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KONANライブラリ サーティフィケイト学生企画『平生釟三郎の本』

KONAN ライブラリ サーティフィケイト 学生企画
『平生釟三郎の本』

展示期間 :2023年 4月19日(水)~ 5月下旬まで
場所:図書館入館ゲート前

甲南学園は、4月21日に創立記念日を迎えます。

甲南生に改めて甲南学園設立者の平生釟三郎のことを改めて知り、甲南大学しかない魅力を実感してほしい。

平生釟三郎が残した言葉や生涯を学び、大学生活や今後の生活に生かしてください。

企画者: 経済学部2回生 K

 

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今春、甲南大学出版会より『平生フィロソフィ』という、学園創立者・平生釟三郎に関する新しい本が出版されました。
本企画では、この本の編集に携わった「『平生フィロソフィ』出版タスクフォース」のメンバー皆様から、出版の経緯や目的、好きな平生釟三郎のエピソード、おすすめの平生釟三郎の本についてお伺いしたインタビューを展示しています。(インタビュー内容は、後日このブログにも掲載する予定です。)

また、これまでに出版された平生釟三郎に関する本も、合わせて展示しています。
どれも貸し出しできますので、この機会に読んでみてください。

平生フィロソフィ

甲南大学名誉教授(元甲南学園理事長)𠮷沢英成・著
『平生フィロソフィ 平生釟三郎の生涯と信念』
甲南大学出版会, 2023年4月
ISBN 978-4-9912975-0-2
https://kobe-yomitai.jp/book/1517/

平野淳一(法学部)『図録 政治学』

図録 政治学 西山 隆行(編集) - 弘文堂

 

<教員自著紹介>

授業の教科書が文字ばかりで読むのが大変だという方も多いと思います。

この図録政治学は、そうした皆さんも読みやすいよう、イラストや写真が多く使われています。高校までの授業で使用された資料集をイメージしてもらえると良いです。説明も分かりやすく書かれていますし、公務員試験で出題されやすいトピックも多く扱っているのも特徴です。

興味のある方はぜひ読んでみてください。

『図録政治学』
■  西山隆行 , 向井洋子編 ; 阿部悠貴[ほか]著 , 弘文堂 , 2023.2

■ 請求記号 311//2226
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  平野淳一(法学部)

中村 聡一(マネジメント創造学部)『「正義論」講義 』

<教員自著紹介>

甲南の皆さん、西宮キャンパスの中村聡一と申します。私の新刊書が発売になりました。

タイトル: 『「正義論」講義・世界名著から考える西洋哲学の根源』(東洋経済新報社)

以下に本書の精神を記します。ご愛顧賜れれば幸甚です。

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要点

・NYコロンビア大学の政治哲学授業は、米国エリート教育の原点だ。プラトンとアリストテレスに主眼をおく。

・現代ビジネススクール(MBA)に象徴される”功利主義”の価値観をもって”アメリカ的”と捉えるのは誤りだ。

・「魂」を磨くこと。「正義」は人間の内にこそある。「アレテー」(徳)という言葉に集約される。

・「正義」が「幸福」(エウ・ダイモニア)をもたらす。昔も今も世界は不正義に満ちている。故に”魂の哲学”は私たちに普遍的な意義をもたらす。

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NYコロンビア大学には100年以上の歴史を誇る名物哲学授業があります。米国リベラルアーツ教育の原点であるこの”Contemporary Civilization”(現代文明論)という授業を私は研究しています。その真髄をさがすことで深淵な”真理”を見つけられるかも知れないと考えています。

”アメリカ的”な価値観=”利益至上の合理主義”か。 そう感じる皆さんも少なくはないと思います。しかしそうではありません。むしろ真逆です。

・「得」(utility・便益, pleasure・快楽, profit・利益) or ・「徳」(arete・アレテー・魂の卓越性)

利益至上の合理主義、つまり”ユティリタリアニズム”(功利主義)は、”得”(便益、快楽、利益)の最大化に目標を設定します。

対して、”徳”(アレテー・魂の卓越性)の視点から思想史を概観していくのがこの授業の特徴です。

では、ここでいう”徳”とはなにか。”アレテー”(arete)という古代ギリシャの哲学用語を知る必要があります。

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1.プラトンとアリストテレス哲学の土台「アレテー」とは…

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日本語訳では「徳」という表現で登場することが多いです。しかし根っこをおさえておかないとミスリーディングです。なぜかといえば、古代ギリシャの「徳」、つまり「アレテー」は日本語には存在しない概念だからです。ギリシャ哲学において「徳」とは、「魂」の能力のこと、どれだけフルにそのポテンシャルを発揮しているかです。「魂の卓越性」とも訳されます。

皆さんはご自分の魂のはたらきに自信がありますか?そうした設問からイメージいただくと良いでしょう。

いくつか関連の重要語句を紹介します。

・カキア(悪徳)とは…

「悪徳」が徳の反対だというのは自明です。魂のはたらきが本来そうあるべきとは違うところにあります。「カキア」とは古代ギリシャの誘惑の魔女です。堕落へと人びとを誘います。

・ペートス(あるいはパトス・情動)とは…

魔女カキアの誘惑に呼応して人びとの魂のはたらきを左右するのが「ペートス」(情動)です。魂が情動に支配されたら悪徳の道へ踏み込むことになります。

・フロネーシス(知性)とは…

そこで人間ならではの理性がはたらきます。私たちはさまざまな知性をはたらかせて理性的に生きることができます。なかでも「フロネーシス」のはたらきが人間の倫理行動を考える上で大切です。

フロネーシスは、日本語訳では「知慮」とされているようです。「熟慮」の「慮」と「知」をかけあわせた言葉です。「熟慮して知る」というほどにまずはイメージしておきましょう。

・フィリア(愛)とは…

人間社会は、人と人との結びです。その仕方といえましょう。では、人と人とを結びつけるのは何でしょうか。

大きく3つあります。便益(utility)、快楽(pleasure)、そして人間性(arete)です。これら3つは複雑に交錯して人間の結びつきの仕方を規定します。

結びつきの仕方が良好である場合、それをフィリア(愛)と呼びます。日本語で「愛」とすると曖昧なところが多分にありますが、古代ギリシャの「フィリア」は明快です。良好な人間関係、友人愛とでもまずはイメージしましょう。

・エートス(倫理)とは…

3つの結びつきの要因のうちの「人間性」によるものが本来的な意味での「良好な人間関係」となります。

では、善き人間性はどのように育まれるのでしょうか。それが「エートス」です。「人となり」ということです。

アリストテレスの格言を紹介しましょう。

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善く生きるから善き人に、悪しく生きるから悪しき人になる。

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・イデア(観念)とは…

「自由」とはさまざまな正義のうちでも大切なものとなります。では、「自由」とは何でしょうか。

社会、あるいは人間関係のうちに生きていれば、そのなかでの完全な自由はありえません。これはお分かりだと思います。

しかし自分自身の内にそれを見いだすことはできます。どんな人間でもどのような境遇におかれようとも、人間の頭の中の自由だけは誰にも奪うことはできません。この自由が作り出す世界観が「イデア」(観念)です。哲学の世界では、「形而上学」と呼びます。

プラトンが大御所になります。

・プラッティン(実践)とは…

しかるに、人間は経験を重ねてそこからさまざまなことを学ぶのも事実です。経験とは「プラッティン」(実践)あってのことといえます。

・ゼーン(生)とは…

どのように人生の実践を行うかが問われます。だから、こうした側面の考察に軸足をおく哲学の類型を「経験主義哲学」と呼びます。

アリストテレスが大御所です。

・エウ・ダイモニア(幸福)とは…

政治哲学の大命題は、「エウ・ダイモニア」(幸福)です。さまざまな「善」のなかでも最高にして唯一の「最高善」です。

「エウ・ダイモニア」(幸福)とは、「神々の祝福」を意味します。社会から「祝福」を得る、そういうような「幸福」です。

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2.”真理”は魂の内にある~キーワードは「信念」だ!

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「魂」のこと、つまり、人びとの善き「徳」や「人間性」そして「信念」を生育するしかありません。

そこで「正義」の出番となります。正義が大切だということに異論はないと思います。

しかしはたして役にたつのか得なのか、最後には勝つのか、となると意見は大きく別れましょう。

リンカーンは次のように言っています。

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アメリカの自由と独立との城壁をなすのはなにか。軍艦や軍隊ではない。われらの胸底に神が給うた自由を愛する心である。

正義は力であるとの信念を持ち、この信念にたってわれらの義務とするところを敢然と最後まで果たそうではないか。

(リンカーン戦没者追悼演説より抜粋)

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こうした考え方は、25世紀ほども遡る古代ギリシャに始まります。

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われらの政体は他国の制度を追従するものではない。ひとの理想を追うのではなく、ひとをしてわが範に習わしめるものである。

われらはあくまでも自由につくす道をもち、また日々たがいに猜疑の目を恐れることなく自由な生活を享受している。だがこと公に関するときは、法を犯す振舞いを深く恥じ恐れる。法を敬い、とくに、権利を侵されたものを救う掟と、万人に廉恥の心を呼びさます不文の掟とを、厚く尊ぶことを忘れない。

(ペリクレース戦没者追悼演説より抜粋)

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賢人たちの優れた教えが人びとの「信念」にまで高まることで「理想社会/幸福国家」が実現します。

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3.「正義」が”幸福”をもたらす!

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プラトンの主著で『国家』という書があります。政治哲学の嚆矢とされます。師ソクラテスを主人公にさまざまな登場人物との対話を通して語るものです。(余談ですが、私の新刊書もプラトンとアリストテレスの師弟の対話により話が進む趣向にしました。この書から着想を得ました。)

師ソクラテスの言葉を通してプラトンが示した信念が語られます。

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正義がある。そこに幸福がある。幸福がたくさんある。すると、正義がたくさんあることが見出だせるのだ。

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目標は、一つしかありません。この理想を実現することです。

それが「信念」です。人びとの信念を善く醸成すること。唯一の方法なのです。

100年以上の歴史を誇るコロンビア大学の名物哲学授業は、それに先立つ2000年以上前の古代ギリシャの哲学者が提示した大命題を後世の思想家がいかに咀嚼し時代時代でどのように語り論じたかを見ていきます。

戦争や分断、格差に”正義”はありません。昔も今も不正義は世界に社会に満ちています。

だから米国の最上位校ではプラトンとアリストテレス哲学を学びます。”先ず”学びます。”必ず”学びます。私は、日本でもそうなることを願っています。

簡単にはなりましたが、以上で、私の解説と致します。米国リベラルアーツ教育の真髄(コア)とそのミッション(使命)を皆様がより身近にお感じになったならばまことに嬉しく思います。

以上

<参考文献>

・『教養としてのギリシャ・ローマ~名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄』(東洋経済新報社)

・『「正義論」講義~世界名著から考える西洋哲学の根源』(東洋経済新報社)

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以下の紀伊國屋書店さんの本書紹介ページには、リベラルアーツの世界名著の数々が紹介されています。ぜひご覧ください。

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紀伊國屋書店の本書紹介ページ

『「正義論」講義』がもっと面白くなる 

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsd-107004001036003001–

(抜粋)

古代ギリシャより賢人らが問い続けてきた「正義」についてコロンビア大学でリベラルアーツを学んだ中村聡一さんが論じた1冊『「正義論」講義』が発売になりました。

これを記念して、『「正義論」講義』の中で触れられている作品と『「正義論」講義』をもっと深く理解するための20冊をご紹介いたします。今、現実に起きている戦争・分断・格差などについて考えるヒントが見つかれば幸いです。

 

■『「正義論」講義
■ 中村 聡一著 , 東洋経済新報社 , 2023.2
■ 請求記号 158//2017
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  中村 聡一(マネジメント創造学部)
amazon著者紹介

新見まどか(文学部)『唐帝国の滅亡と東部ユーラシア : 藩鎮体制の通史的研究』

<教員自著紹介>

本書は、中国の唐王朝(7世紀初~10世紀初)が滅亡する過程とその背景を考察したものです。300年の長きにわたって栄えたこの帝国は、時代の変化に対応し、敵対勢力すら利用してしたたかに延命を図りました。

しかし、やがてこれまで支えてきてくれた人々を切り捨てはじめ、最後は誰からも見放されてしまいます。斜陽の時代の中、最後まであきらめずに生き残りをかけて戦う人々の姿を、ぜひ読んでみてください。

■『唐帝国の滅亡と東部ユーラシア : 藩鎮体制の通史的研究
■ 新見まどか著 , 思文閣出版 , 2022.12
■ 請求記号 222.048//2020
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  新見まどか(文学部)

三谷 宗一郎(法学部)『戦後日本の医療保険制度改革 : 改革論議の記録・継承・消失』

<教員自著紹介>

中央政府で働く官僚たちは、どのように新しい政策を生み出しているのでしょうか。この本では、1950年代から90年代までの厚生官僚が新たな政策を創造し、継承していった過程について、厚生省の非公表内部文書やインタビュー記録などをもとに明らかにしました。公務員を目指している方だけでなく、イノベーションを生み出す組織のダイナミズムに興味がある方にもぜひ手に取ってもらいたいと思います。

『戦後日本の医療保険制度改革 : 改革論議の記録・継承・消失
■  三谷 宗一郎著 , 有斐閣 , 2022.12
■ 請求記号 364.4//2056
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  三谷 宗一郎(法学部)

サン=テグジュペリ著 ;河野 万里子訳『星の王子さま』

知能情報学部 4年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :星の王子さま 
著者 : サン=テグジュペリ著 ;河野 万里子訳
出版社:新潮社
出版年:2006年

この物語には「大切なものは目には見えない」というメッセージが込められている。主人公のパイロットと小さな星から来た王子様が砂漠で出会い、王子様がいろいろな星を旅して地球の砂漠にたどり着くまでの出来事を、パイロットに話すことでそのメッセージを伝えている。

この物語は、始めはよくわからないと思うかもしれない。なぜなら、登場する人物やものは別のものに例えられているからだ。よく考えないで物語を読むと王子様と変な星が出てきて変な話だな、意味が分からない、と思うかもしれない。

王子様は主人公が描く絵をみて、奥に秘められたメッセージを読み解き、本当の意味を理解することができた。そのことにパイロットは驚いた。なぜなら、大人は表面的にだけ物事をとらえていて大切なものが目には見えないものであることを忘れているからだ。王子様が旅した星々には権力・名声・仕事など目に見えるものを大切にする大人が描かれ、王子様はつまらないと思った。また、王子様は地球でバラ園の美しいバラ達を見る。しかし、自分の星にある1輪のバラとは見た目は同じでも同じではないと気付く。それは、目に見えない思い出があるから王子様だけの特別なバラであるからだ。そして、砂漠も井戸があると思うから美しく、夜空も王子様やその思い出があるからパイロットには美しく思えるという。大人が忘れている目に見えない奥に秘められたメッセージを読み解かなければいけないということが書かれている物語だ。

この物語は、表面的な物事の捉え方しかできない大人達に読んでほしい。この物語を読めば大切なものが見えるようになるかもしれない。そして、この物語をよくわからないと思う人は表面的にしか物語を捉えられていないのかもしれない。