2.おすすめの本」カテゴリーアーカイブ

伊藤亜紗 著『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

書名 : 目の見えない人は世界をどう見ているのか(光文社新書)
著者 : 伊藤亜紗 著
出版社:光文社
出版年:2015年

甲南大学では、人間科学、知能情報学、生物学を専攻している方と、これらの分野に興味のある方におすすめです。つまり、福祉というより「認知」に関する本です。
感覚の一つを失った「人間」を知ることで、新しい視点から人間を知ることができる1冊です。

本書の中に「リハビリと進化は似ている」という節があります。(p.112-)著者によると、「事故や病気によって何らかの器官を失うことは、その人の体に、「進化」にも似た根本的な作り直しを要求」することが、環境によって身体を作り替えてきた生物の進化に似ている、とのこと。
確かに、パラリンピック等で活躍されている方をみていると、人間が新しい可能性を掴んで、新たな地平を切り開いているように思えます。
それは、何かを失わないとできないことなのか、一度考えてみませんか。

鈴木与平著『地方を結び、人々を結ぶリージョナルジェット 』

 

 

経営学部  2年生 卜田 真輝さんからのおすすめ本です。

書名 : 地方を結び、人々を結ぶリージョナルジェット
著者 : 鈴木与平 著
出版社:ダイヤモンド社
出版年:2014年

甲南大学に最も近い空港である神戸空港に近年就航したフジドリームエアラインズ(以下、FDA)の社長がお書きになった本です。この本では、航空ビジネスの基礎から、現在の日本の航空業界、日本社会が抱ええる課題、そしてそれらを解決するために生まれたFDAの経営理念や就航までの苦労、会社の未来について記されています。
私はこの航空会社が「地方空港の救世主」と言われ話題を呼んでいた事から注目していました。本を読み進めていくと、東京一極集中が叫ばれる中、「地方同士の交流を深める事が日本を再び盛り上げるきっかけになるのではないか」という著者である鈴木与平氏の熱意やこの会社の理念には非常に共感させられました。
しかし、新型コロナウイルスが猛威を振るい人と人との交流が制限される中で、著者が大切に思われている「地方と地方の人々の交流」をどう今の生活スタイルに合わせ、維持、発展させていくのか、という疑問が湧きました。
この航空会社を利用した際には、この本の内容を思い起こしながら、また、感じた疑問について自分なりの考えを突き詰めてみたいと思います。

皆様もぜひご一読ください。

村上 龍 著『コインロッカー・ベイビーズ』

法学部  1年生  Oさんからのおすすめ本です。

書名 : コインロッカー・ベイビーズ
著者 : 村上 龍 著
出版社:講談社
出版年:2009年

 みなさんは「コインロッカーベイビー」という社会現象を知っていますか。

 コインロッカーベイビーとは、鉄道駅などに設置されているコインロッカーに遺棄された新生児のことです。コインロッカーに新生児を入れることには、遺棄した側の匿名性が保持されやすい、異変に気づいても第三者が中を確認することは難しい、そもそもコインロッカーに人間を入れることが想定外であるという特徴があります。

 そのため、1971年にコインロッカーで乳幼児の死体が発見されて以来この問題はどんどん深刻化し、1973年には大都市のターミナル駅を中心に46件の遺棄事件が発覚しました。この問題を題材にして書かれたのが、『コインロッカー・ベイビーズ』です。

 この本の主人公のキクとハシは、生まれてすぐコインロッカーに入れられます。コインロッカーに入れられた子どもは殺されてから捨てられている場合もありますし、生きたまま入れられても亡くなってしまうことが多いのですが、キクとハシは奇跡的に助かりました。

 それから2人は乳児院で育てられますが、行動から病気かもしれない、ということで精神科医に連れていかれました。そこで乳児院のシスターたちは精神医から、生後わずか数十時間でコインロッカーの中で死に直面し覚えたであろう無意識下の恐怖、自分の肉体がそれに抵抗して打ち勝ったこと、2人を生き延びさせた強大なエネルギーの3つが脳のどこかにセットされており、そのエネルギーが自分で制御できないほど強くなっている、ということを告げられます。そして、2人はそのままでは正常な成長が出来ないので、そのエネルギーを眠らせる治療をすることになります。その治療法が、胎児が母親の体内で聞く心臓音を聞かせて2人をもう一度母親の体内にいた状態(強大なエネルギーを持つ前)に戻す、というものでした。

 治療は順調に終わり、シスターたちは最後に精神医から、変化した(変化をもたらした?)のが自分たちであることや、心臓の音を聞いて治療をしたことは人には教えてはいけないと言われました。

 乳児院で過ごしていたキクとハシは小学校入学の一年前に養子縁組が決まり、それからは里親に育てられました。2人が中学生になってしばらく経ったある日、あることがきっかけで、ハシが幼い頃病院で聞いた心臓の音をもう一度聞いてしまいます。それからというもの、ハシはあの日病院で聞いた音が分かるまで学校に行かないと言いだし、家にこもり、心臓の音を探すためにテレビから流れる音をずっと聞いていました。そしてついには理由も言わず東京へ家出をしてしまいます。ですがキクにはハシの行動が、母親を探すためだとすぐに分かりました。そんなハシを追うため、キクも東京に行きます。

 ここからコインロッカーで生まれた2人の人生は大きく変わり、壮絶な人生を送ることになります。

 私たちも、思い通りにならない事がたくさんあり、誰もが見えないコインロッカーに閉じ込められているかもしれません。そんな時にこれを読むと、閉ざされたコインロッカーから1歩踏み出すヒントをもらえるかもしれません。

 ハシは自分の生みの親に出会えるのか、キクはハシを追って東京に行き何をするのか、2人の破壊劇を見届けてみませんか。

横山 泰行 著『「のび太」という生きかた』

 

法学部  1年生  Kさんからのおすすめ本です。

書名 : 「のび太」という生きかた
著者 : 横山 泰行 著
出版社:アスコム
出版年:2014年

 国民的アニメの「ドラえもん」。誰でも1度は見たり聞いたりしたことがあると思います。

 ドラえもんに登場するのび太に着眼点をおいた『「のび太」という生きかた』という本をご紹介します。
 のび太にどのようなイメージを持っていますか?運動や勉強ができない、いつもお母さんや先生に怒られる、ジャイアンやスネ夫にはいつもいじめられている。それでも、遊ぶ時にはいつも大切な友達としてジャイアンとスネ夫を誘うし、母や先生ものび太を1度も見捨てたことはありません。

 この本にはのび太が人生の重要な節目ごとに着実に夢を叶え、「負け犬のび太」から「勝ち組のび太」になった話がたくさん書かれています。

 1つ例を挙げてみます。皆さんは約束事をうっかり忘れて破ったことはありませんか?
 のび太はうっかり約束を破ってしまいますが、そのことを反省して直ぐに対策を考え実行し、「何とかしよう」としています。そのように、もし失敗してもその結果から自分のやり方を考え反省し、挑戦すれば良いのです。

 ぜひ読んでみてください。

ダニエル・キイス 著『アルジャーノンに花束を』

 

法学部  1年生   鶴巻 茜さんからのおすすめ本です。

書名 : アルジャーノンに花束を
著者 : ダニエル・キイス 著
出版社:早川書房
出版年:2015年

 皆さんは、賢くなれる、知能を上げることができる手術を受けられるとしたら、受けたいですか?

 ダニエル・キイスによる『アルジャーノンに花束を』の主人公であるチャーリーは、ニューヨークのベーカリーで働いている知的障がいのある32歳の男性です。チャーリーは優しい心の持ち主で、周りから親しまれていました。周りの従業員たちはなぜかいつも笑っていて、その笑顔を見てチャーリーは自分も幸せな日々を送っていました。

 そのような中でチャーリーは医師と出会い、知的指数を上げる手術を受ける機会を得ます。先にその手術を受けて賢くなっていくアルジャーノンという一匹のネズミを見て、自分もアルジャーノンのように賢くなりたいと願い、手術を受けることにしました。日に日にチャーリーの知能は上がっていき、側にいた教授の知能をも超えるまでになりました。しかし、知能が高くなっていくことと引き換えに、手術を受ける前の頃には気づかなかった多くのことに気付いてしまい、絶望してしまいます。

 この本を読んで結末だけを見ると、客観的に考えて、チャーリーは手術を受けたことを後悔したんじゃないかと思う人もいるかもしれません。しかし、チャーリー自身は「後悔はしていない」と言いきります。

 チャーリーは幸せだったのでしょうか。自分にとっての幸せって何なのか。世間における人の存在意義とは何なのかということを考えさせられます。

 幸せを感じるためには「外に出たくないな」とか「課題をしたくないな」などの嫌なこと、つまり負の感情も必要であると思います。負の感情があるからこそ、美味しいものを食べたり、自分の好きなことをしたりして幸せを感じることができると思います。つまり、幸せの定義は人それぞれです。

 誰もがチャーリーになったような気持ちで飽きずに読むことができる本です。この本は「結果報告」という形で、チャーリーによって書かれている形式をとっています。チャーリーの感情や手術の効果が読み取れ、楽しむことができます。そして、チャーリーの優しさは、最初から最後の一文まで変わらないというところに感動します。

 チャーリーが絶望してしまった多くのこととは一体何なのか、ぜひ読んで確かめてみてください。

七月 隆文 著 『ぼくは明日、昨日のきみとデートする 』

 

法学部  1年生   建内 桃さんからのおすすめ本です。

書名 : ぼくは明日、昨日のきみとデートする
著者 : 七月 隆文 著
出版社:宝島社
出版年:2014年

 『ぼくはは明日、昨日のきみとデートする』を紹介します。
 この本は実写化しているので知っている人も多いと思います。

 私も映画を見て、もう一度ゆっくりこの物語を読みたいと思い小説を読みました。

 本のタイトルや表紙からは恋愛小説を思い浮かべると思います。もちろん恋愛小説なのですが、それだけではなくSFの要素も入っている物語です。

 美術大学に通う恋愛経験のないたかとしくんが電車で高嶺の花のえみちゃんに一目惚れし、普段だったら女の子と話すこともないのですが、えみちゃんに惹かれ、声を掛ける場面からはじまります。

 散歩に誘い、帰り際にたかとしくんがえみちゃんに「またあえる?」と聞きます。その時えみちゃんは泣き出します。その時はなぜえみちゃんが涙したのか、たかとしくんにも、読者である私にもわかりませんでした。その後たかとしくんはえみちゃんと交際することになるのですが、えみちゃんはことあるごとに涙を流します。

 ここまでの話だと普通の恋愛のように思えますが、えみちゃんには大きな秘密があります。それがえみちゃんが事あるごとに涙する理由です。
 この秘密をたかとしくんが知った時、物語は切なく大きく転換します。

 この物語はぜひ、2回読んで下さい。
 1回目に読んだ時と、えみちゃんの秘密を知った上で読んだ2回目では、180度違う物語のように感じます。1回目は純粋な恋愛物語、2回目はえみちゃんの行動全てが切なく思えてきます。

 もっとも印象に残っている場面は、冒頭の、散歩をして別れる場面です。1回目はいい感じのカップルのデートのように思えますが、2回目に読んだ時には切なく、残酷に感じると思います。物語の始まりなのにどうして切ないか疑問に思うと思いますが、2回読むことでその理由もわかります。

   最後に私のお気に入りのフレーズを紹介します。
 
   「僕たちはすれ違っていない。一つの輪になって繋がっているんだ」

   この本を読んだ後なら素敵で心に響くフレーズになると思います。
   是非読んでみてください。