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[藤棚ONLINE]マネジメント創造学部・榎木美樹先生推薦『世界は経営でできている』ほか

図書館報『藤棚ONLINE』
マネジメント創造学部・榎木美樹先生より 

 気づけばもう12月。今年も残すところあと少しである。2024年度時事トピックの経済ニュースとしては以下が挙がった(NHK「大学生とつくる就活応援ニュースゼミ」https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/jiji/jiji153/)。

 「20年ぶりの新紙幣発行」、「30年ぶりの郵便料金値上げ」、「34年ぶりの円安水準」、「日経平均株価:バブル期の史上最高値を更新」、「株価:過去最大の値下がりーブラックマンデー越え」、「世界GDPランキングで日本はドイツに抜かれて第4位」というように長年の低成長やデフレ影響を受けた「数十年ぶりの」「史上最高」「過去最大の」といった文言が目につく。

 現代の私たちは、通貨の価値が国際的に極端に変動する社会を生きている。というか、資本主義が台頭し、不換紙幣制度が導入され、国際化やグローバル化によってボーダレスにヒトやモノ、情報の移動がデフォルト化したこの社会を生きざるを得ない。だから、「銀行に預けるのではなく、お金を増やすには、目的や状況に応じて、貯金や投資、NISAなどの制度を活用することが重要だ」言説が闊歩し、小学校では2020年から金融教育が実施されている。成人年齢の引き下げや消費者トラブルへの対処などいずれも個人の知識・問題・責任に帰せられるかのような状況が背景にある。紙束が価値に変換され、手段であるはずの金銭に過度に振り回されるようになっているように感じられる。「コスパ」「タイパ」「高額報酬」の文言に心が動く私たちは、すでに資本主義と不換紙幣制度、そして自己責任論にからめとられていると言えるかもしれない。

 このような時代だからこそ、社会的生き物としての人間関係、持続可能な地域社会と人間の営み、そのような中で実践される本来の経営を、本質的なところから捉え直すことが重要だろう。そのための気づきのインスピレーションを得られる書籍として以下の3冊を挙げたい。3冊に共通するのは、「語られないものを語るには言葉が必要だ」「人間は社会的な動物で、他者と生きる存在だ」「人間には理性=知恵があり、現在だけでなく過去と未来の概念も持つ」というメッセージである。これら3冊が起こすシナジーは、手触りの温かい資本主義を生きることは可能だと気づくことである。気づくためにはモノやコトとの出会いが必要で、出会うために私たちは「勉強」しなくてはならない。その第1歩は読書である、と私は強く思う。

『世界は経営でできている』(岩尾俊兵、講談社現代新書、2024年)
『葬儀会社が農業を始めたら、サステナブルな新しいビジネスモデルができた』(戸波亮、幻冬舎、2023年)
『世界は贈与でできている:資本主義の「すきま」を埋める倫理学 』(近内悠太、NewsPicksパブリッシング、2020年)

100冊多読チャレンジ 達成者インタビュー

2024年10月22日に『多読チャレンジ』100冊を達成されました!

島村 大地(しまむら だいち)さん フロンティアサイエンス学部 生命化学科 3年次生

 多読は楽しみながら、たくさんの英語に触れていく学習法ですが、長く続けていくと、しんどくなりそうな時もあるようです。そんな時は、簡単なレベルの本に戻って、スラスラ読める楽しさを取り戻していると教えてくれました!

 以下は、ご本人のアンケートによるものです。


Q.『多読チャレンジ』達成のために意識していたことはありますか。

A.読める本をまずは読んでいこうと心がけていた。
 もっと読みたい日はレベルを上げて読んでいった。

Q.『多読チャレンジ』を続けていて実感した効果はありますか?

A.新しい単語が出やすい本を読んでいたことから、知らないことを知れるということが多く、
 終盤では知っている単語がほとんどになっていたこと。

Q.これまで読んだ中で、新たにお気に入りの本がありましたら教えてください。

A.「Cheese –Rolling Races」
 大会自体は聞いたことがあったが、人が転がるようなシーンがとても面白いと感じた。

Q.現在、チャレンジ中の「多読チャレンジャー」に向けてアドバイスがありましたらお願いします。

A.レベル0の簡単な本であれば、最初は本を読むことに抵抗があるところを取り払うことができ
るかもしれないため、読める本から読んでいく方が良い。


 甲南大学図書館では、多読チャレンジャーを随時募集中です。
 英語多読学習に興味のある方は図書館1階カウンターでエントリーしてみてください!
 25冊以上達成すればKONANライブラリサーティフィケイトの2級以上の要件にも適用されます!

☆2024年度から、継続しやすい新ルールになりました!
 いつからでも参加できますので、ぜひチャレンジしてみてください!

75冊多読チャレンジ 達成者インタビュー

2024年10月15日に『多読チャレンジ』75冊を達成されました!

伊場田 扶弥(いばた ふみ)さん 文学部 歴史文化学科 3年次生

 多読のルールに沿って、ご自身で工夫しながら、楽しみながら続けていることを、私たちスタッフも嬉しく思っています!
 今回読んだ本の中から、他の人にも読んで欲しいオススメの本を紹介してもらいました!

 以下は、ご本人のアンケートによるものです。


Q.今回読んだ本のなかで、印象に残った本(勉強になった・初めて知った・怖ったetc)は、ありますか?

A.レベル3の洋販ラダーシリーズ『Emma and the Boy Next Door』(エマと隣の少年)が、読んでいて非常にわくわくして面白かったです。どんどんと話のスケールが大きくなっていき、エマと一緒の気持ちになって冒険することが出来ました。最後の展開も、とても幸せな気持ちになります。冒険好きな方にはぜひ読んで欲しいです。

Q.75冊を達成されたご感想、語学学習室へのご要望などありましたらご自由にお書きください。

A.長いようで意外ともう75冊を迎えました。今はレベル3を読めているので、そろそろレベル4にも挑戦したいです。最近映画のハリー・ポッターを観たので、原作も読みたいと思っています。上記でオススメした洋販ラダーシリーズは、行間が空いていて個人的には読みやすかったです。行間が詰まっていると文字量に圧倒されて読みにくいので、本を買う機会がありましたら行間にも注目して欲しいです。年内に100冊を目指します!!


 甲南大学図書館では、多読チャレンジャーを随時募集中です。
 英語多読学習に興味のある方は図書館1階カウンターでエントリーしてみてください!
 25冊以上達成すればKONANライブラリサーティフィケイトの2級以上の要件にも適用されます!

☆2024年度から、継続しやすい新ルールになりました!
 いつからでも参加できますので、ぜひチャレンジしてみてください!

[藤棚ONLINE]知能情報学部・木原眞紀先生推薦『博士の愛した数式』

図書館報『藤棚ONLINE』
知能情報学部・木原眞紀先生より 

日々,理系離れ・特に数学離れが多いことをひしと感じる今日この頃.
1人でも多く数学に興味を持ってくれる方が増えてくれたら良いなと思ったので,この本を紹介するために筆をとりました.
私,木原の昔話や,研究者とは?という内容にも少し触れるため,長くなりますが,お付き合いいただけたらと思います.

みなさんは自分の記憶がある日を境にきっちり80分間しか持たないとしたら,どのような日々を送るでしょうか.
例えば,友人とお昼に食べたパスタ,家族と交わした会話,そして,自分が学んだこと・考えたことの全てが失われるということです.
この本は,80分しか記憶の持たない「博士」,とその「博士」の家で家政婦として働く「私」そして,「私」の10歳の息子「ルート」が,数学を通して優しく穏やかな時間を過ごす,そんな心温まる物語です.
このブログを執筆するにあたり,久しぶりに読み返してみましたが,やはり何度読んでもあたたかく,優しい気持ちになれる1冊でした.

例えば,中学生や高校生の頃に学んださまざまな数学の定理があると思います.
それらの定理はかつての数学者たちが
「その主張は正しいか」「どんな時でも必ず成り立つのか」「成り立たない例はあるのだろうか」
などのことをたくさん考え,きちんと整備してきた結果,今私たちが「公式」のようにツールとして扱うことができるのです.
これらのことを調べるために,数学者たちは何日も,何週間も,何ヶ月も,時には,何年,何十年という長い時間をかけて取り組むのです.
そのような数学者にとって,すでに数学に関する基礎知識は十分にあったとしても80分しか記憶が持たないということは,考えついたアイディアを取り組んでいるそばから忘れてしまうし,仮にそのメモを残していたとしてもそこに至る過程すらも忘れてしまう,非常に致命的で恐ろしいことです.
しかし,そこでの苦労などが記されているわけではなく,記憶できなかったとしてもなお数学を愛している「博士」と「私」と「ルート」の穏やかで温かな日々だけが描かれているのです.

この本と私の出会いは,中学生の頃付き添いで行った本屋さんで母に購入してもらった日だったかと思います.
この本は,中学生の私を含め多くの数学者でない人に数学の美しさを知らせた作品であるということで,日本数学会にて出版賞を受賞しています.
中学生といえば「数学ってそもそも何の役に立つの?」,「数学の勉強って意味があるのかな?」などの疑問を少なくとも1度は抱えたことがあるのではないでしょうか.
中学生の私も例に漏れずそのうちの1人でしたが,そんな私に「数学とは,そこにあるだけでとても美しく,素敵なものである」と思わせてくれたのがこの1冊でした.

この本は,何度も読み返している作品の1つなのですが,その理由の1つとして「博士」の数学との向き合い方にあります.
「博士」は数学を愛し,数学に対して決して驕らず,謙虚で誠実な方です.
例えば,「数」は,そして「数学」は人間が発明したものではなく,「発見」したものだと「私」に話します.
なぜならば「博士」は
『数学は人間が発明したものではない。人間が生まれるずっと以前から、誰にも気づかれずそこに存在している定理を掘り起こすんだ。神の手帳にだけ記されている真理を、一行ずつ、書き写してゆくようなものだ。その手帳がどこにあって、いつ開かれているのか、誰にもわからない。』
『人間が発明したのなら、誰も苦労はしないし、数学者だって必要ない。数の誕生の過程を目にした者は一人もいない。気が付いた時には、もう既にそこにあったんだ。』
のように考えているからです.
数学を扱う研究者となった今の私(純粋数学が専門ではないので数学者というのは躊躇いますが,応用数学ということで…)にとって,「博士」のこの考え方は,恐れ多くも共感せざるをえません.

他にも,実は研究者をやっていると「その研究は何の役に立つのか」を問われることがとても多いです.
もちろん,世の中の役に立つこと,それは研究の大きな意義です.
しかし,例えば1つの数学の性質を見つけたからといって,それが世の中の役に立つとは限らないことも少なくありません.
たまに「この発見は意味がないかもしれない」と落ち込むこともあります.
そんなとき『実生活の役に立たないからこそ、数学の秩序は美しいのだ。』という「博士」の一言に救われたりします.

さらに「博士」は数学の知識をあまり持っていない高校中退の「私」や10歳の「ルート」に対してもとても真摯に素直に向き合います.
例えば2人が発見したどんなに拙い数学の性質や数学への取り組み方であっても,絶対に否定したり馬鹿にすることはありません.
「博士」にとって,そして「私」と「ルート」にとって,
『博士の幸福は計算の難しさには比例しない。どんなに単純な計算であっても、その正しさを分かち合えることが、私たちの喜びとなる。』
だからこそ,「博士」は2人の主張を丁寧に聞き,どのように考えその結論に至ったかを尊敬し,賞賛します.
そしてこれは主張が正しいときにだけそのようにするわけではなく,何も答えられない・突拍子もない間違いすらも愛を注いでくれるのです.
大学の先生を含め研究者は皆,日々自身の研究について,悩み,ひたすらに真摯に,そして謙虚に研究に向き合って仕事をしていると思います.
学生さんたちの中には,先生は「怖い」「厳しい」「何を考えているのかわからない」と感じている方がもしかしたらいらっしゃるかもしれません.
ですが,安心してください.
その先生もきっと,「博士」が記憶が80分しか持たない病気になったとしてもなお数学を愛しているのと同じように,自身の研究について考えることをやめられない,自身の研究を愛している人々です.
そして,「ルート」や「私」,そして学生の皆さんのように突拍子もない間違いや答えられない,ということを散々経験してきた人々であり,かつ,それに愛を注いでくれる「博士」と同じ研究者なのですから.
疑問に感じること・気になること・困っていること・知りたいことがあったら,「ルート」や「私」のように,素直に話してみるといいかもしれません.

数学に関する難しい知識を持っていなくとも,この1冊を手にしてくださった方をきっと穏やかな気持ちにしてくれる,そして今までやってきた「数学はこんなにも美しいのだ」と教えてくれる,そんな1冊かと思います.
良ければ手に取って読んでみてください.
そして,願くば1人でも多くの方が数学に少しでも興味を持ってくれますように.

小川洋子 著
『博士の愛した数式』新潮社, 2003 2階中山文庫 913/O
文庫版  1F開架小型北 SB913/O

エントランス展示「社史の中の平生釟三郎」

 「社史」という資料をご存知でしょうか。各会社が発行するその会社の「歴史書」で、多くがその創業からの節目の年に「○○社100年史」といったタイトルで発行されています。
 市販されることが少ないので本屋さんでは見かけませんが、 甲南大学図書館にも、特別に収集したりご寄贈いただくなどして、たくさんの会社の社史があります。重厚なものが多く、取り扱いしにくいためにいつも書庫に配置しているので、存在を知っていただこうと展示のテーマとして取り上げることにしました。

 甲南大学図書館にも数百社の社史があるため、 今回は、甲南学園の創立者・平生釟三郎が登場する社史を選びました。平生釟三郎は、教育者であると同時に、さまざまな会社に貢献した財界人・経済人でもあるため、多様な会社の社史に登場しています。そのため、平生釟三郎に絞っても、全てを展示することはできませんでした。

 そこで、平生釟三郎がどれほどの会社や学校・団体に関わっていたのか、「社史」によくある役員の年表を真似て、平生釟三郎が務めた企業・学校・公職の年表を作成してみました。団体が多すぎて、文字がすごく小さくなってしまいましたが、平生釟三郎の人生が3つの時代に分かれていることをビジュアルでご確認いただけます。

 「平生フィロソフィ」の一つである「人生三分論」とは、人生を3つの時期に分ける考え方です。第一期を「自己教育の時代」、第二期を「自己の社会的基礎を確立する時代」、第三期を「社会奉仕」の時代に分け、それぞれの時期をその目標のために費やすことで、より意義のある人生を送る方法です。平生はこの考え方を、旅の途上で偶然読んだエドワード・ボックの本から学びました。
 今回特別に、その「人生三分論」が記された、平生釟三郎旧蔵のエドワード・ボックの “The Americanization of Edward Bok : the autobiography of a Dutch boy fifty years after” も展示しています。おそらく平生釟三郎本人が、感銘を受けた場所に下線を引いたり書き込みをした本です。

 一冊の本との出会いが、人生を変え、世界を変えることがあるのです。皆様にもよい出会いがありますよう、図書館はいつもおそばにあります。

トライやる・ウィーク活動報告

 9/9(月)~9/13(金)の間、神戸市立本山南中学校2年生1名による『トライやる・ウィーク』(職場体験)が本学図書館にて実施されました。

 本の貸出や返却、配架といった目に見える業務だけでなく、普段見ることができない目録や受入、還流や除籍といった図書館のバックヤード作業も体験していただきました。また、自身がオススメする本の展示やポップアップとブックカバーの作成なども行いました。当初は慣れない作業に戸惑っていましたが、とても呑み込みが早く後半はテキパキと作業しており頼もしく感じました。本が到着してから利用者の手に渡るまで、図書館の仕事の全体像を体験する貴重な機会となりました。

 中学生がオススメする本と作成したポップアップ、ブックカバーは1Fカウンター前および語学学習室内(本とポップアップのみ)に展示しています。展示期間は10/12(土)までです。
 ぜひ手に取ってご覧ください。