[藤棚ONLINE] 知能情報学部・梅谷智弘先生推薦本『今日、僕の家にロボットが来た。:未来に安心をもたらすロボット幸学との出会い』

図書館報『藤棚ONLINE』
梅谷智弘 先生(知能情報学部) 推薦

 ロボットに関する研究を行っていると「ロボットとともに暮らす未来」について考えることがあり、私は実際に大学の公開講座で話したことがあります。本学の図書館にも、エントランスには受付ロボットがいて、リファレンスカウンターには図書館職員を支援するためのアンドロイド・ロボットが働いています。一方、ロボットが本当に社会に溶け込むためには、ロボットのことのみを考えればよい、というわけにはいきません。ロボットとともにいる「人」や、人とロボットとのかかわり、いわば、「ロボット付き合い」についても考える必要があります。
 そこで、本書「今日、僕の家にロボットが来た。:未来に安心をもたらすロボット幸学との出会い」を紹介します。この本は、日本ロボット学会の安心ロボティクス研究専門委員会(現:ロボット考学研究専門委員会)での議論での成果をもとに、未来に安心をもたらすための人とロボットのあり方について、まとめられています。未来の家庭にロボットがやってきたときの家族とロボットのかかわり、出会いからのロボット付き合いを通した一連の物語をとおして、人とロボットにかかわる最先端の研究とその課題を、きわめてやさしい言葉で、かつ、一貫したスタイルで丁寧に解説されています。その中で、現状のロボットアプリケーション研究の課題、安心をもたらすロボットに関する研究への動機付け、さらには、ロボット社会の将来像についてまとめられています。
 ここで、ロボットに対する安心感、ロボットとの付き合い方、に関して、工学(技術)的な側面だけでなく、心理学、哲学、など、人にかかわる様々な研究分野の視点からのロボットとの付き合いに関する研究が1冊にまとめられています。ここまで一貫して、多面的にまとめられた「ロボット付き合い」の本は類を見ないと考えます。よく、ロボットを研究する動機として、「人を知るため」と語られます(私は授業でそのように説明します)が、ロボット研究を通して人を知ることの重要性を本書によって改めて認識しました。本書は、人-ロボット研究の入口となるとともに、ロボット付き合いの未来を考え、ロボット社会をよりよく生きるための土台になる良書だと考えます。
 ロボット学、というと、理系っぽく思われがちですが、実は幅広い学問であり、人にかかわるロボット、となると人文科学、社会科学も含めた様々な人による幅広い議論が必要になります。未来のロボット社会に興味がある人はもちろんのこと、特に、技術のことはちょっと……、という学生にこそ、本書を取って、みなさん個々人のロボット付き合い、について考えてほしいです。