコーヒーを飲みながら本を読めますよ!」とのメッセージをいただきました。

印刷用PDFデータダウンロードはこちら

 こちらのブックカバーは4月より、図書館で提供いたします。
 甲南大学図書館オリジナルのブックカバーで、読書を楽しみましょう!