読書猿著 『問題解決大全』

 

 文学部 3年生 匿名希望さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名: 問題解決大全
著者: 読書猿
出版社:フォレスト出版
出版年:2017年

近年、出版される本の数は星の数ほどあるが、その中から真に価値のある一冊を選び出すことは容易ではない。そんな状況において、2017年と比較的最近発売され、内容の優れた本として、この『問題解決大全』を上げたい。

本書は、そのタイトルの通り、人生において降りかかる様々な問題に対する解決方法の発見を提案する実用書だ。だが、それだけでなく、問題解決に至るまでのプロセスを様々な実例や問題解決の歴史を振り返ることでその本質まで掘り下げるという人文書のような一面も持ち合わせている。そのため、ハウツー本や自己啓発本を嫌うような方にもオススメできる内容となっている。

例えば、本書291ページに掲載されている「リフレーミング」を紹介する。これは、ものの見方を変えることで行動や状況を変え、認知を巻き込む悪循環から抜け出すという解決方法のことだ。だが、本書はその解説だけでなく、リフレーミングをわかりやすく伝えるため、事例として『トム・ソーヤの冒険』のペンキ塗りの話を上げ、さらにリフレーミングの起源と展開まで述べている。そのため、解決方法の理解だけでなく、一種の教養の勉強にもなり大変有意義なものとなっている。

ちなみに、作者である読書猿氏は、ギリシャ哲学から現代文学まで膨大な本を読んできたという読書の鬼であり、知識人である。そのような人物だからこそ書けたのだろう圧倒的な知識量の豊富さが本書から読み取ることができる。

実を言うと、私自身、こういった実学的な書物は毛嫌いするたちだったのだが、本書は様々な思考能力を得られるという観点からも他の人にオススメできるものだった。そのため、人生のハードルを乗り越えたいと思っている方はもちろん、実用書をあまり読まないという方もぜひ、本書を一読していただきたい。