中谷宇吉郎著『雪』

書名: 雪 (岩波新書 赤版8)
著者: 中谷宇吉郎
出版者: 岩波書店  出版年: 1947年(初出1938年)
場所: 3階書庫  請求記号: 081.6/8B/10

先週末は全国的に大雪で、神戸でも雪が積もりました。
楽しんだ人、迷惑した人、色々だったと思います。
空から届く美しいものに感動して手を伸ばし、掌で受けたとたんに溶けてしまうのを惜しんだ人もおられるのではないでしょうか。

中谷博士は、雪の研究者で、昭和11年に世界で初めて水の結晶=人工雪の制作に成功した科学者です。
同時に、代表作である『雪』をはじめ、多くの科学を分かりやすく伝える本を書かれた名随筆家でもあります。

科学的には、「雪」は、水が氷の「結晶」となったものだそうです。
氷は固体であって、結晶ではありません。
また、積もっている雪も、地に着いた時に溶けて再度凍った氷で、結晶ではありません。

空中にある雪や霜といったあの小さなトゲのある、キラキラしたものが、水の結晶です。

つまり、単に水を冷やすだけでは、水は雪にはなってはくれません。
中谷博士は、極寒の北海道で幾種類もの雪のサンプルを観察し、手作りの機材を使って、根気よく実験を繰り返しました。
読んでいるだけで震えそうなほど寒いのですが、とても楽しそうです。

名台詞、「雪は天から送られた手紙である」は、この本の一説です。
みなさんも、雪に記された空の記録を、少し読めるようになってみませんか?
次に雪を掌に乗せた時には、小さな空の声が聞こえるようになっていると思いますよ。

図書館にも所蔵していますが、青空文庫でも読むことができます。
http://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/52468_49669.html