2-1. 学生オススメ」カテゴリーアーカイブ

大山淳子著 『あずかりやさん 桐島くんの青春』

 

 

文学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : あずかりやさん 桐島くんの青春
著者 : 大山淳子著
出版社:ポプラ社
出版年:2018年

「一日百円で、なんでもお預かりします」という不思議なお店「あずかりや」に、物を預けに来る人や、預けられた物を主人公とした短いお話が5つ収録されています。どのお話にもやさしい雰囲気があり、少し切なくなる場面があっても、ほのぼのと読むことができます。

とくに魅力に感じるのは、預けられた物視点で語られるお話があるところです。普段は想像もしない物視点の語りがユニークで面白いです。その面白さは、自分が使っている物たちも何か考えているかもしれない、そうだとしたら何を考えているのだろうと想像してしまうほどで、本を閉じた後も楽しい気持ちが続きます。

本書では、文机とオルゴールを主人公としたお話があります。物だからか、どちらも語り口調がアニメや漫画のキャラクターのように少しコミカルで、読んでいてかわいらしく、愛着がわきます。また、元の持ち主を大切に思う姿がけなげで、きっと用意されているであろうハッピーエンドを早く読みたくなり、ページをめくる手が止まりませんでした。

この2つの中でも私はオルゴールが主人公のお話「夢見心地」がお気に入りです。120年前に作られたオルゴールが、自身を作り、そして大切にしてくれた職人に手放されたことへのショックと疑問をもちながらも、次々に変わる持ち主のもとで、懸命に自身の役目である音楽を奏でることに励む姿が描かれています。そして最後には、自分が持ち主たちによって愛されていたことや自身を手放した職人の意図に気づき、自分のやりたいことを見つけるお話です。オルゴールの言葉や生き方からは、過去や未来を糧にしながら今を誠実に生きる大切さが学べるように思います。

5つの短いお話は、それぞれで完結するので、読書の時間が取りにくいときでも、読みやすいと思います。一方で、他のお話とのつながりを少し感じるような記述もあるので、それを見つけて、にやりとするのも楽しいです。

温かいお話ばかりなので、どなたにでも楽しんでいただける一冊だと思います。

宮口幸治著 『歪んだ幸せを求める人たち』

 

 

文学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 歪んだ幸せを求める人たち
著者 : 宮口幸治著
出版社:新潮社
出版年:2024年

「人生を悲観し、自殺しようと思った。しかし、自分を大切にしてくれている祖母を思い出し、自分が死ねば祖母は悲しむだろうと思った。だから、祖母が悲しまないで済むように祖母を先に死なせてあげようと思った。」

「仕事終わりに雨が降っていたので、会社の入り口の傘立てで、置いてあるはずの自分の傘を探した。しかし、見つからなかった。誰かに盗まれたと思い、犯人の心当たりとして何人かが思い浮かんだ。途中で自分の机の近くに傘を置いたことを思い出したが、犯人候補として思い浮かんだ人物などへの怒りを強く感じていたので、傘を取りに戻るのも面倒だと感じ、他人の傘を黙って使っても問題ないと思った。」

この2つのお話を読んで、あなたはどう思いましたか。両者とも悪いことだけれども、後者の気持ちはわからなくもない、前者の気持ちは理解しがたいと思ったかもしれません。そして、後者は身近な、前者は自分とは関係のないお話のように思ったかもしれません。

しかし、著者は「歪んだ幸せを求めている」点で両者は共通していると考えています。歪んだ幸せとは、自身の幸せを求めすぎるあまりに他人を巻き込み、不幸にしてしまう幸せのことです。そして、本書では歪んだ幸せを引き起こす5つの歪みである「怒りの歪み」、「嫉妬の歪み」、「自己愛の歪み」、「所有欲の歪み」、「判断の歪み」について紹介しています。

本書を読んで、私は、非行は人の不幸を願って起こされるものではなく、自身の幸せを求めすぎて起こされるものだと認識が変わりました。そして、非行少年たちと同じように「幸せになりたい」と思う私も、歪んだ幸せを求めてしまうこととは無縁ではないと感じました。また、前述した2つ目のお話のように、歪んだ幸せを求めた行動は身近にもあります。

そのため、歪んだ幸せの原因となる5つの歪みについて知り、自身の行動を見直したり、5つの歪みと向き合ったりすることで、適切な行動ができるようにしたいと思いました。また、本書はその助けとなる本だと思いました。

熊代亨著 『「若者」をやめて、「大人」を始める : 「成熟困難時代」をどう生きるか?』

 

 

文学部 1年生 Nさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 「若者」をやめて、「大人」を始める : 「成熟困難時代」をどう生きるか?
著者 : 熊代亨著
出版社:イースト・プレス
出版年:2018年

この本は異なる世代との接し方について学べる本です。今の時代、ネットを通じて様々な世代と繋がれるといっても、それは共通の趣味を持っていたり、価値観が似通っていたりするという共通点があるからです。では、現実社会でかかわりたくなくともかかわらざるを得ない、自分とは違う世代の人たち、それが自分より年上の世代かどうかを問わず、仕事であるからどうしてもかかわらないといけない場合、どのように接すればよいのかということを学べる本です。

この本は題名の通り、今、若者である学生や自分のことをまだ若い、大人になり切れていないと思っている人たち向けに書いてあります。そのため、まず、「大人とは何か」というところからスタートします。
この本の面白いところは主語、読む対象が若者だけに限定されていないところにあります。そのため、ほかの章では、若者の持つアドバンテージのみがフォーカスされた結果、いつまでも「若者」のマインドを持った中年が多くいる、またその問題点を述べ、若者ではなく中年の視点からも述べているのです。これには私も驚きました。確かに、最近よい、とされている上司は同じ目線になって考えてくれるという点が入っていますが、それになろうとして年甲斐もなく、若者のような流行を追い求めたり、言葉遣いを若者風にしたりする中年は多くいます。しかし、心身共に壊してしまう可能性があると筆者は述べているのです。体力が衰えているのに若者のように振舞えば、体を壊してしまうし、今までの経験が積み重なっているにも関わらず、何も知らないかのようにすべてを新鮮に感じることはできません。それを追い求めすぎると心をも壊してしまう原因になります。

では、中年は何も起きない平凡な人生をずっと過ごすしかないのでしょうか?そんなことはありません。「大人」には「大人」の生き方があるのです。若い世代には苦し紛れにしか聞こえないかもしれませんが本当にある、ということを中年の筆者が体験をもって教えてくれます。また、これを通して若い世代に向けて、絶対に嫌な大人に会う時もあるがその時はどうすればよいのかというようなことも教えてくれます。

このように、この本では異なる世代との接し方を様々な視点から筆者の経験も含めて書いてあるので、読み終わるとなんだか誰かの人生を経験してきたかのような気持ちにさせてくれます。「大人」になるとはどういうことなのか?いつも疑問に思っていたことが何となくわかるようになる1冊です。

坂木司著 『和菓子のアン』

 

 

文学部 1年生 Nさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 和菓子のアン
著者 : 坂木司著
出版社:光文社
出版年:2012年

こんなにも自分と同じような心境の主人公を見たのは初めてだった。

高校を卒業後、特にやりたいこともなく、かといって大学に行くほど勉強の熱意もなかった主人公の梅本杏子は、ふと立ち寄った和菓子屋でバイトをはじめる。そこで様々なお客様に出会い、自身の知らなかった新たな世界を知っていく。そして、日々変わらないように見える日常の中にあるミステリ。その推理が事実かどうかはわからない。ただの想像かもしれない。しかし、そう代り映えのしないように感じる日常が一気に映画のようになったかのような一日になる。日常のほんの少しの変化に目を止めることが出来るようになる作品だ。

主人公の務める和菓子屋には美人だけれども、休憩の合間に株をチェックするほどの投資、ギャンブル大好きな店長をはじめ、好青年だけれど乙女な感性をもつ職人の橘さん、美人で頼りになるけれど元ヤンの香りを隠せない同じバイトの桜井さんなど、個性豊かなメンツであふれている。こんな同僚に囲まれて私も仕事がしたい、と思ってもらえる、同世代の大学生がみても面白い作品でもある。

私自身、この小説を初めて読んだ時は中学生だった。その時はただの日常ミステリとして読んでいた。高校生の時にも読み返したが、その時は受験という道ではなく、このような生き方もあるのかと自身の選択肢が広げられた。そして、大学生になって読んでみると、自分とは違う道を選んだからこその主人公の不安や、逆に、私が得られなかった感覚、関係を得ている主人公をみて羨ましく思ったり。社会人になってから読み返すとまた違った見方が出来るのだろうか。

このように、まだその年代になっていなくても、もちろん主人公より年上であっても、それぞれの視点から、今まさに社会に飛び込もうとしている女の子の考えていること、不安、希望を生き生きと見ることができ、いつ読んでも面白い作品である。この小説を読み終えた後には、お菓子を食べるたびに、実はこのお菓子が自分の手元に来るまでに何かストーリーがあるかもしれない、とワクワクするようになっているだろう。

秋田みやび著 『ぼんくら陰陽師の鬼嫁』

 

 

マネジメント創造学部 4年生 塩谷 瑠緋さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : ぼんくら陰陽師の鬼嫁
著者 : 秋田みやび著
出版社:KADOKAWA
出版年:2016

当時大学生だった野崎芹は、住居であったアパートを火事によって失ってしまった。彼女はカフェでのあるバイトで多少のお金は稼いでいたものの、住む場所を無くし、貯金も底をつき、経済的に困窮していた。公園で途方に暮れていた芹の目の前に突如、“皇臥”と名乗る男性と、着物を着た幼い女の子、“護里”が現れる。行き場所がない芹を見かね、皇臥は“衣食住を与える代わりに自分の妻になるのはどうか”という交換条件を提示し、芹は飛びつくようにその提案を受け入れる。しかしその後、芹は、嫁ぎ先が北衛門という代々受け継がれる陰陽師一家だったことを知り、またそれに仕える亀の式神が実は公園で出会った女の子だったことを知る。

北衛門家の妻として暮らし始めた芹だったが、ある日、芹の知り合いのペットのケージにお札を貼られるという事件が起きる。原因が分からないままその後次々と不可解な事件が起きるが、だいだい受け継がれている陰陽師の知識と式神の力を使って何とか切り抜ける。

私がこの本をお勧めする理由は、芹との夫婦としての距離がシーンを通して徐々に縮まっていることを感じることができるからだ。

初めは芹も皇臥もどこかよそよそしく、お互いにまだ相手のことを信じ切れていない部分があり、事件の真相を調査する中でぎくしゃくする部分もあったが、次第に夫婦関係について真剣に考えるようになり、いつしかお互いに頼り合えるような関係にまで発展する。また、最初は陰陽師という仕事について不信感を抱いていた芹だったが、次々と起こる不可解な事件に対し懸命に対処にあたろうとする皇臥を見て、協力的になっていく姿も個人的に一番気に入っている。

夫婦としてお互いに相手のことを信頼し、また家族である2匹の式神との関係や隣人との関係通し、夫婦とは何なのか、家族とは何なのかについて考えさせられる、そんな物語になっている。

家族関係や友人関係で悩んでいる、そんな時に読んでみてほしい小説である。

日本マクドナルド著 『日本マクドナルド「挑戦と変革」の経営 : “スマイル”と共に歩んだ50年』

 

 

知能情報学部 4年生 Mさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 日本マクドナルド「挑戦と変革」の経営 : “スマイル”と共に歩んだ50年
著者 : 日本マクドナルド著
出版社:東洋経済新報社
出版年:2022年

マクドナルドは(出版年当時)世界100以上の国と地域に約4万店を展開しており、目にしたことが一度はあるでしょう。よく食べる人にとっては当たり前かもしれないですが、そんなマクドナルドも日本初上陸時には馴染みのない食べ物であり、定着できるかの不安が経営側にはありました。本書は成功や失敗、挑戦や変革によって、日本マクドナルドが今日に至るまでどのような歴史を辿ったかを追う内容となります。

実際に本書でその歴史を読んでいても、一筋縄ではいかない挑戦の連続でした。社員教育の徹底化や食材の調達方法であったり、初日の売り上げは予想の4割程度、なかなか増えない日本人の来客数であったりなど。またドライブスルー導入やレジ小型化の推進、日本人に合わせた商品の開発など、時代とともにニーズも変化することに対応し成功を続けた事例がある一方、食品の品質と安全問題、他の要因による成長の停滞、これに伴って従業員の士気が低下する問題もありました。このときマクドナルドが行った行動が、お客様のところに行き、直接声を聴くということです。当時のCEOが日本で実際に意見交換をし、その声を反映させたことは当時ニュースにもなり、非常に関心が集まったことだと考えられます。その後、お客様の声を聴き、応えるためのアプリ「KODO」も開発され、より広く声を集めることでマクドナルドの店舗体験は改善され、今日のようなマクドナルドの雰囲気が出来あがっていったと考えられます。

その後もマクドナルドのお客様のニーズに合った取り組みは止まることはなく、失敗以上に成功体験を更に磨き上げサービスとして提供する姿勢を続けたからこそ、我々が受けるサービスがあると考えます。マクドナルドの挑戦の歴史を知ってもらうことで、サービスの根幹に当たる部分へ思いを馳せて食事を楽しんでもらうためにも、本書はマクドナルドで働いたことのある人、ない人に関わらず、すべての人に読んでもらいたいと思える内容でした。