投稿者「図書館」のアーカイブ

熊本県庁チームくまモン著 『くまモンの秘密 : 地方公務員集団が起こしたサプライズ』

 

 

フロンティアサイエンス学部 4年生 島村 大地さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : くまモンの秘密 : 地方公務員集団が起こしたサプライズ
著者 : 熊本県庁チームくまモン
出版社:幻冬舎
出版年:2013年

熊本は九州地方有数の都市で、水前寺公園や熊本城などがあり、その間を市電が縫うように走っている。主な名産品としては、からし蓮根や馬刺しがあり、居酒屋で食べたりお土産屋で購入したりすることができる。そんな熊本にはある“ゆるキャラ”がいる。それがくまモンである。

くまモンは2010年春に提案されて、そのPR活動は熊本県内にとどまらず、関西圏にも展開された。その理由として、当時九州新幹線が2011年に開業することから、大阪と熊本が陸路で約2時間59分で結ばれることが決まっていた。そのことから、その接続先である関西圏、特に大阪近辺で長期的なPR活動が展開されたのである。

しかし、熊本のゆるキャラではあるものの、大阪で長く活動したため、「大阪のゆるキャラだと誤解されるのではないか」であったり、「そもそも熊本にクマは生息していない」といった指摘が寄せられるなど、逆風にさらされる場面も少なくなかった。それでも、くまモンはめげることなく、大阪にてくまモンの名が入った名刺配りであったり、各方面へ出張に行ったりと徐々に活動の幅を広げ、多くの人に認知されていった。当時、活動内容としては扇町公園や通天閣など関西の観光名所をメインにPR活動を展開していたが、中には関西を超えて岡山・広島の県知事を訪問するなど活動の幅を広げていった。加えて、企業との連携による商品開発にも取り組み、従来の講演会中心の活動にとどまらず、様々な商品のパッケージキャラクターを務めることで、くまモンの名前はますます浸透していった。

これらの活動もあり、ゆるキャラの日本一を決める「ゆるキャラグランプリ2011」では見事に一位を獲得した。またそれ以降、くまモンは熊本を象徴する存在として定着し、県のイメージ向上にも大きく貢献したといえる。そんなくまモンの活動実績がこの本書にこと細やかに載っており、チームくまモンの奮闘の様子が特に現れていると感じた。恐らく、当時は、ゆるキャラが経済効果や地域活性化に直結するという明確な成功例が少なかったにもかかわらず、”けばって”(熊本弁で「頑張って」の意)果敢に挑戦していく姿勢はとても心うたれた。是非読む際は、現にくまモンというゆるキャラの印象だけでなく、そこに込められた情熱や地域への思いも感じながら読んで欲しいと感じた。

ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング, アンナ・ロスリング・ロンランド著 『Factfulness : 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

 

 

知能情報学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : Factfulness : 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
著者 : ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング, アンナ・ロスリング・ロンランド著 ; 上杉周作, 関美和訳
出版社:日経BP社
出版年:2019年

私たちは世界を正しく認識しているだろうか。「世界はどんどん悪くなっている」「貧富の格差は拡大し続けている」といった感覚を漠然と抱いてはいないだろうか。本書『FACTFULNESS』は、医師であり公衆衛生学者でもあったハンス・ロスリング氏が、最新の統計データを用いて私たちの持つ「思い込み」を解きほぐし、事実(ファクト)に基づいて世界を見るための習慣を説いた一冊である。

本書の冒頭にある、世界の貧困や教育、環境に関する13問のクイズは衝撃的だ。多くの知識人や専門家が、チンパンジーがランダムに選ぶ正解率よりも低いスコアしか出せないという事実は、私たちが古い知識やバイアスにいかに支配されているかを浮き彫りにする。著者は、人間には「分断本能」や「ネガティブ本能」など、物事をドラマチックに、あるいは悲観的に捉えてしまう10の本能があると指摘する。特に「ネガティブ本能」は、メディアが報道するセンセーショナルな悪いニュースばかりに目が向き、静かに進行している「良い変化」を見落とさせる原因となっている。

図書館を利用して情報を探す際、私たちは数多くの資料やデータに触れることになる。しかし、本書が警鐘を鳴らすように、データそのものを見る前に私たちの「目(認識のレンズ)」が歪んでいては、正しい結論にはたどり着けない。本書は単なる楽観主義の書ではない。「世界は悪い状態にあるが、同時によくなっている」という著者の言葉通り、課題と進歩の両方を客観的な数値で捉えることこそが、真の課題解決への第一歩であることを教えてくれる。

これから卒業論文やレポートに取り組むにあたり、文献に書かれていることやネット上の情報を鵜呑みにせず、「そのデータは最新か」「比較対象は適切か」といったクリティカルな視点を持つことは不可欠だ。本書は、膨大な情報の海の中で溺れることなく、事実という足場を固めて世界と向き合うための強力な武器となるだろう。これからのグローバル社会を生きていく上で、自身の世界観をアップデートするために必読の一冊である。

外山滋比古著 『思考の整理学』

 

 

知能情報学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 思考の整理学
著者 : 外山滋比古
出版社:筑摩書房
出版年:1986年

本書は1986年の刊行以来、長きにわたり多くの読者に読み継がれている「思考」に関するバイブルである。著者の外山滋比古氏は英文学者でありながら、その枠を超えて「自ら考えること」の本質を平易な言葉で説いている。情報化社会と言われる現代において、AIや検索エンジンを使えば知識は容易に手に入る。しかし、それらをどのように組み合わせ、新しい価値を生み出すかという「知的な自立」については、今なお本書が指し示す指針が色褪せることはない。

本書の中で最も印象的であり、かつ大学生である我々が深く受け止めるべき比喩が「グライダー」と「飛行機」の話だ。グライダーは優雅に飛んでいるように見えても、自力で飛び立つことはできず、常に牽引車を必要とする。著者は、学校教育における受動的な学習者をこのグライダーに例えた。一方で、自らのエンジンで推進力を得て、自由に空を飛ぶのが飛行機である。大学という場は、教えられた知識をただ記憶する「グライダー人間」から、自ら問いを立て解決策を探る「飛行機人間」へと脱皮するための滑走路でなければならない。私自身、講義のレジュメを覚えることに終始していた学習姿勢を、本書によって鋭く指摘されたように感じた。

また、本書は精神論だけでなく、具体的な思考の技術も提示している。「寝させる」という章では、思いついたアイデアをすぐに形にしようとせず、一度時間をおいて発酵させることの重要性が説かれている。情報過多な現代において、私たちは即時的なレスポンスや成果を求めがちだ。しかし、真に創造的な思考とは、雑多な情報を脳内で熟成させ、無意識下で整理された時にふと訪れるセレンディピティ(予期せぬ発見)にあるのだという指摘は、レポート作成や研究活動に行き詰まった際の大きな救いとなるだろう。

本書のタイトルは『思考の整理学』だが、その実は「整理」にとどまらず「創造」へと至るための手引書である。これからの大学生活において、図書館という知の集積地を活用し、未知の領域へ自力で飛行するための羅針盤として、すべての学生が一読すべき一冊であると確信する。

村上春樹著 『ノルウェイの森』

 

 

知能情報学部 4年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : ノルウェイの森
著者 : 村上春樹
出版社:講談社
出版年:1987年

『ノルウェイの森』は、主人公ワタナベが三十代になった現在から、大学時代を振り返る形で語ら
れる物語である。本作では、青春のきらめきよりも、むしろ若者が抱える孤独や不安、喪失感とい
った影の部分が丁寧に描かれており、読み進めるほどに静かな重みを感じさせる作品だと感じた。

物語の大きなテーマの一つは「喪失」である。親友キズキの死は、主人公だけでなく直子の人生に
も深い影を落とす。直子は過去の出来事から立ち直れず、心の不安定さを抱えたまま生きている。
その姿を通して、死は一瞬の出来事であっても、残された人の人生に長く影響を与え続けるのだと
強く感じた。一方で主人公は、直子を大切に思いながらも、完全に理解することができず、その距
離感に苦しむ。

対照的に描かれるのが緑の存在である。緑は現実的で率直な性格を持ち、過去に縛られすぎること
なく前を向いて生きている。その姿は、主人公にとって救いであると同時に、自分がどの方向に進
むべきかを考えさせる存在でもあると感じた。直子と緑という二人の女性は、単なる恋愛対象では
なく、「過去に向き合う生き方」と「現在を生きる姿勢」を象徴しているように思えた。

村上春樹の文章は非常に平易で読みやすいが、その中に複雑な感情が静かに織り込まれている。日
常の何気ない描写や会話が積み重なることで、登場人物の心情が説明されすぎることなく伝わって
くる点が印象的だった。読者は与えられた情報から自分なりに意味を考えることができ、その余白
が作品に深みを与えている。

本作を通して強く感じたのは、「人は誰かを完全に理解することはできない」という現実である。
相手を思いやる気持ちがあっても、その苦しみや孤独をすべて共有することはできない。それでも
人は他者と関わりながら生きていくしかないという姿勢が、物語全体を通して描かれていると感じ
た。

読み終えた後、明確な答えや救いが示されるわけではないが、自分自身の人間関係や孤独との向き
合い方について深く考えさせられた。静かでありながら長く心に残る作品であり、人生のある時期に読むことで、感じ方が変わっていく小説だと思う。

 

ドストエフスキー著 『罪と罰』

 

 

知能情報学部 4年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 罪と罰
著者 : ドストエフスキー著 ; 工藤精一郎訳
出版社:新潮社
出版年:1866年

『罪と罰』は、主人公ラスコーリニコフが殺人という重大な罪を犯した後、その精神がどのように崩れていくのかを中心に描いた長編小説である。本作は犯罪小説という枠を超え、人間の心理や倫理観を深く掘り下げた作品だと感じた。

主人公は、自分を「特別な存在」と考え、社会のためであれば罪も許されるという思想を持っている。その考えのもとで殺人を犯すが、行為の後、彼は想像以上の苦しみに襲われる。罪を合理的に正当化しようとする一方で、良心の呵責や恐怖から逃れることができず、精神的に追い詰められていく様子が非常に細かく描写されている点が印象的だった。

この作品で特に強く感じたのは、「罪は行為そのものよりも、その後の内面に深く残り続ける」ということである。主人公は警察に捕まる前から、すでに自分自身によって裁かれているように見えた。罰とは法律によって与えられるものだけではなく、自分の内面で背負い続ける苦しみそのものなのではないかと考えさせられた。

また、ソーニャをはじめとする周囲の人物の存在が、主人公の内面に大きな影響を与えている点も重要である。ソーニャは決して強い人物ではないが、他者を受け入れ、苦しみを分かち合おうとする姿勢を持っている。その存在によって、主人公は少しずつ孤立から抜け出し、自分の罪と向き合う覚悟を固めていく。この過程は、人が社会の中で生きるためには他者との関わりが不可欠であることを示していると感じた。

出版年は古いが、描かれているテーマは現代にも強く通じる。自分の正しさを過信し、他者を軽視する考え方は、現代社会でも見られる問題である。その意味で本作は、過去の物語ではなく、今を生きる私たちへの警告でもあると感じた。

読み進めるには集中力を要するが、その分、人間の弱さや矛盾、そして責任について深く考えさせられる作品であった。自分自身の価値観や倫理観を見つめ直すきっかけとなる、非常に重厚な一冊である。

原田マハ著 『本日は、お日柄もよく』

 

 

経営学部 1年生 射場 美雪さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 本日は、お日柄もよく
著者 : 原田マハ著
出版社:徳間書店
出版年:2013年

言葉が持つ力はとても強力である。たった1回のスピーチが人を大きく動かすことだってある。これは、そんな運命のスピーチに出会って人生を変えることになった主人公二ノ宮こと葉とそのスピーチを考えた久遠久美とのお話。

久美が話したスピーチに感動した主人公こと葉は久美に弟子入りし、スピーチを通じて人の心に響く言葉を考えるようになる。かなり衝撃的な出会いだが私が実際に聞いたとすればちょっとの間感動を引きずるくらい思いが伝わる日本語が美しいスピーチだった。この本の中にはそんな日本語がいくつも出てくる。

ところでコピーライターという職業を知っているだろうか。普段何気なく目にしているポスターやCMのキャッチフレーズを考えるお仕事である。あまり有名ではない職業だが広告においてとても重要な役割を果たしている。この企業といえばこのキャッチフレーズ、という有名なものを思い浮かべる人もいるだろう。弟子入りした後しばらくしてこと葉はコピーライターに携わることになる。広告では短いフレーズの中にどれだけ思いを込められるかが大切になってくる。じっくりと言葉ひとつひとつに向き合うことで見えてくる世界があるのかもしれないと思った。スピーチを書いたりコピーライターの仕事をすることを通して、主人公は言葉の持つ力やその奥深さの虜になっていく。そしてその職業によってこと葉にとっての運命の出会いも……。

この本の中にはスピーチをする時に使える10ヶ条が書かれている。人前で話すことに慣れてない人でもできそうなテクニックばかりである。とてもためになるのでぜひ読んで実践してみてほしい。実際に私はこのテクニックを使って、プレゼンが上手くなったねと言われた。

みなさんもぜひこの本で日本語の素晴らしさにもう一度気づいて欲しい。
読み終わった後には人前でのスピーチやプレゼンがちょっとだけ上手くなっているかもしれない。