熊代亨著 『「若者」をやめて、「大人」を始める : 「成熟困難時代」をどう生きるか?』

 

 

文学部 1年生 Nさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 「若者」をやめて、「大人」を始める : 「成熟困難時代」をどう生きるか?
著者 : 熊代亨著
出版社:イースト・プレス
出版年:2018年

この本は異なる世代との接し方について学べる本です。今の時代、ネットを通じて様々な世代と繋がれるといっても、それは共通の趣味を持っていたり、価値観が似通っていたりするという共通点があるからです。では、現実社会でかかわりたくなくともかかわらざるを得ない、自分とは違う世代の人たち、それが自分より年上の世代かどうかを問わず、仕事であるからどうしてもかかわらないといけない場合、どのように接すればよいのかということを学べる本です。

この本は題名の通り、今、若者である学生や自分のことをまだ若い、大人になり切れていないと思っている人たち向けに書いてあります。そのため、まず、「大人とは何か」というところからスタートします。
この本の面白いところは主語、読む対象が若者だけに限定されていないところにあります。そのため、ほかの章では、若者の持つアドバンテージのみがフォーカスされた結果、いつまでも「若者」のマインドを持った中年が多くいる、またその問題点を述べ、若者ではなく中年の視点からも述べているのです。これには私も驚きました。確かに、最近よい、とされている上司は同じ目線になって考えてくれるという点が入っていますが、それになろうとして年甲斐もなく、若者のような流行を追い求めたり、言葉遣いを若者風にしたりする中年は多くいます。しかし、心身共に壊してしまう可能性があると筆者は述べているのです。体力が衰えているのに若者のように振舞えば、体を壊してしまうし、今までの経験が積み重なっているにも関わらず、何も知らないかのようにすべてを新鮮に感じることはできません。それを追い求めすぎると心をも壊してしまう原因になります。

では、中年は何も起きない平凡な人生をずっと過ごすしかないのでしょうか?そんなことはありません。「大人」には「大人」の生き方があるのです。若い世代には苦し紛れにしか聞こえないかもしれませんが本当にある、ということを中年の筆者が体験をもって教えてくれます。また、これを通して若い世代に向けて、絶対に嫌な大人に会う時もあるがその時はどうすればよいのかというようなことも教えてくれます。

このように、この本では異なる世代との接し方を様々な視点から筆者の経験も含めて書いてあるので、読み終わるとなんだか誰かの人生を経験してきたかのような気持ちにさせてくれます。「大人」になるとはどういうことなのか?いつも疑問に思っていたことが何となくわかるようになる1冊です。