知能情報学部 4年生 Hさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)
書名 : きみの友だち
著者 : 重松清著
出版社:新潮文庫
出版年:2008年
友だちってなんなのだろう。答えはないのだろうが、分かったふりはしたくない。そんな時に出会ったのがこの本である。
この本は、小学生や中学生の8人の「きみ」が登場する。主人公が毎回変わり、様々な視点からの物語を読むことが出来る。しかし、すべて繋がっているような子供時代から大人までの複雑な人間関係を感じることが出来る。「独りぼっちは嫌だ」、「自分はここにいてもいいのだろうか」と、登場人物は皆何かしら悩みを抱えもがいている。
本作は、全編を通じて恵美という女の子が中心にいます。小学4年生の時に事故で片足を不自由にし、以後松葉杖での生活を余儀なくされている。それ以来、人気者だった恵美は不愛想になってしまい、孤立してしまうが同じように孤立していた由香と一緒にいるようになる。由香は、病気がちで、少しトロく、ニブい女の子であった。
どの作品も、恵美か恵美の周囲の人間にスポットライトが当てられ物語が進んでいく。「友だち」との関係であれこれごたごたしている人々が、「みんな」を否定し、「友だち」である由香を大切にしようとする恵美と触れることで、何かしら変わっていく、というようなストーリーを「きみ」という二人称で描いている作品である。
この作品は、学生だったことがあるすべての人に、等しく似たような経験があると言わせるような、学校の世界というのを完璧に描いているような気がした。恵美という人物を主軸とし、その周囲にいる「みんな」を否定できない人々ものにスポットライトを当てていく感じになる。そのように、「みんな」と「友だち」っていったい何なのだろうと考えさせられるような作品ではないかと感じた。そこに答えはなく、自分のなりの理解の仕方は持っていてもいいが、そこに至るヒントみたいなものを、本作が与えてくれるような気がする。