信田さよ子『カウンセリングで何ができるか』

  文学部 4年生 水口正義さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:カウンセリングで何ができるか
著者:信田さよ子
出版社:大月書店
出版年:2007年

 現在日本には、臨床心理士という心の医者がいる。カウンセラーとも呼ばれる。その数は年々増加しており、医療の現場のみならず、企業、学校など、社会の様々な場所で人々の心の病と対峙している。この本では、彼(彼女)らの立ち位置から、具体的な治療の方法まで語られている。
 あなたは臨床心理士、あるいはカウンセラーと呼ばれる人たちにどんなイメージを持っているだろうか。人の心、精神的なものを扱うわけだから、きっと人の考えていることが読めるのだろうと思うかもしれない。しかし、そんなことはない。カウンセラーたちはクライエント(患者)によって語られる言葉の節々、一挙手一投足をつぶさに観察し、会話の中から、悩みの核にたどり着こうとしているのである。これは一般の人にできることではない。当然、現場に出るためにはトレーニングを受けなければならないし、臨床心理士の資格の試験にも通らなければならない。人によって向き不向きもある。冒頭の2章では、そんなカウンセラーとしての下積み時代となる期間や、資質について詳述される。
 中盤以降は、うつ病、DV、虐待など、あらゆる原因で心の病を抱えたクライエントと、カウンセラーがどう向き合い、治療の中でどのように解決を目指していくのかが説明される。もっとも、人の心は一人一人異なるため、万人に共通の治療法など存在しない。ただ、どんな場合にも最低限守らなければならないルール、というようなものがある。たとえば、悩んでいることの問題の解決を目指していると言いながら、ただ「~が苦しかったんですね。」と同情しているだけでは何の進展もない。気持ちが理解できたら、その後どういう行動をとれば、クライエントの問題は改善されるのか、その具体的な手立てを一緒に見つけていく過程が、実際のエピソードを元に書かれている。
 本全体としては、一貫して誰にでも分かる文体で書かれており、内容が完全には理解できなくとも、一度読んでおけば一般の人でもカウンセラーのこと、カウンセリングの基本を知ることが出来るだろう。