
■『Physical chemistry problems and solutions : atoms, molecules and thermodynamics』
■ Springer, 2026.4
■ ISBN 9789819701643
■ 請求記号 431//4017
■ 配架場所 図書館1階・教員著作コーナー
■ 編著者 Satoshi Hirayama, Masahiro Yamamoto(理工学部)
<自著紹介>
私たちが化学を学ぶ学生として研究生活を始めた頃、物理化学の巨人と呼ばれる化学者たちが、まるで手のひらの上で自在に操るかのように、これまで解明されていなかった化学現象を次々と解き明かしていく姿に強い魅力を感じ、将来は物理化学の研究者になりたいと憧れたものである。当時、「物理化学者(Physical Chemist)」という響きは、私たちにとってとても心地よく、格好よいものに思えた。
物理化学を学び始めてから、すでに20年以上が経過した。研究対象はより高度になり、研究手法も想像を超えるほど進歩したが、化学現象を理解するための理論的基盤を成す物理化学そのものは、それほど大きく変わってはいない。実際、基礎はほとんど変化していないと言ってよい。一方で、理論式や実験結果を解析するためのコンピュータソフトウェアや、インターネット上で利用可能な膨大な科学情報は、科学的問題への取り組み方を大きく変えた。本書でも頻繁に用いている計算ソフトウェアMathematicaや、無料で公開されている講義であるMITOCWは、物理化学のみならず自然科学全般の理解に大きく貢献している。MITOCWでは魅力的なライブ講義に加え、実演実験や問題・解答も提供されており、自宅にいながら世界トップクラスの大学の授業を楽しむことができる。かつては最先端の科学に触れるには留学や著名な研究機関に身を置くしかないと考えられていた時代とは隔世の感がある。本書では、こうした要素も適宜取り入れている。
本書は物理化学の7つの分野を扱い、実質的に2巻構成となっている。第1巻は原子・分子および熱力学に関する問題、第2巻は分布・反応・構造に関する問題を収録している。本巻はその第1巻である。本書には、物理化学の基礎理解に有用であると考えた問題を、全体でほぼ1000題にわたり収録した。すべての問題は私たち自身で解き、検証している。そのため、各問題には導入から発展的内容に至るまで、一貫して非常に詳細な解答を付し、必要に応じて丁寧な解説も加えている。
問題と解答は前述の7分野に分類されているが、各分野内での配列は必ずしも順序立てられていない。したがって、本巻の冒頭から順に読み進める必要はなく、興味のある分野の任意の問題から取り組むことができる。これは、現実の世界では解くべき「問い」が必ずしも順序よく与えられるわけではなく、思いがけず出会う問題にどのように対処するかを通じて、物理化学への理解をより深めてほしいと考えたためである。その代わりに、各自の疑問に対応する問題を見つけやすいよう、充実した索引を用意している。ぜひこの索引を活用してほしい。
残念ながら、研究とは異なり、教育におけるさまざまな工夫や試みは必ずしも容易に継承されるものではない。本書で示した問題へのアプローチや、あえて言えば私たちの試行錯誤や誤りも含めて、物理化学を体系的に学びたい人々だけでなく、さまざまな化学現象を理解するための基礎的手段として学生に教えようと努力している方々にとっても、少しでも役立つことを願っている。
