三浦しをん著 『きみはポラリス』

知能情報学部   4年生 Hさんからのおすすめ本です。

書名 : きみはポラリス
著者 : 三浦しをん 著
出版社:新潮社
出版年:2011年

 

 文庫本の表紙のイラストがとてもポップなものだが、胸キュンの甘い言葉がいっぱいの恋愛小説を想像していたが全く違った。ジャンルは恋愛だけど、キュンではない。「普通」の恋人じゃなく、傍らにいる人を思う話が集められている。最強の恋愛短編集。

 寝る前に読んでモヤモヤとした気持ちが湧いて眠れなくなるほど、愛や恋心の多様な形態が書かれていた。様々な愛の形の話が詰まっていて、いろんなテイストが味わえる。

 リアルかつこの広い世界であれば、どこかにこんな恋愛もたくさんあるんだろうけど、普通とは少し違う、だけどそれぞれ間違いなく正真正銘の愛のかたちを集めた恋愛小説集。

 「恋愛」と一言で表しても、そこに含まれる感情には愛しさ、寂しさ、憎さなど様々なものがある。誰かを好きだと、大切だと思う感情はだれしも持っていると思う。ただ、それを自分自身ですら認識できないこともある。後になって認識する事もある。甘く華やかな恋愛や辛く苦しい恋愛だけが恋愛ではない。そんな曖昧な感情を持つのが「恋愛」だと、この本を読んでそう思った。このすべての物語の1から10まで共感することはできなかったけど心が満たされた気持ちになる。

 11個の物語が詰まっている中で、私がいちばん好きなのは「私たちがしたこと」という話だ。主人公の朋代は高校時代、夜道で襲われた。その相手を彼氏の黒川は鉄パイプで殺してしまう。そして二人で穴を掘って埋める。許されない罪を犯したが、誰にもばれなかった。そんな大きな二人の「秘密」を抱えて話が進んでいく。サスペンス要素もありながら、この「秘密」で、二人がどんどん依存しあっていくのが面白かった。

 この物語のように、すべての物語は「秘密」がキーワードである。「秘密」がいろんな展開を生んでいく。最強の恋愛短編集。この意味が読み終わるころにわかります。