ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング, アンナ・ロスリング・ロンランド著 『Factfulness : 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

 

 

知能情報学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : Factfulness : 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
著者 : ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング, アンナ・ロスリング・ロンランド著 ; 上杉周作, 関美和訳
出版社:日経BP社
出版年:2019年

私たちは世界を正しく認識しているだろうか。「世界はどんどん悪くなっている」「貧富の格差は拡大し続けている」といった感覚を漠然と抱いてはいないだろうか。本書『FACTFULNESS』は、医師であり公衆衛生学者でもあったハンス・ロスリング氏が、最新の統計データを用いて私たちの持つ「思い込み」を解きほぐし、事実(ファクト)に基づいて世界を見るための習慣を説いた一冊である。

本書の冒頭にある、世界の貧困や教育、環境に関する13問のクイズは衝撃的だ。多くの知識人や専門家が、チンパンジーがランダムに選ぶ正解率よりも低いスコアしか出せないという事実は、私たちが古い知識やバイアスにいかに支配されているかを浮き彫りにする。著者は、人間には「分断本能」や「ネガティブ本能」など、物事をドラマチックに、あるいは悲観的に捉えてしまう10の本能があると指摘する。特に「ネガティブ本能」は、メディアが報道するセンセーショナルな悪いニュースばかりに目が向き、静かに進行している「良い変化」を見落とさせる原因となっている。

図書館を利用して情報を探す際、私たちは数多くの資料やデータに触れることになる。しかし、本書が警鐘を鳴らすように、データそのものを見る前に私たちの「目(認識のレンズ)」が歪んでいては、正しい結論にはたどり着けない。本書は単なる楽観主義の書ではない。「世界は悪い状態にあるが、同時によくなっている」という著者の言葉通り、課題と進歩の両方を客観的な数値で捉えることこそが、真の課題解決への第一歩であることを教えてくれる。

これから卒業論文やレポートに取り組むにあたり、文献に書かれていることやネット上の情報を鵜呑みにせず、「そのデータは最新か」「比較対象は適切か」といったクリティカルな視点を持つことは不可欠だ。本書は、膨大な情報の海の中で溺れることなく、事実という足場を固めて世界と向き合うための強力な武器となるだろう。これからのグローバル社会を生きていく上で、自身の世界観をアップデートするために必読の一冊である。