浜田寿美男『自白の心理学』

  文学部 4年生 水口正義さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:自白の心理学
著者:浜田寿美男
出版社:岩波書店
出版年:2001年

 この書評は、あなた方の想像力によって成り立つ。まず、今、スマホか何かでニュースを観てほしい。
 強盗とか、様々な怖い情報が流れているだろうが、万引きなど、何か一つ、まだ犯人が捕まっていない犯罪を選び、自分がその犯人だったと仮定して、どうやってその事件を起こしたかを詳細に、時間、場所、犯行動機まで考えてほしい。
考えられただろうか?多分、「無理に決まってる。」と感じただろう。なぜならその事件は、今あなたがいる場所から遠く離れた場所で、あなたと全く関係のない家や店で起きた出来事だからである。
 しかし、あなたはその事件の犯人として逮捕される。そしてワケも分からず連行され、密室で、「いつ、どこで、なぜ、その事件を起こしたんだ」と繰り返し問われる。最初は当然、「知らない」と言い張るだろうが、その気力は徐々に減少してくる。そして、ついに「私がやりました。」と言う。
 あなたはやってもいない犯行をやったと言っているのだから、事件の詳細について知る由もない。犯行動機や侵入経路なんて分からない。じゃあ、「やっぱりやってません…」と言うしかない。でも、さっき一応自白してしまったし、何よりずっと「答えろ」と言われ続けているから、何か答えないと…と焦る。
 ついに、長期間の取り調べが終わる。つまり、その事件について、あなたは、あなたしか知り得ない情報を供述したとして、「完璧に」逮捕、起訴される。
 ここまでを読んでみて、おそらくあなたはそんなはずはない、と何度か思っただろう。特に、事件の詳細な供述なんてどう考えても不可能だ、と。しかし、そこにはトリックがあるのだ。絶対に犯人しか知らない情報を、赤の他人が言えるようになってしまう秘密があり、現場から何百キロも離れたところにいた人が、本当に捕まってしまうのだ。
 不可思議とも言える自白のメカニズムを知りたい人はもちろん、ここまでの想像上の話で一度でも、何かの疑いを抱いたあなたは、読んでおかなければならない一冊なのではないだろうか。