須佐 元先生(理工学部)「本に親しむ」

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これからの新生活に心踊らせていることと思います。皆さんはこれまでも沢山の本を読んで来られたと思いますが、これからの四年間は、たっぷりと読書の時間が取れる人生の中でとても貴重な時間です。読書にはルールはありません。読書はまずは楽しみであり、同時に知識を得るための一つの方法です。読みたい本をできるだけ沢山読んでください。そこで得た知識は糧となり、また身についた読書習慣は今後の長い人生に、人工的ではない美しい色合いと深みを与えてくれるはずです。みなさんの選書の助けとなるかどうかわかりませんが、私が最近気に入った本を紹介しておきます。

『ホモ・デウス-テクノロジーとサピエンスの未来』
 河出書房新社 ユヴァル・ノア・ハラリ著 柴田裕之訳

 本書は「サピエンス全史」で有名な歴史学者である著者が、人類の歴史の歩みを振り返りながら、今後の人類・社会の進化・変質をかなり大胆に予測したものです。上下巻あって少し長いのでやや大変ですが、硬い内容のわりには比較的読みやすく、大学生になってチャレンジするには良い本です。読み進めていくと、まず人類にとっての生命・科学・宗教といった大きなテーマの意味が語られ、次にAI などのテクノロジーを手にした、未来の人類のありようが大胆に予測されます。刀で切ったような議論が行われており、その結果、ひやりとするような断定があちこちにあります。良書と考えますが、かなりラディカルな内容でもあるので、本書の内容を無批判に受け入れるのではなく、ここを思考の起点として将来の人類のあり方について各々の考えを深めてもらえればと思います。本書の最後には読者に3 つの問いが残されており、これを考え続けてほしいと著者も述べておられます。ぜひ一度手に取っていただきたいと良書です。

 以上推薦しましたが、とにかくそれぞれがそれぞれの興味の赴くままに本を読んで下さい。

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.36 2019) より