投稿者「図書館」のアーカイブ

大沼紀子『ばら色タイムカプセル』

  文学部 3年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

ばら色タイムカプセル

書名:ばら色タイムカプセル
著者:大沼紀子
出版社:ポプラ社  
出版年:2012年

 この小説では、La vie en rose 「あなたたちの人生が、薔薇色であることを祈っています」という意味が込められた、女性専用有料老人ホームが舞台となっています。父と、その再婚相手のことを思って、家出を決行したが、何もかもに疲れて崖へと駆け出してしまった、主人公の森山奏(13才)は、先述した老人ホームの入居者達に助けられ、自分の年齢を20才と偽り、食事と住居完備の条件で雇われ、入居者達と深く関わっていき、自分が忘れていた大事なことを思い出したり、「生きること」「死ぬこと」について教わったりしながら、自分の人生を見つめ直していくというストーリーです。

 この作品に登場する、入居者達は、皆すごく魅力的です。バラの手入れに力を注ぐ遥さん、クラブ登紀子を営業する登紀子さん、明るくかしましくプロの乙女の友情を育む仲良し3人組の佐和子さん・千恵さん・万里さん、健康を気にせず、自分が食べたいものを作って食べる長子さん。彼女達は、自分に正直で、自由気ままに伸び伸びと過ごしている点は共通しているけれど、それぞれ個性的で愛すべきところや面白みがあるように描かれていると感じられました。そして、主人公の奏が、彼女たちの行動や姿から感じ取ったことや、彼女達が奏にかけた言葉を、読者が、自分の中で反芻し、「生きること」「死ぬこと」について考えを巡らせるように自然と促されてしまう点も、この作品の魅力の1つだと感じました。また、気を張って、物わかりのよい子であろうと背伸びしていた奏が、入居者達や等身大の中学生の山崎和臣との関わりを通して、少しずつ変わっていく様子も、読み応えがあります。   

 この物語を通して、あなたの人生が薔薇色であるためのヒントを見つけてみませんか。

松田美佐著『うわさとは何か』

書名: うわさとは何か : ネットで変容する「最も古いメディア」(中公新書2263)
著者: 松田美佐
出版者: 中央公論新社  出版年: 2014年
場所: 1階開架小型  請求記号: S081.6/2263/29

「うわさ」には信憑性がない、と分かっていても、「そういうこともあるかもしれない」と思っていませんか?
ニュースよりも、ネット上の誰かの発言の方を真実だと思うことはありませんか?

うわさが真実であることもあるかもしれません(ただし、検証するのは非常に困難です)。
それに、「ガソリンが不足する」といううわさによって、大勢の人が、「大丈夫だと思うけれど、入手しておこう」と判断した結果、本当にガソリンが不足してしまう、というように、「うわさ」が自己成就してしまうことも度々あります。

もっと身近な事例ではどうでしょうか。
「Aさんが辞めたのはあなたのイジメが原因だって、うわさになってるよ」(本書冒頭より)
まったく身に覚えがなくても、ドキッとします。

人の「うわさ」にはついつい耳を傾けてしまうけれど、特に自分に関する「うわさ」は強いストレスになります。そんな非常事態にそなえて、そもそも「うわさ」というものがどういうものか、学んでおきませんか?

この本では、デマ、流言、ゴシップ、口コミ、風評、都市伝説など、様々な「うわさ」について調査し、社会や人間関係にどのような影響をもたらしているのかが説明されています。社会学・社会心理学の本ですが、社会学を専攻していなくても、分かりやすく読みやすい1冊です。

「うわさ」に負けない人生のために、ご一読ください。

図書館エントランスホールのモニュメント『KONAN』について

図書館エントランスホールにある、大きなアクリルのモニュメントをご存知でしょうか?
これは、神戸出身の版画家 菅井汲 氏の作品です。

KONANモニュメント

作品名: KONAN
作 者: 菅井 汲 (スガイ クミ)
制 作: 1978年10月
寄 贈: 甲南学園同窓会

現在の図書館の建物は、甲南学園創立60周年記念事業として計画され、1978年に竣工しました。このモニュメントは、学園創立60周年と図書館新設の記念として、甲南学園が菅井氏にデザインを依頼したものです。
同じく創立60周年記念として、赤い三角形の甲南のロゴマークと、甲南高等学校・中学校の講堂の綴帳も、菅井氏によってデザインされました。甲南のロゴマークは、旧制甲南高等学校の校章であった「兜」をイメージされたものだそうです。

図書館のモニュメントはアクリル柱にシルクスクリーンで作られているのですが、当時を知る先輩職員から、これだけ大きくて厚みのあるアクリルを気泡なく制作するためには、特別な技術が必要だったという話を聞いたことがあります。

是非一度、ゆっくりご鑑賞ください。

<菅井汲 略年譜>
1919年 神戸市東灘区生まれ
1937年 阪急電鉄に入社、事業部宣伝課で商業デザインの仕事に携わる
1948年 日本美術院再興第33回展入選
1955年 リトグラフ(石版画)の制作を開始
1956年 第3回リュブリアナ国際版画ビエンナーレでサグレブ市近代美術館賞を受賞
1960年 第2回東京国際版画ビエンナーレで国立近代美術館賞を受賞
1961年 第2回グレンヒェン色彩版画トリエンナーレで大賞を受賞
      第6回日本国際美術展(毎日新聞社主催)で優秀賞を受賞
1962年 第31回ヴェネツィア・ビエンナーレでデイヴィッド・E.ブライト基金賞を受賞
1972年 第1回ノルウェー国際版画ビエンナーレで名誉賞受賞
1978年 『フェスティヴァル・ド・コウナン(甲南高等学校・中学校の講堂の綴帳)』『KONAN(甲南図書館のモニュメント)』甲南学園ロゴマークをデザイン・制作
1996年 心不全のため逝去。紫綬褒章受章

川口茂雄 (文学部)ほか執筆 『デジタル情報社会の未来』

<教員自著紹介>
  《岩波講座 現代》の第9巻です。インターネットが社会をどう変えたのか、これからの未来はどうなるのか……、がテーマの巻です。
第4章を私は担当し、大量の文字や画像データを誰でもいくらでも保存できる時代が、人類史上初めて、ここ数年で急にやってきたことで、《何を残すか残さないか》の価値基準が不明確になってきた、とやや警鐘を鳴らす方向性で書いたのですが、対照的に第5章では、山田奨治氏が〈海賊版〉の創造的な文化的ポテンシャルを肯定的に論じています。読み比べてみてください。また両者の中間のような仕方で、第3章では荻上チキ氏が「ネット社会の闇」である「流言(デマ)」の拡散について、「情報教育」の必要性を指摘しています。――皆さんは大量のデータが飛び交い保存されるいまの時代を、どう考えますか
 
『デジタル情報社会の未来』 川口茂雄 [ほか執筆] 岩波書店 2016年6月
■請求記号 308/9/2020
■配架場所 図書館1階開架一般
■著者所属 文学部 准教授
 
 

リオデジャネイロオリンピックの開催にあわせ、オリンピック関連の展示をしています。

 いよいよ、8月5日からリオデジャネイロオリンピック、パラリンピックが開催されます。リオデジャネイロオリンピックでは、本学卒業生の武田麗子さん(平成19年卒)が前回ロンドンオリンピックに引き続き、馬術競技で出場されます。それにあわせて、甲南大学図書館では、オリンピック関連の展示を始めました。

その内容についてご紹介しますと、まず、元陸上短距離選手で、100m = 10.00秒という未だ破られることのない日本記録を持っておられる本学の伊東浩司教授が、オリンピックに出場された際の日本選手団公式ユニフォームや、本学図書館所蔵の伊東教授の著書を展示しています。公式ユニフォームは、初めてオリンピックに出場された平成4年のバルセロナ・オリンピックのものと、400mリレーの日本記録を打ち立てた平成8年のアトランタ・オリンピックのものというたいへん貴重なものとなっておりますので、ぜひご覧ください。

その他、本学卒業生としてはオリンピック出場第1号となる、松野栄一郎さん(昭和9年旧制甲南高等学校卒)が出場したベルリンオリンピックの記録『XI Olympiade,Berlin』等、貴重な資料や関連書籍を展示しています。

8月7日(日)開催のオープンキャンパス当日には、学外の方でもご見学いただけます。

このオリンピック関連の展示は、9月中旬頃(予定)まで開催しておりますので、ぜひお気軽に図書館までお立ち寄りください。

展示

秋元孝文 訳(文学部) エトガル・ケレット『あの素晴らしき七年』

<教員自著紹介>
  イスラエルの人気短編小説作家エトガル・ケレットのエッセイ集です。常に戦時下にあるイスラエルを背景に、息子の誕生から父の死までの七年間を、独特のユーモアでくるんで垣間見せてくれます。ポップで笑えて、でも腹に残る、そんな一冊です。特殊な状況と普遍的な話、どちらにも広がる不思議な本。2018年にはケレットさん夫妻を甲南に呼びたいと思ってます!学生の皆さんにも協力してもらえると嬉しいです

1000002506
 
エトガル・ケレット『あの素晴らしき七年』 秋元孝文 訳 新潮社 2016年4月
■請求記号 929.734//2001
■配架場所 図書館1階開架一般
■著者所属 文学部 教授
 
■秋元先生からのお薦め本
  福永信著『星座から見た地球』 
■請求記号 903/F
■配架場所 図書館2階中山一般