伊坂 幸太郎著 『砂漠』

マネジメント創造学部   2年生 Mさんからのおすすめ本です。

書名 : 砂漠
著者 : 伊坂 幸太郎 著
出版社:実業之日本社
出版年:2005年

 大学生活は人生のオアシスであり、いずれは外に広がる 「社会」という砂漠に出なければならない。冷めた性格でいつも物事を俯瞰的に見ている主人公の北村は、オアシスで安全な日々を送る中、砂漠で苦労する人々や厳しい現実を見て不安な感情を抱く。

 そんな北村はある日、大学で4人の友人に出会い非日常な事件に巻き込まれていく。ボウリング、合コン、 麻雀、超能力、通り魔など様々な事件に巻き込まれる北村だが、個性的な友人たちとこの事件を共有することで次第に成長し、「あり得ないことを実現できるかもしれない」と小さな希望を抱き始める。 読み進めていくうちに、私たち読者もまた希望を抱かずにはいられなくなる。

 この作品の見どころは北村の成長だけではない。 この作品では4人の個性的な友人が登場するが、その中でも西嶋はとびぬけて変人だ。 西嶋は自分に素直で信念のある熱い性格の持ち主で常に堂々としている。しかし、大学では少し浮いた存在だ。そんな西嶋は大学の飲み会でいきなり演説を始める。 最初は笑っていたものの次第に不満の色をあらわにし始める。

 そんな中、西嶋は一切動じず「この国の大半の人間たちはね、馬鹿を見ることを恐れて、何にもしないじゃないですか。 馬鹿を見ることを死ぬほど恐れてる、馬鹿ばっかりですよ。」「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」と強く語る。そんな西嶋の演説を冷めた目で見つめながらも北村は少し期待してしまう。 西嶋なら砂漠にオアシスを生み出せるのではないか、と。

 ここまで北村と西嶋の2人について書いたが、他にも少し軽薄な烏井、超能力者の南、不愛想な美女の東堂など魅力的な人物たちが登場し、友情や青春の良さを教えてくれる。 未熟だけど様々な経験を経て成長していく彼らからは目が離せない。

 この物語は一歩踏み出せずにいる人達に是非読んでもらいたい。この本を読めばきっと、自分には何でも叶えられるような気がして、背中を後押ししてもらえるだろう。 諦めずひたむきに努力し続ければもしかしたら私達にも砂漠に雪を降らすことができるのかもしれない。