湊かなえ著 『白ゆき姫殺人事件』

 

 

知能情報学部 4年生 Oさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 白ゆき姫殺人事件
著者 : 湊かなえ著
出版社:集英社
出版年:2012年

本書は2014年に映画化もされた、『告白』『夜行観覧車』などの代表作をもつ湊かなえによるミステリー小説である。著者は『告白』のヒットとともに読んだ後に嫌な気分になるミステリー、通称イヤミスというジャンルを広めた。もちろん本書もイヤミスとなっている。

ある日、化粧品会社に勤める美人OL社員が殺害されるという事件が起きる。その事件の手がかりをつかんだフリー記者、赤星が独自に調査を始めるところから物語は始まる。本書は5章に分かれており、第1章から第4章までは赤星目線の取材にまつわる物語が展開され、第5章では、事件の容疑者である城野美姫目線の話となる。

本書では真犯人が誰かということではなく、人間の醜さやSNSの怖さに注目してほしい。赤星の取材内容には多くの登場人物が出てくるが、全員が微妙に違う証言をする。それは曖昧な記憶であったり、自分に都合の良いように塗り替えられた記憶を語っているからだ。時には自分を守るために意図的に嘘の証言をする者もいる。赤星も記事を面白くするため、無実の城野美姫を犯人だと勘違いさせるような誇張した記事を掲載する。SNSではこのミスリードのせいで、城野美姫はますます社会に戻ることが難しくなっていく様子が描かれている。

人生において噂話を他人に話した経験は少なからず誰にでもあるだろう。ただ事実は当事者にしかわからず、その当事者が真実を話してくれる確証もない。誰も本当のことはわからないのである。その中でも噂話が絶えることはない。無責任な発言により苦しめられる人がいるということを理解しなければならない。「白ゆき姫殺人事件」はこのネット社会に生きる現代人の私たちにとって自己を見直せるきっかけとなる一冊となるだろう。