西川麦子先生(文学部)「人を介して本に出会い、本を介して人に出会う」

☆新入生向けの図書案内
 私は、文学部社会学科の「メディアコミュニケーションと表現」領域の科目を担当しています。また、アメリカのコミュニティラジオ局でHARUKANA SHOW(HS)という日本語ラジオ番組を主宰し、インターネットで日米をつなぎ、毎週、生放送をしています。アメリカの大学図書館に勤務している番組スタッフの一人が、『国立国会図書館月報』(633 号2013 年12 月)の「本屋にない本」欄に紹介されている、平原哲也著『日本時間―日系社会のラジオ番組―ブラジル編』(2010)という本が興味深いので、番組でもとりあげましょう、と知らせてくれました。平原氏は、実は、「月刊短波」(2011 年12 月号)のサイトに、「米国コミュニティFM で日本語番組」というHSを紹介する記事を書いていました。
 さっそく、『日本時間』を注文しました。これは、ブラジル日系移民向けの日本語ラジオ番組や日本音楽番組についての1930 年代から現代までの歴史を、ブラジルの日本語新聞や日系人向けの出版物や関係者への取材などをもとにまとめた貴重な自主制作出版物です。驚いたことに、この本の9頁に、甲南学園の創立者の名前がありました。「1935 年5月16 日に日本経済使節団がリオに到着した。翌17 日夜に平生釟三郎団長が全国ネットのラジオ番組に出演し、…。」さらに詳しく知りたい方は、甲南大学図書館に、小川守正・上村多恵子著『大地に夢求めて―ブラジル移民と平生釟三郎の軌跡』(神戸新聞総合出版センター、2001)、など関連する本がたくさんあります。HSでは、2014 年に『日本時間』を紹介し、翌年、平原氏に番組にも出演していただきました。本もラジオもインターネットも含め、メディアとは人と人をつなぐ媒体です。
 ところで、HS の2017 年秋の番組テーマは「音楽体験」でした。異なる世代の出演者が、どのように音楽と出会いどんな媒体を介して聴いてきたかを語りました。そこで紹介された本、『実践カルチュラル・スタディーズ:ソニー・ウォークマンの戦略』(ポール・ドゥ・ゲイ他著、暮沢剛巳訳、大修館書店、2000)は、甲南大学図書館の中 山文庫にあります。また、入門書としては、田中東子・山本敦久・安藤丈将編著『出来事から学ぶカルチュラル・スタディーズ』(ナカニシヤ出版、2017)もおすすめです。
HARUKANA SHOW: http://harukanashow.org/

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.35 2018) より