十文字青著『灰と幻想のグリムガル level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ』

 経済学部 3年生 匿名希望さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名: 灰と幻想のグリムガル level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ
著者: 十文字青
出版社:オーバーラップ
出版年:2013年

主人公のハルヒロは、目が覚めると見知らぬ世界にいた。辺りは真っ暗で何も見えず、ここはどこなのか、なぜこんなところにいるのか分からず、記憶もない状況で物語はスタートします。ハルヒロと同じ場所に同じタイミングで11名の少年少女がいて、彼らもまた記憶喪失であり、かろうじて覚えているのは、自分の名前のみ。初対面の彼らは謎の案内人にこの世界は「グリムガル」であると告げられ、義勇兵団として、この国で戦うことを命じられる。「グリムガル」の世界のことは分からないが、とりあえず生きていくために、「グリムガル」のシステムに従うしかありません。義勇兵として戦い、世界に巣くうモンスターを討伐し、兵団の役に立つことを示されます。ただ、戦闘経験のない主人公たちはすぐにモンスターを倒せるわけでもなく、弱い装備とスキルをもとに、四苦八苦する毎日を送るが、少しずつ前に進もうとします。この物語の最大の見どころは、「生きることは、簡単じゃない」ということです。現実世界で生きてきたはずなのに、いきなりファンタジーの世界が現実となり、右も左もわからないけど生きるために何かしなきゃならない。食事にも宿屋に泊まるにもお金が必要で、それらのお金はモンスターを殺さないと手に入らない。生きるために戦って、時にはモンスターから返り討ちにあって死ぬかもしれない。けれど、死を覚悟して戦わなければ、毎日を生きることすら敵わない。生きるために、理不尽に立ち向かっていくことが本書の特徴であると思います。

この作品では普段体験することのできない心情を味わうことのできるとても素晴らしいものだと思います。王道のファンタジー作品としてはもちろん、主人公たちの心理描写やモンスター側の生きることへの執念も描かれていて、他のファンタジー作品では味わえない作品だと私は思います。この作品を見たら一度手に取ってみるのはいかがでしょうか。