草薙厚子著 『となりの少年少女A:理不尽な殺意の真相』

知能情報学部 4年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : となりの少年少女A:理不尽な殺意の真相の深層
著者 : 草薙厚子著
出版社:河出書房新社
出版年:2018年

 今回読んだ『となりの少年少女A 理不尽な殺意の真相』は少年犯罪と発達障害をテーマに、著者が複数の少年犯罪を追跡した書物である。少年であれば更生の余地があるとされ、少年法や心神喪失によって責任能力がないとして減刑されることにとても関心があるため、とても興味深かった。

 『発達障害』という言葉は私たちにとって耳馴染みがあるが、昔はそうではなく、この言葉は安易に使うことができなかったと知った。少年犯罪者が『発達障害』であっても、それを報道することで「発達障害者は犯罪を犯しやすい危ない人々だ」という考えに世間が陥ることを恐れた。彼らの先天的なものには触れずに彼らの環境についての報道が多かったと著者は述べている。

 この本を読んで感じたことは少年犯罪の複雑さだ。また、犯罪の裏には発達障害が隠れていることが多いと分かった。障害を扱う報道はセンシティブなため扱いも難しい。

 有名な少年犯罪として「酒鬼薔薇聖斗事件」がある。この事件の特徴は犯人が自閉症スペクトラム障害だと診断されたこと、また周りからは「普通の子」と呼ばれていたことだ。特に学習能力や態度は周りと変わらない。よって自閉症スペクトラム障害は周りから見て判別が難しい障害であることが分かる。しかし、実際は猫を殺して解剖するなど数多くの犯罪の予兆があった。それも家族は気付いていた。この時点で行動を起こし、処置を受けていれば犯罪は防げたかもしれない。

 また、少年少女の更生措置も一筋縄ではいかない。心神喪失や発達障害が起訴時に認められたものは、無罪であっても更生の為に施設に入る。しかし、それが成功したのかの判断はとても難しい。

 「酒鬼薔薇聖斗事件」の手記『絶歌』には「矯正教育」について4行しか触れられていない。また、記者が彼に直撃取材をした際には、彼は記者に対し暴言を叫び、彼らを追いかけまわしている。矯正教育は意味があったのだろうか。