筒井康隆著 『時をかける少女』

 

 

知能情報学部 4年生 Oさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 時をかける少女
著者 : 筒井康隆
出版社:角川文庫
出版年:1976

もし時間をやり直すことができたら、どんな場面に戻りたいだろうか。言えなかった言葉や、選ばなかった選択を思い浮かべたことのある人は多いと思う。筒井康隆の『時をかける少女』は、そんな誰もが一度は考えたことのある願いを、高校生の青春とともに描いた物語である。

物語の主人公は、男女三人の仲の良い友人関係の中で、何気ない毎日を過ごしている。三人の会話や掛け合いからは、特別なことがなくても楽しいと感じられる、等身大の青春が伝わってくる。読んでいて、友達と過ごす放課後や学校生活を思い出すような、懐かしい気持ちになった。

そんな日常の中で、主人公はある出来事をきっかけに、時間を跳ぶ不思議な力を手に入れる。タイムスリップというSF的な設定は現実からは離れているが、物語自体は難しくなく、自然に受け入れることができた。また、物語の中にはいくつか伏線があり、読み進めるうちにそれらがつながっていく点もおもしろいと感じた。

特に印象に残ったのは、主人公が友達との関係を壊したくないと悩む姿である。大切な友人がいるからこそ、自分の気持ちをはっきりさせられず、葛藤してしまう様子が切なく描かれている。時間を戻せる力があっても、人の気持ちまでは簡単に変えられないという点が、物語に深みを与えている。

物語の終盤では、避けられない別れが描かれ、読み終えた後にはむなしさが残った。しかしその余韻こそが、青春の一瞬の大切さを強く印象づけているように思う。『時をかける少女』は、青春の楽しさと同時に、そのはかなさを静かに伝えてくれる作品であり、時間や人間関係について考えたい人にぜひ読んでほしい一冊である。