[藤棚ONLINE]理工学部・須佐 元 先生推薦『A Universe from Nothing』

図書館報『藤棚ONLINE』
理工学部・須佐 元先生 推薦

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんはこれまでも沢山の本を読んで来られたと思いますが、これからの四年間は、たっぷりと読書の時間が取れる人生の中でとても貴重な時間です。読書はまずは楽しみであり、同時に知識を得るための一つの方法です。ジャンルにこだわらず読みたい本をできるだけ沢山読んでください。そこで得た知識は糧となり、また身についた読書習慣は今後の長い人生に、人工的ではない美しい色合いと深みを与えてくれるはずです。みなさんの選書の助けとなるかどうかわかりませんが、私が最近気に入った本を紹介しておきます。

「A Universe from Nothing (邦題:宇宙が始まる前に何があったのか?)」文藝春秋

ローレンス・クラウス著 青木薫訳

 本書は素粒子論から宇宙論の研究に進んだ著者が、宇宙に対する現在の理解の先端までを独特の語り口で述べたものです。なかなか難解な部分もありますが、前半は観測的・理論的にかなりの程度確立されてきたビッグバン宇宙論についての記述が中心です。後半では理論的に「ユニバース」ではなく「マルチバース」ではないかと考えられている先端の宇宙観について紙面が割かれています。全編通して著者は科学的思考法とはなにかについてしつこく語りかけてきます。無からの宇宙創生の物語はしばしば宗教的・哲学的論争を引き起こすので、著者はそのような見方を徹底的に排除する立場に立って論を進めて行きます。一方的に著者の主張を受け入れる必要はありませんが、物事を考えるときの真摯な科学的思考法から多くを学ぶことができると思います。われこそはと思う人は手にとって見てください。

 以上推薦しましたが、とにかくそれぞれがそれぞれの興味の赴くままに本を読んで下さい。