6月16日(木)に開催された第4回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。
経済学部 寺尾 建先生からのおすすめ本です。
書名 : クマのプーさん
著者 : A・A・ミルン著 石井 桃子訳
出版社:岩波書店
出版年:2000年
クマのプーさん(Winnie-the-Pooh)のことを知らない人は、いないと思います。しかし、クマのプーさんのことを知っている人の数に比べると、この原作を読んだことのある人の数は、はるかに少ないのではないでしょうか。
原書は、1926年にイギリスで出版されました。現在までに30以上の言語に翻訳されていますが、日本語訳が出版されたのは1940年、太平洋戦争が始まる前年でした。ちなみに、ディズニーが「プーさん」の商品化権を獲得したのは1961年のことで、その後、「プーさん」の初のアニメーション作品を公開したのは1966年のことです。
以降、現在に至るまで、世界的にみると、ディズニーの影響力の方が原作の影響力よりもはるかに大きなものとなっているせいで、「プーさん」といえば、「かわいくて、明るい笑いを誘う愉快な存在」であると広く受け止められています。それは、まったくの間違いというわけではないのですが、大きな誤解もしくは曲解であることもまた、否定できません。
プーさんは、詩をつくるのが大好きで、自作の詩をよく口ずさみます。しかしながら、ディズニーは、プーさんから人や物事の本質をとらえる優れた能力を奪い取ることによって、プーさんをわかりやすいキャラクターへと変えてしまいました。
プーさんは、詩人です。ぜひとも原作を手にとって、プーさんの「わかりにくさ」に触れてください。