三宅香帆著 『「好き」を言語化する技術 : 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』

 

 

知能情報学部 4年生 Hさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 「好き」を言語化する技術 : 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない
著者 : 三宅香帆著
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版年:2024年

最近、「推し」という言葉を耳にする機会が増えた。「推し」とは、特定の人物やキャラクター、作品、商品などに対して、熱い支持や深い愛情を注ぐ行為、またはその対象を指す言葉である。
あなたには「推し」はいるだろうか?私には、「推し」と呼べる小説がある。

ある日、友人からこんな質問を投げかけられた。
「それ、どんなところがいいの?」
私はその問いにうまく答えることができなかった。
「えっと……うーん、面白いんだよね。」
平凡でありきたりな答えしか浮かばず、自分の語彙力の乏しさ、言語化能力低さに少し落胆した。

そんな中、書店でたまたま見かけ購入したのがこの本である。本書では、「推し」についての発信でいちばん重要なことは自分の言葉を作ることであるとされている。

今の時代、SNSを通じて他人の感想が際限なく流れてくる。他人の感想に触れているうちに自分の感想を忘れ、他人の感想がまるで最初から自分の言葉の感想であるかと錯覚してしまい自分の言葉は、感想は何だったのかよくわからなくなってしまう。私達は他人の言葉に影響を受けてしまうものなのだ。だからこそ他人の言葉と距離を取るために自分の言葉を作ることが重要なのである。そしてその自分の言葉を作るためのちょっとしたコツが本書では紹介されている。

読了後、私自身も自分の「推し」を語るための言葉を少しずつ増やしてみた。「好き」を細分化し、自分の言葉で、自分だけの感情で自分はこの作品のどこが好きなのか言語化していく作業は思った以上に楽しく、自分の中にこんなに多くの感情が隠れていたことに驚かされた。そしてその言葉が他人と共有できたとき、「推し」を語ることの喜びと、新たなつながりの素晴らしさを改めて実感することができた。

本書は「推し」の素晴らしさを言語化することに悩む人々にとって、具体的な手法と共感を提供する一冊だ。自分の感情を言葉に乗せて伝える力を高めたいと考えるすべての人に、ぜひ手に取っていただきたい作品である。