2-1. 学生オススメ」カテゴリーアーカイブ

川原礫著 『ソードアート・オンライン1 アインクラッド』

 

 

知能情報学部 4年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : ソードアート・オンライン1 アインクラッド
著者 : 川原礫

出版社:KADOKAWA
出版年:2016

本作は、新作ゲームであるソードアートオンライン(以降SAO)の中で、ゲームの死と現実の死がリンクした状態でクリアを目指したライトノベル作品です。主人公であるキリトはSAOのテストプレイ経験者であり、テストプレイ期間の中で最もゲームを進めることができたプレイヤーです。SAOサービス開始と同時に、他のプレイヤーにレクチャーしたり懐かしんだりとオンラインゲームを楽しんでいました。しかし、サービス開始からしばらくした後にログアウトできないことが発覚し、プレイヤー全体が困惑している中、SAO開発者である茅場晶彦が一度の死で現実でも死ぬことを告げられます。キリトはテスト時の知識を活かし、他のプレイヤーよりもクリアまでの効率が良いクエストや狩場を回り、クリアを目指して一人で進めていきます。少し読み進めると1回目のボス戦までたどり着き、本作のヒロインであるアスナと共にボスの討伐に成功します。その際に、圧倒的な強さや知識による攻略から、他のプレイヤーからデスゲームにおいて反則であると批判を受け、ボスのドロップ品を纏い「黒の剣士」と呼ばれるようになります。キリトと他のプレイヤーとの関わりや、それに伴ったキリトの葛藤、そしてライトノベルゆえの主人公の無双感を味わえる作品となっています。また、本作は一巻のみでクリアまで駆け足で進むのですが、その後に続く作品の原点となっています。

私は本作をアニメを通して読んでみようと思いました。本作がフルダイブVRゲームとなっており、現代を少し先取しています。VRやARなどの言葉が一般用語となった今では、場面を用意に想像しながら読み進めていくことができました。初めてライトノベルを読んでみたいという人におすすめの本であり、1巻で一通りのお話が終わるため気軽に読むことができます。特に、ゲームが好きであったり、しっかりとゲームの攻略を楽しみたい人におすすめです。

本作はSAOの世界でキリトが様々なプレイヤーと関わりながらゲームクリアを目指す作品です。非常に読みごたえがあり、場面の切り替わりが多いため熱中して読み切れる作品となっています。是非、ゲームが好きであったり、ライトノベルに興味があったら手に取って読んで頂きたい作品です。

小川洋子著 『博士の愛した数式』

 

 

知能情報学部 4年生 Bさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 博士の愛した数式
著者 : 小川洋子

出版社:新潮社
出版年:2003

『博士の愛した数式』は、記憶が八十分しか持続しない数学者の博士と、家政婦である「私」、そしてその息子との交流を描いた物語である。博士は事故の後遺症により、新しい記憶を保持することができず、常に現在を生き続けている存在である。しかし、その制約の中でも数学への深い愛情と、人に対する誠実さを失っていない点が、本作に静かな温かさを与えている。

物語の中で描かれる数学は、単なる計算や理論ではなく、美しさや秩序を持つ言語として扱われている。完全数や友愛数といった概念は、人と人との関係性を象徴する比喩として機能し、博士の世界観を形作っている。数学が苦手な読者であっても、数式が持つ意味や美しさを感覚的に理解できるよう工夫されており、学問と感情が対立するものではないことが自然に伝わってくる。

本作で特に印象的なのは、「記憶」と「関係性」の捉え方である。一般的には、記憶の継続こそが人間関係の基盤であると考えられがちだが、本作ではその前提が静かに問い直される。博士は毎回「私」や息子と初対面のように接するが、その態度には常に敬意と優しさがある。過去を共有できなくとも、相手を大切に思う姿勢があれば、関係は成立するのだという考え方が、物語全体を通して示されている。

さらに、本作は知性とは何かという問いも内包している。博士は日常生活では多くの制約を受けているが、数学の世界においては自由であり、その思考は非常に純粋である。記憶障害を「欠落」としてではなく、一つの在り方として描く姿勢は、読む者に価値観の転換を促す。簡潔で静かな文章の中に、人間の尊厳やつながりの本質が込められており、読み終えた後には、他者と向き合う姿勢について深く考えさせられた。穏やかでありながら、確かな強さを持つ作品である。

恩田陸著 『夜のピクニック』

 

 

知能情報学部 4年生 Bさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 夜のピクニック
著者 : 恩田陸

出版社:新潮社
出版年:2004

『夜のピクニック』は、高校生活最後の行事である「歩行祭」を舞台に、思春期の終わりに立つ若者たちの内面を静かに描き出した青春小説である。一晩かけて長距離を歩き続けるという特別な時間の中で、登場人物たちは日常では向き合うことを避けてきた感情や過去と、否応なく対峙することになる。本作には大きな事件や劇的な転換点はほとんど存在しないが、その分、心の微細な動きが丁寧に描かれており、読者は登場人物の感情に自然と寄り添うことになる。

主人公・甲田貴子は、家族に関する複雑な事情を胸の内に抱えながらも、それを周囲に語ることなく日々を過ごしている。歩行祭という非日常の空間は、彼女にとって過去と現在を見つめ直す装置として機能しており、歩き続ける身体の疲労とともに、心の緊張も徐々にほどけていく。夜の静けさ、眠気、友人との何気ない会話、沈黙の時間といった描写が積み重なることで、言葉にされない感情が浮かび上がってくる点が非常に印象的であった。

また、本作では「集団の中の個人」という視点も重要なテーマとなっている。多くの生徒が同じ道を歩いているにもかかわらず、それぞれが抱える悩みや不安は異なり、同じ時間を共有しながらも、心の内側は孤独である。その一方で、夜を通して歩き続けるという体験が、他者との距離を少しずつ縮め、互いの存在を肯定する力を持っていることが描かれている。特別な言葉や行動がなくとも、同じ時間と空間を共有すること自体が、人を支える行為になり得るのだと感じた。

本作を読み終えて強く印象に残ったのは、成長とは何かという問いである。登場人物たちは一夜にして別人のように変わるわけではないが、歩行祭を終えた後、確実に「前とは違う自分」として日常へ戻っていく。その変化は非常にささやかだが、だからこそ現実的であり、読者自身の経験とも重なりやすい。夜を越えて朝を迎えるという構造は、過去から未来へ踏み出す象徴でもあり、静かな希望を感じさせる。青春の一瞬の輝きと、その背後にある複雑な感情を誠実に描いた作品である。

住野よる著 『青くて痛くて脆い』

 

 

知能情報学部 4年生 Hさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 青くて痛くて脆い
著者 : 住野よる

出版社:KADOKAWA
出版年:2018

私たちは学生生活の中で、「自分だけの居場所」や「分かり合える仲間」を強く求める時期を経験する。周囲とうまく馴染めず、理想ばかりが先行してしまうことも少なくない。住野よるの『青くて痛くて脆い』は、そうした若さ特有の不安定さや危うさを、決して美化することなく描き出した作品である。

物語は、大学生の主人公・田端楓が、かつて同じ理想を語り合った秋好寿乃と再会することから動き出す。二人は「モアイ」という小さなサークルを立ち上げ、世の中を良くしたいという純粋な思いを共有していた。しかし、その理想は次第に現実とのずれを生み、時間の経過とともに歪んでいく。現在の楓は大学生活にも人間関係にも満足できず、過去にしがみつきながら生きている。ある出来事をきっかけに、彼は過去の「モアイ」と向き合うことになり、自分自身の弱さや醜さを直視せざるを得なくなる。

本作の大きな魅力は、登場人物たちが決して理想的な存在として描かれていない点にある。正しさを語りながらも他人を見下し、自分の価値観を押し付け、傷つけてしまう姿は、決して他人事ではない。特に楓の内面描写は非常にリアルで、自己正当化を繰り返す思考や、他者への嫉妬や恐れが生々しく描かれている。読者は彼に共感しつつも、「これは自分自身の姿ではないか」と問いかけられるだろう。

また、タイトルにある「青くて」「痛くて」「脆い」という言葉は、登場人物たちの精神状態そのものを象徴している。若さゆえに理想を強く信じ、だからこそ簡単に傷つき、崩れてしまう。その過程が丁寧に描かれているからこそ、本作は青春小説でありながら、読後にほろ苦さを残す。

『青くて痛くて脆い』は、理想を持つことの尊さと同時に、その危険性や未熟さを突きつける物語である。読み終えた後、自分の過去の言動や、今の人間関係を静かに振り返りたくなるだろう。青春のきらめきよりも、その裏側にある痛みを知っている人にこそ、ぜひ手に取ってほしい一冊である。

柚月裕子著 『教誨』

 

 

知能情報学部 4年生 Hさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 教誨
著者 : 柚月裕子

出版社:小学館
出版年:2025

柚月裕子の『教誨(きょうかい)』は、死刑囚として刑の執行を受けた女性の心の内側を丹念に描き、人間の「罪」と向き合うことの意味を深く考えさせる長編犯罪小説である。単なるサスペンスとしての面白さにとどまらず、読後に静かな余韻を残す重厚なテーマが印象に残る作品だ。

物語は、遠縁の死刑囚・三原響子が執行によって死亡し、その遺骨と遺品の引受人に指名された吉沢香純とその母・静江のもとに連絡が入るところから始まる。響子は十年前に我が子を含む幼女二人を殺害したとされ、「毒親」「ネグレクト」と社会的に糾弾された人物だった。しかし香純の記憶する響子は、報道されたイメージとはどこか違っていた。響子が最期に遺した「約束は守ったよ、褒めて」という意味深な言葉を解き明かすため、香純は響子の教誨師であった下間将人住職の助けを借りながら、青森県の菩提寺へ向かう旅に踏み切る。そこから、彼女は事件の背景と真実に少しずつ迫っていく。

本作の魅力は、単純に事件の真相を追うミステリーとしての面白さだけではない。響子という人物像が、世間のレッテルや報道とは異なる多層的な側面を見せることで、読者は「罪」とは何か、人はどのように裁かれうるのかを問われる。響子の行為そのものは決して許されるものではないが、彼女を取り巻く環境や人間関係がどのように作用したのかを想像させ、事件の当事者と第三者という距離感を繊細に描き出している。響子の最期の言葉が示す真意を追いながら、香純の視点を通して私たち読者もまた、罪に対する固定観念を揺さぶられていく。

読み進めるうちに、事件の背景や登場人物の思いが丁寧に重なり合い、「正義」とは何かについての問いが静かに立ち上がる。死刑制度や社会的な裁きについての明確な結論は提示されないが、それこそがこの作品の強さでもある。『教誨』は、人間の深層を抉り出す文学的な犯罪小説であり、罪と向き合い、人を理解しようとする姿勢の重さを読者に突きつける一冊だろう。

ヴィクトル・ユゴー著 『レ・ミゼラブル』

 

 

文学部 1年生 Oさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : レ・ミゼラブル
著者 : ヴィクトル・ユゴー [著] ; 永山篤一訳
出版社:角川書店
出版年:2012

『レ・ミゼラブル』は19世紀前半のフランスを舞台とした歴史小説である。日本では過去に「あゝ無情」というタイトルで翻訳されており、そのタイトルならば聞いたことがあるという人もいるかもしれない。今回はそんな『レ・ミゼラブル』について、少しでも知ってもらうことが出来れば幸いである。

この物語は窃盗の罪を犯したジャン・ヴァルジャンが数十年間の服役を経て、出所するところから始まる。どこにも受け入れてもらえる場所は存在せず、各地を放浪する彼はディーニュにあるビアンヴニュ司教の屋敷を訪れる。司教はそんなヴァルジャンを心優しく受け入れて、一晩泊めることを快諾する。しかし長年の投獄からすっかり心が荒れていたヴァルジャンは、司教が大切にしていた銀の食器を盗み出してしまう。翌日、ヴァルジャンを連れてきた警官たちに対して、司教は「それは元々彼にあげる予定のものだった」と彼を釈放するように求める。さらに、釈放されたヴァルジャンに対して司教は残りの銀の食器、燭台を手渡し、彼にこれからは正直者であるように諭す。ヴァルジャンはそんな司教の振る舞いに感動し、心を入れ替えて生きていくことを誓うのである。

物語中には物事や社会の本質を突く言葉が数多く存在する。例えば窃盗の罪で捕まった当初、ヴァルジャンは「俺がこういった罪を犯したのは貧しさのためであり、そういった状況を許している無慈悲な人間社会に人を裁く権利はあるのか」と考える場面がある。ヴァルジャンは幼い頃に両親を亡くし、7人の子供を持つ姉の一家のもとで育った。しかし姉の夫が亡くなってからは、状況が変わってしまったため、このような盗みを犯したのだ。そこから私は、こういった過去を持つ彼を一概に悪とは言えるのだろうかと考えた。

本書には感動する場面も、また存在する。先ほど述べたヴァルジャンが改心するきっかけになった出来事もそうだ。巧みな表現で描かれた文が更にそういった感覚を助長させる。無情な社会の中でも、自分が正しいと思うことを貫くヴァルジャンの姿は、見ていてとても考えさせられる。いったい彼はどのような生涯を送るのか、実際に読んでみて、様々なことを感じて欲しい作品だ。