坂木司『シンデレラ・ティース』

 文学部 2年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

 

書名:シンデレラ・ティース
著者:坂木司
出版社:光文社  出版年:2006

 歯医者についてどのような印象がありますか。私は、歯の矯正で歯医者への通院経験がありますが、「歯を治療してくれる場所」という、漠然としたイメージしか持っていませんでした。この本を読んで、歯医者の仕事や歯についての知識が増え、理解が深まったように感じています。

 この物語の主人公は、小学校の低学年の頃、子供へのケアが不十分な歯医者での治療を経験したために、歯医者への苦手意識を強く持ってしまっている、大学二年生の女の子、サキです。サキは母親の計略に引っかかり、叔父の勤める歯科医院で受付のアルバイトをすることになってしまいます。歯医者の受付嬢として患者に接し、クリニックに持ち込まれる歯と患者の心に関する問題を個性豊かなスタッフ達と解決していくうちにサキは、歯医者に対するマイナスイメージを克服し、成長していくというストーリーです。

 私がこの本をおすすめする理由は三つあります。

 まず一つ目は、物語が進んでいくにつれて、少しずつ苦手を克服し、成長していくサキの様子を感じ取れるからです。前に進んでいく主人公を見て、自分も頑張ろうと、勇気をもらえるのではないのでしょうか。

 次に二つ目は、一つ一つの謎や問題に真摯に向き合い、歯だけではなく患者の心までをも救うために最善を尽くすスタッフの姿に感銘を受けたからです。

 最後に三つ目は、生き方や考え方についても教えてくれる本だと思うからです。上辺だけでなく内面を見て人を理解することの大切さや健康に人生を楽しむために必要なことなどを感じ取ることができました。

 歯医者への認識を新たにするためにも、サキの忘れられない夏を体験してみて下さい。また、このお話の姉妹編に当たる物語が存在します。サキとメールのやり取りをしている“ヒロちゃん”が主人公の「ホテル・ジューシー」というお話です。サキとヒロの二人の物語をぜひ読んでみて下さい。