湊かなえ著 『白ゆき姫殺人事件』

 

 

文学部 2年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 白ゆき姫殺人事件
著者 : 湊かなえ著
出版社:集英社
出版年:2014年

私が紹介する本は、湊かなえさんの『白ゆき姫殺人事件』というミステリー小説です。化粧品会社で働く美人社員、三木典子が黒こげの遺体で発見された次の日から物語が始まります。

赤星という記者が、容疑者として浮上した三木典子の同僚、城野美姫という女性の周辺人物に取材を始めます。その周辺人物の証言によって話が進んでいきます。その証言は不確かで、城野美姫が犯人と決まったわけではないのに話を盛ったり、噂話を広げて話したりと、城野美姫という一人の女性の人物像を勝手に作り上げる自覚のない悪意で溢れています。ネット上でも、匿名により他人が好き勝手に話し、様々な憶測が飛び交い、人の自覚のない悪意がどれほど怖いのかを感じることができます。

また、この小説の面白いところは、最後まで犯人の予想ができないところです。周辺人物による証言の中の噂話に、読んでいて振り回されているなと感じました。城野美姫が犯人で違いないと思う時もあれば、殺人などしなさそうだと感じる旧友の証言もあり、犯人は城野美姫なのか、他の人なのか、最後まで予想できないところが面白かったです。

『白ゆき姫殺人事件』という作品は、事件自体に焦点が当てられるというよりかは、この事件を取り巻く様々な噂話、人々の憶測、自覚のない悪意に焦点が当てられています。自覚のない悪意は、現実のネット社会にもはびこっていると言っても過言ではなく、噂話が大きくなって、歯止めが利かなくなっていく怖さには非常にリアリティーがあり、人間の怖さが感じられる作品です。