高永才先生(マネジメント創造学部)「『すぐれた意思決定』印南一路著」

☆新入生向けの図書案内

著者: 印南一路
タイトル: すぐれた意思決定 : 判断と選択の心理学
出版者: 中央公論社
出版年: 1997
配置場所: 図書館 1階特設
請求記号: 336.1/I54

 人生は意思決定の連続である。昼食の選択から大学受験に至るまで人は様々な意思決定を行う。「意思決定をしていない日は一日たりともない」と言っても過言ではない。そうであるにも関らず、意思決定プロセスとその質に対し分析を行う人はまれである。なぜなら、意思決定がどのようなプロセスを経て行われているか、さらにそれをどう分析すればよいか、それがどういう意味を持つのかがそもそも分からないためである。『すぐれた意思決定』印南一路(中央公論社)はこうした疑問に対し、ある種の答えを提供している。
 ただ、「答え」といっても意思決定において「これが正解である」という解を提示しているわけではない。この書籍は、意思決定プロセスとその分析のあり方、さらには、そこで人々が陥りがちな罠を示すことで、意思決定プロセスで直面する課題とその解決方法に対し、事前の推測や探索を可能にする。
 『すぐれた意思決定』は第一部で「意思決定とは何か」、「すぐれた意思決定とは何か」を述べると同時に、我々が一般的に世界を見る視点とその中で行っている情報処理のプロセスを示している。第二部では、人々が情報処理のプロセスにおいて犯しやすい課題に触れ、我々が限られた合理性の中で意思決定を行っている事を明らかにしている。第三部では、限られた合理性から脱出し高品質な意思決定を行うためには、規範的な意思決定論の規範性と記述的な意思決定論の実証的な根拠を同時に用いた診断的意思決定が重要であることを示している。第二部の内容は統計的推論やモデルシュミレーションなどを用いて「合理的な人間が行うだろう意思決定プロセス」の規範を導出しており、第三部の内容は「実際の意思決定がどのように行われているだろうか」という疑問のもと実験などの実証研究を通して人々の意思決定プロセスを導出している。
 学生生活の中で診断的意思決定方法を活用し意思決定を行うことで、質の高い判断力と選択力を養って頂きたく、この書籍を推薦する。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より