投稿者「図書館」のアーカイブ

櫻井智章(法学部) ほか著 『憲法の基本』第3版

   <教員自著紹介>
    本書は、小泉洋一元教授を中心に、甲南大学に関係のある先生方が、主として甲南大学法学部生を念頭に置いて執筆した憲法の教科書です。小泉先生が退職されたため、小泉先生執筆部分を私が補訂するとともに、全面的にリニューアルしたのが、この第3版です。変動の激しい憲法分野ですが、本書を手に取って「憲法の基本」を学んでいただけると幸いです
 
■『憲法の基本』第3版  櫻井智章(ほか著)  法律文化社   2016年4月
■請求記号 323.14//2528 
■配架場所 図書館1階開架一般
■著者所属 法学部  教授

■櫻井先生からのお薦め本
 『古典で読む憲法』 (有斐閣)

マルクス・シドニウス・ファルクス(ジェリー・トナー)著『奴隷のしつけ方』

書名: 奴隷のしつけ方
著者: マルクス・シドニウス・ファルクス(ジェリー・トナー)
出版者: 太田出版  出版年: 2015年
場所: 2階中山文庫  請求記号: 232//F

イギリス・ケンブリッジ大学の古典学研究者ジェリー・トナーが、様々な古典にから奴隷に関するエピソードを引用しながら、古代ローマ貴族「マルクス・シドニウス・ファルクス」になりきって書いた「奴隷」の取り扱い説明書です。

奴隷というと、足かせをされ、鞭打たれながら厳しい労働をするというイメージですが、意外にも古代ローマ人は、奴隷にも人間性があることを認め、奴隷に対して過酷な扱いをすると法律に基づいて主人が罰せられることもありました。

主人は、奴隷たち一人ひとりをよく観察し、それぞれの適正に合った仕事を与えなくてはなりません。また、必要な食事や休憩、娯楽を与えないと生産性が落ちるため、福利厚生にも配慮しなくてはなりませんでした。
古代ローマの「主人」とは、家族や従業員、奴隷を含めた”ファミリア”という大きな組織を経営するリーダーでした。ローマという巨大帝国は、大小無数の”ファミリア”がそれぞれの事業を行うことで成り立っていたのです。

この本をお勧めする理由は、もちろん、労働者を奴隷のようにマネジメントする方法を学んでほしいからではありません。
何に囚われたら奴隷となってしまうのか、奴隷制度のどこに致命的な欠陥があるかを考えることができるからです。

実際、過去から学ぶことは、未来を創る上でとても役に立ちます。
マルクス・シドニウス・ファルクスもこんなことを言っています。
「あなたがどの時代のどこの人であろうとも、たとえその世界がローマとは異なる原則で成り立っていようとも、ローマから学ぶべきものなどないと決めつけてはいけない。ローマには多くの知恵が眠っている。そのなかには、あなたにとっても、目を閉じるより開けてよく見たほうが得になるものがたくさんあるはずだ。だから、読まれよ。そして学ばれよ。」(本文p020より)

小倉美惠子『オオカミの護符』

書名: オオカミの護符
著者: 小倉美惠子
出版者: 新潮社  出版年: 2011年
場所: 1階開架一般  請求記号: 387//2111

ライトノベルのようなタイトルですが、民俗学の本です。

著者の小倉さんは、神奈川県・土橋の古い農家のご出身だそうです。
先祖代々土着の農家だったそうですが、土橋が都市化するにつれ、大好きだった祖父母といつしか疎遠となり、ご自身も国際親善に関する仕事をされていたとのこと。
ご実家の周りもすっかり住宅街になったのですが、ある日、ぽつんと残されていたお蔵に、オオカミの絵が描かれたお札が貼ってあるのに気が付きました。
古いものではなく、最近貼り換えた跡があるようです。しかも、何度も繰り返し貼り換えられたらしく、幾重にも跡が付いている・・・。

気になった小倉さんは、そのルーツを訪ねてみることにしました。
はじめは両親、古くからのご近所、山の御師、山里の古老・・・失われていくカミサマたちと出会う過程に、わくわくします。

この本については、文学部の田中貴子先生が描かれた書評が朝日新聞に掲載されています。
こちらもご参照ください。
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2012020500014.html

(konno)

中町信孝(文学部)『「アラブの春」と音楽〜若者たちの愛国とプロテスト』

   <教員自著紹介>
   2011年、世界を席巻した「アラブの春」と呼ばれる政治運動は、皆さんの記憶にも新しいことでしょう。当時、アラブ世界の若者たちは自由を求める「革命」を起こし、その中でもエジプトではムバーラクの独裁政権が倒されました。しかしそのわずか2年後、エジプト初の文民大統領であるモルシー政権が軍による「クーデター」で倒れると、若者たちの多くは軍部主導の新体制を支持しました。このような、一見すると独裁への逆行、民主主義の後退ともみえるエジプトの社会情勢は、なぜ生じたのでしょう?

 不可解な中東政治の動きを解き明かすために、この本ではエジプトのポピュラー音楽、略して「エジポップ」に注目しました。若者たちが好んで聴くエジポップを分析すれば、時に「若者の革命」と呼ばれたアラブの春の実情を理解することが可能になると考えたからです。戦後から現在のエジプトにおいて、どんな曲が流行ったか? こてこて演歌系から劇甘ラブ・バラード、攻撃的なヒップホップから荒削りなインディー・ロックまで、エジポップの流行の変遷をたどることで、いつのまにか中東現代史の流れまでもが頭の中に入って来ます。

 もちろん、ただ活字を追うだけではエジポップを楽しむことはできません。そこで本書の参考楽曲リストとして、YouTubeプレイリストを作成しました。興味のある人は、まずYouTubeのサイトに飛んで、 アラブの春と音楽 を検索してみてください。この本の中で紹介した123曲のビデオクリップがセレクトされていますので、まずは観て聴いてください。見知らぬ国の素敵な音楽との出会いがあるかも知れません。そして、同年代の若者として、アラブ世界の若者たちのことをもっと身近に感じてもらえればうれしいです
 
■『「アラブの春」と音楽〜若者たちの愛国とプロテスト』  中町信孝(著) DU BOOKS,  2016年3月
■請求記号 762.42//2002 
■配架場所 図書館1階シラバス
■著者所属 文学部  教授

■中町先生からのお薦め本
『深夜特急 沢木耕太郎 著
請求番号 915/SA/1~3    配架場所 図書館2F中山一般
旅を愛する若者(中年も含む)にとっての永遠のバイブル。大沢たかお主演でドキュメンタリー風ドラマにもなりました。原作、ドラマとも、本学図書館に所蔵があります。

『J-POP進化論〜「ヨサホイ節」から「Automatic」へ』 佐藤良明著
宇多田ヒカルの登場で終わっていますが、流行歌を用いた社会分析という点では古典的名著と言えます。手軽に読めますので音楽ファンは是非。

『イスラーム思想史』井筒俊彦 著
請求番号 120.8/4/2002   配架場所 図書館3F書庫一般
つて世界をリードしたイスラーム世界の思想・哲学についての基本中の基本とも言える入門書。取っつきにくいテーマですが、文章は簡単で、すっきりと頭に入ります。

高石恭子(文学部)『子どもの自我体験 :ヨーロッパ人における自伝的記憶』

   <教員自著紹介>
   私って誰? なぜ私は私なんだろう?  ある日、突然自分を見つめる<もう一人の自分>に気づき、当たり前の世界が揺らぐ瞬間が訪れる。子ども時代のその体験を、人生の後半になってもなお鮮烈に想起できる人が少なくないこと、またその後の人生に決定的な影響を与える場合があることを、オランダ・ドイツをはじめとするヨーロッパでラジオやウェブを通して収集した事例から紹介する、発達心理学者による好著。
  
■『子どもの自我体験:ヨーロッパ人における自伝的記憶 』 高石恭子(訳) 金子書房   2016年2月
■請求記号 371.45//2078                                              
■配架場所 図書館1階開架一般
■著者所属 文学部  教授 

■高石先生からのお薦め本
 という謎』 渡辺恒夫、高石恭子 編著 (新曜社)                                                                  

『私は本当に私なのか』  木村敏金井美恵子 著 (朝日出版社)   

『<わたし>とは何だろう』 岩田慶治 著 (講談社)

 『私の猫たち許してほしい  佐野洋子 著 (集英社)                       いずれも、自我体験について触れた啓発書、随筆です。哲学者、心理学者、画家、小説家、さまざまな表現者が<私との出会い>の体験について、それぞれの視点から振り返っています。青年期という<自分>を確立していく時期に、しっかりと自己省察を深めてみたい人にお勧めの本です。

西村順二(経営学部)『先を読むマーケティング :新しいビジネスモデルの構築に向けて』

   <教員自著紹介>
  本書は、先端といえる新しいビジネス事例を検討すると共に、従来のビジネス・モデルが現代的体裁を整える姿に着目する。IoT、AI、シンギュラリティと呼ばれる新しい技術や環境下でのマーケティング変化は必然であり、それが時には量的変化から質的変化への転換をもたらす。また、地方創生、地産地消、サステナビリティは従来の既成概念が現代風に衣替えして登場してきていることを表している。これら複眼思考からのマーケティングを考察したのが本書である。
 
■『先を読むマーケティング : 新しいビジネスモデルの構築に向けて』                 西村順二(ほか編著) 同文舘出版 2016年3月
■請求記号 675.04//2005                                        
■配架場所 図書館2階開架一般、サイバー一般和
■著者所属 経営学部  教授 

■西村先生からのお薦め本                                       『それから  夏目漱石 著                                                     『三四郎』『門』と並んで、夏目漱石の前期三部作と呼ばれています。皆さんが、卒業後実社会において、働くことの意味、仕事とは何なのか、そしてどんな人生を歩むべきなのかを、きっと考える時が来るでしょう。今、学生のときに一度読んでみてください。きっとそのヒントが見つかるでしょう。