松村 涼哉著 『15歳のテロリスト』

知能情報学部   4年生  団野 和貴さんからのおすすめ本です。

書名 :  15歳のテロリスト
著者 : 松村 涼哉著
出版社:KADOKAWA
出版年:2019年

 

「15歳のテロリスト」このタイトルから,何が想像できるだろうか.おそらく,誰もが想像しない作品になるだろう.

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「新宿駅に爆弾を仕掛けました.全て,吹き飛んでしまえ」ある日,爆破予告が顔出しで動画共有サイトに投稿された.その後,電車のホームが爆破される.記者の安藤は,この少年(実行犯「渡辺篤人」)を知っている.「少年犯罪被害者の会」にいたからだ.しかし,なぜ過去に少年犯罪の被害家族だった少年が,罪を犯したのか.

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ここまであらすじを見ても,タイトルからは予想できなかったことがたくさんあるだろう.この物語は,誰にでも分かりやすく現代社会における問題を書いている.「少年犯罪・少年法」「加害者・被害者」「犯罪に対するメディアの報道」「第三者の行動」がこの本のキーワードになるだろう.また,この本はミステリー要素もある.誰が犯人で,動機は何かということも伏線として張っている.多くの本は犯罪にあった被害者家族の目線から,どのように立ち直るかという物語の展開になることが多い.しかし,この本は加害者の目線あるいは加害者の家族という目線でも物語を展開している.そして,被害者や加害者,その家族をメディアどのように追い詰めていくのかということもありありと書かれている.さらには,事件とは無関係の第三者が,SNSを利用して犯罪に対して被害者・加害者関係なく誹謗中傷や憶測を発言する姿は,正に現代そのものである.

私はこの本を読んで,世の中の問題は一筋縄では解決できないということをよく思い知った.犯罪が起きたとき,誰かが謝って済む問題でもないし,復讐しても終わる問題ではない.フィクションでありながら,本当に現実でこんなことが毎日起こっているのではないか,だからこそ常に考えなければならない,と強く思った.

全てを知ったとき,なぜ渡辺篤人が爆破予告を行ったのか,そしてこの事件の真の狙いが明らかになる.ぜひ,皆さんの目で物語の結末を読んでほしい.