ランドール・マンロー『ホワット・イフ? 野球のボールを光速で投げたらどうなるか』

 文学部 2年生 中西聖也さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:ホワット・イフ? 野球のボールを光速で投げたらどうなるか
著者:ランドール・マンロー
出版社:早川書房  
出版年:2015年

 この本は科学の本である。科学と聞いて頭が痛くなってきた方が居るかもしれない。申し訳ない。とりあえず熱さまシートを使ってください。また、「文学部なのに科学の本かよ」とツッコミをいれた方が居るかもしれない。申し訳ない。とりあえず最後まで読んでみてください。
 『空想科学読本』という本をご存じだろうか。アニメや漫画などの空想科学を真面目に考える本である。本書はだいたいそれに近いものだと考えてもらっていい。ただ、扱っているものは広く一般的な疑問であり、アメリカ製であるという違いはある。
 著者ランドール・マンローは元NASA研究員であり、今はマンガ家をやっている。彼の趣味は自身のWEBサイトに寄せられた突拍子も無いような空想的な質問に対して、あらゆる手段を用いて真面目に考え、「ユーモア」を添えて回答することである。本書はその回答の集大成だ。科学・数学を駆使し、時には専門家に問い合わせ、必要とあれば論文を読みあさり、棒人間や図を用いて解説していく。それでは、どんな質問が収録されているかを少しだけ紹介しよう。
 「野球のボールを光速で投げたらどうなる?」
 表題作。ピッチャーから放たれたボールの速さは時速約10億キロ。1ナノ秒ごとに様々なことが起こる。果たしてバッターの運命はいかに。
 「地球の人が全員集まってジャンプしたらどうなる?」
 何らかの摩訶不思議な方法でロードアイランド州に集められてしまった人類。彼らは正午の時報とともに一斉にジャンプしてみたのだが…
 「ヨーダのフォースってどれくらい?」
 スター・ウォーズに登場するキャラクター、ヨーダ。著者は映画を何回も何回も何回も再生して、ヨーダの持つフォースの数値化に挑んだ。
 本書の良いところは、難しそうな科学への扉をぶっ壊してくれるところだ。難しい言葉を使っていても、シュールなイラストが理解を助けてくれる。60個以上の質問のどれを読んでも、「科学ってなんだか面白い」と思わせてくれる。理系の世界の広さを感じさせてくれる著者の「桁違い」な回答を、どうぞお楽しみください。