秋元康『恋について僕が話そう』

  文学部 4年生 水口正義さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:恋について僕が話そう
著者:秋元康
出版社:大和書房
出版年:1991年

 初めてこの『恋について僕が話そう』というタイトルを目にした時、「僕」は誰で、何を偉そうに言っているのだ、とツッコミに近い感情を抱いたのは私だけだろうか?
 「僕」は秋元康である。作詞家・プロデューサーという肩書を持つ。この本が書かれた1991年に流行っていたおニャン子クラブ、最近ではあのAKB48を生んだ人物である。アイドルを生む天才、と言っても過言ではないだろう。
 この本は、秋元氏の恋愛観に基づいて書かれているが、ハウツー本ではない。彼は当時の女性にむけて、本気の恋とは何かというような問いから、駄目な男の見分け方まで、恋について、ある個所では批判的に、ある個所では女性の味方となるような物言いで述べている。秋元氏は男性の弱点を突くようなことや、若い女性に足りないことをずばずば言うが、どっちが悪いとか。絶対にこうしなければならない、ということは決して言わないのだ。帯紙にもあるように、あくまでも「指南書」である。
 1991年はバブルの只中である。20年ほどではあるが、時代が異なる。当時の若者はPHSを使っていたぐらいなのだから、現代の恋愛と比することはできないはずだ。しかし、この一冊を読むと、どうも他人事のようには感じられない。一生懸命になれない恋は、本当の恋ではない。そんな決まりきったことが、はっきり、いくつも書かれているからかもしれない。
 この本を読んだ後の過ごし方について、私から一つ提案したい。それは、AKB48の歌の歌詞を読むことである。AKB48の曲数は今や千を数え、その多くは恋愛に関するものである。秋元氏は楽曲のほとんどを作詞しているため、この本と全く同じと言ってもいいぐらい、氏の恋愛観が如実に表れている歌詞がたくさんあるはずだ。そう考えると、たった一回読んだだけでは全然足りなくなってくる。氏の「恋愛観」という点と、「それが当てはまる歌詞」という点を線で結ぶゲームができそうだ。もっとも、それぞれの点の数は同じではなく、本人さえも答えが分からないだろうから、そのゲームは終わりなきものになるだろう。